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13話 赤色の空

「風澄!」

今にも壊れそうな扉を蹴破って入ってきたのは、親友の絢香だった。

その後ろから、佐山くんも慌てて入ってきた。


「絢香‥‥心配かけちゃったね」

急いできたのだろう。肩で息をしながら私の元へ駆け寄った。

「ごめん、私があいつの事ちゃんと言ってれば」

「絢香、自分を責めないでよ。篠原くんが助けてくれたから大丈夫だよ」



あの後、無我夢中に走った私達は近くの公園に転がり込んだ。

「し、しの、はらくん‥‥」

走りすぎてまともに喋れない。

『怪我はない?』

ベンチに私を座らせて、私の目を見ながら心配そうな顔で手話をしてきた。


ただ、頷くことしか出来なかった。

さっきまでの事を少し思い出してしまい、思わず俯くてしまう。

涙が出そうになったのをぐっとこらえて、顔を上げてはっきりと「ありがとう」と言った。


篠原くんは、ただ私の横に座ってくれた。

それだけで十分だ。もう我慢の限界だった。

安心したことがわかると壊れたように涙が溢れてくる。


私が泣き止むと、飲み物を渡してくれた。謝罪付きで。

『ごめん。僕が一緒にいればこんな事にはならなかった』

謝らないで。

『危ないやつだと分かってたのに、君の元へ行かせてごめん』

篠原くんのせいじゃない。

『怖い目にあわせてごめん』

そんな顔して欲しくない。


『篠原くんのせいじゃない』

だって、私ね安藤くんと帰ったときに思ったことがたくさんあるんだよ。

篠原くんは、いつも危ない車線側を歩いてくれる。

篠原くんと喋っていると時間を忘れる。

いつも、私の話を笑顔で聞いてくれる。


途中から、手話を忘れたが彼は黙って聞いてくれた。


『もう、君を怖い目に遭わせないから』

『私は、ーーー』


篠原くんの携帯がなった。

おもむろに私に出るように言った。

「もしもし、」

「‥‥メグじゃねーな。風澄か」

このいい声は【よりどころ】のマスターだ。

「はい、風澄です。篠原くんに出るようにって」

「無事なんだな、なら迎えにいく」

場所を伝えて電話を切り、篠原くんに伝える。


携帯を返すとき、篠原くんの腕が不自然に動いた。

よくよく見ると顔にも少し傷がついてる。

色が見えなくても傷だというのはすぐに分かった。

血の色は赤というが私にとっては黒でしかない。


「ここ」

そう言いながら、頬を触ると彼は私の手を払おうとした手をかばった。

「怪我したの?」

そう聞くと首を振った。

『学校で転んだ』

そんな嘘で私を騙せるわけないでしょう。

きっと、私を助けた時にそうなったんだ。


「大丈夫?病院行かないと」

『いいから』

よくよく見ると、ベンチに座り込んだ彼はぐったりしていた。

なにか出来ることはないのだろうか。

「なにか、して欲しいことある?」


キョトンとされた。明らかにおかしい。何を言ってるのだろう。


『じゃあ肩貸して』

「えっ?」

返事も聞かずに篠原くんは、私の肩に頭を乗せてきた。

心臓が破裂しそうだ。近くに彼の顔がある。

篠原くんって、髪の毛の色薄いな。


「ねぇ、1つ聞きたいことがあるんだ」

震える声をなんとか出して、問いかけた。

「篠原くん、本当は喋れるんじゃないかな」

それは私の上に乗った安藤くんを、篠原くんが殴り飛ばす前に一緒だけ声が聞こえた。


あの時、あの場所には私と安藤くんと篠原くんの3人しかおらず、あのとき一瞬聞いた声は安藤くんの声じゃなかった。

だとするならば、あの声は篠原くんの声だ。

先程からの様子で多分、自分の声が出ていたことに気づいてないんだ。


「篠原くん、あの‥‥」

横を見ると規則正しい寝息が聞こえてきた。

「うそ‥‥寝てるの?」


しばらくして、マスターが到着して篠原くんと私を一旦よりどころへ連れていった。


更新、遅くなってしまいました。

次回は、恵目線のストーリーです。

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