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19話 僕だけが知っている弟

寒いよね、当たり前だもんスカート履いてないんだもん。


家出る前に気付いて本当によかった。

制服のスカート履かずに家を出ようとしました。


皆さんも気をつけてください( '-' )

補聴器を付けてもう一度、音が拾えるようになった僕の耳。


いっそのこと、聞こえなくなってしまえばいいとさえ思ったこともあるけど、今は音が拾えて凄く嬉しいとさえ思う。


それはきっと、春汰たちがいたからだ。

僕の周りには嫌なやつもいるけれど、優しい人もいる。


検診にきた看護師さんが、僕の体についた無数の傷跡について聞いてきた。隠すのも面倒だったし、傷のつき方が痛々しいので何かを察知していた。


『中学の時の人達だよ』

耳が聞こえなくなってからのかかりつけだし、イジメの事も知っているので隠す方が無駄だ。

『あの3人?』

ほら、もうお見通しだ。この人に嘘はつけないな。

僕の母親より、母親らしいよ。昨日の出来事を全て話した。一方的に殴られたあと、"友人"のピンチを救ったという事を。


『かっこいいじゃない!でも、友人じゃなくて好きな子でしょ?』

本当に、この人はときどき恐ろしい程に隠し事を当ててくる。女のカンというやつなのか?


『今度、貴方の病室に女の子が入っていったらこっそり見とくわ』

ニヤニヤしながらこちらを見る顔は思春期の息子を持つ母親のようだ。

『やめてほしいな、プライバシーってものが無いよ』


「よかったね、前より明るくなった」

手話ではなく、唇を読み取りやすいように僕に言った。

「ありがとう」

発音が不安になった気がする。何しろ自分の声はあまり聞こえないから。


検診が終わり、僕は自分のベッドに横たわった。

ただ、無機質な天井を見つめこれからの事を考えた。

いや、考えようとした。


ドタバタと、激しい音を補聴器は拾った。

廊下を走る音だ。子供か?思ったが無機質な扉が思いっきり開かれ、足音の正体が判明した。


「兄ちゃん...」

半泣き、いやもう泣いてるな。顔をぐしゃぐしゃにした廉が立っていた。

「もう、おぎないがとおもっだー」

外ではしっかり者の弟は実は泣き虫で気弱、自分で言うのもどうかと思うが、僕の事が大好きらしい。

「大袈裟だな、ほらちゃんと生きてるだろ?」

ベッドの脇に座り込んで布団を濡らしながら、泣いてる廉に手話はちょっと無理そうだ。


「手話じゃない...久しぶりに声聞いた...」

布団から顔を上げた廉の顔はぐしゃぐしゃすぎて、ちょっと面白いな。

「心配かけて、ごめんな」

色素の薄い僕とは違う、黒くてふわふわの髪を撫でなた。


廉が泣いたのは何年ぶりだろう?

いつも、頑張ってるから僕の知らないところで泣いていたのかもしれない。

多分、廉が安心できるのは僕の側なのだろう。

僕も安心できる唯一の家族は廉だけだ。


忘れていた、こんなにも心配してくれる人がいるなんて。

こんな弟がほしい。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

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