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16話 明かされる過去の記憶

はぁ、なんとかここまで来れました‥‥

何も感じない壁、少し重たい空気、消毒液の臭い。

私は篠原くんの病室の前にいる。何度も、何度も入ろうとした。でも、開けられなかった。

篠原くんに会いたい。でも、会っていいのか分からない。


私のせいで、怪我をした。耳のことも、私のせいかもしれない。

「はぁ‥‥」

思わず大きなため息が出てしまった。


「あの‥‥兄に、何か用ですか?」

ふと、横を見ると長身で私達とは違うブレザーをきっちりと着こなし、メガネをかけた真面目そうな人が立っていた。

どこか、知ってる雰囲気の人だった。

そして、"兄"と言った。


「あ、私は篠原くんと同級生の宮村風澄です。篠原くんのお見舞いに来たんですけど、入りづらくて‥‥」

彼の顔は、よくよく見ると篠原くんに似ている。


「あぁ、兄の同級生の方ですか。僕は恵の弟の篠原廉(シノハラレン)といいます。兄はまだ目が覚めてないんです」

弟と名乗った廉くんが、入りますか?と聞いてくれたが顔を合わせずらくて返答に詰まってしまう。


「少し、話がしたいんです」

そう言われ、ロビーへ2人で向かった。


「学校での兄はどんな感じなんですか?」


廉くんの声は低いのにはとても優しく、ふんわりとした綿菓子のような喋り方をしていた。

「私は、最近になって篠原くんと話すようになったんですけど、とっても優しい人で一緒にいてすごく楽しいです」

篠原くんは、他人を寄せ付けないって他の人は言うけれど、彼は私たちといると楽しそうに笑ってくれる気がする。

私も、友達と呼べるのは絢香ぐらいしかいないけれど、でも最近は4人でいることも増えた。

それがとっても嬉しい。高校に入ってから今が、1番楽しいと思える。


「そっか‥‥兄ちゃん楽しそうでよかった」

その声はとても優しい声だった。

「兄ちゃん、俺には隠してるんですけど耳が聞こえなくなってから、いじめられてたんです。でも、両親は兄ちゃんに関心がなくて、俺が口を挟むと怒るんです」

その話を聞いた時、腕の傷や服の下に隠れた傷にやっと結びついた。


「両親は、小さい時から兄ちゃんばかり怒っていたんです。兄ちゃんは忘れてるかもしれないけど、1度だけ俺が両親の地雷を踏んだことがあったんです」

それは、当時小学3年の兄と小学1年の俺が流星群を見たいって言い出して、夜に裏山にこっそり出かけたんです。俺が強引に兄ちゃんを連れ出して。


それが、両親の逆鱗に触れてしまって。夜中に子供だけで出かけるなんて身の危険が危ないと俺が兄よりも怒られた。まぁ、当然だろう。


そしたら急に、兄がこう言ったんです。

「僕が嫌がる廉を無理やり連れ出したんだ。だから、廉を怒らないで!廉は悪くないから!」


「そこから、両親はことある事に理由をつけて両親ら兄ちゃんに対して酷くあった。そして、今度は兄ちゃんを空気として扱った」

唇をぐっと噛みながら、苦しそうに語ってくれた。

私は黙って聞くしかなかった。

透き通って見えたのは、きっと篠原くん自身が自分の存在を消そうとし為なのだろうか。

「俺は、何もできない‥‥」

それは、私のセリフだよ。私は篠原くんに貰ってばかり。私の方が何も出来ていない。


「私の話も聞いてくれる?」

そこから、私は自分の生い立ちを語った。

色が見えないこと、篠原くんと出会ったこと、そして今回の事。

「今回、篠原くんがこんな事になったのは私のせいなの。本当にごめんなさい‥‥」

私が泣いていい場面じゃないのは分かってる。

でも、どうしょうもないくらい涙が止まらない。


「泣かないでください。兄ちゃんと一緒にいてくれてありがとう。兄ちゃんは守りたい人を守る人なんです。だから、貴女を守って怪我をしたこと僕は誇らしいと思います」

兄ちゃんらしい。廉くんはそう言ってくれた。


そして、今日は貴女兄ちゃんは会いたがってるはず。

貴女に会ったら、目が覚めるんじゃないか。

そう言い残して廉くんは病院を後にした。

ここまで読んでくださってありがとうございます!ブックマーク宜しくお願いします。

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