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月見が丘小学校 1年1組は妖怪教室  作者: 梨香


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46/50

46  守くんの秘密!

「何でやろ? 犬を飼っているクラスメイトは他にも大勢いるのに……守くんには近づかれへん」


 可愛い顔をしているし、態度も穏やかだし、勉強もできるし、運動神経も良い守くんだが、珠子ちゃんはどうしても側に居たら落ち着かなくなる。他のクラスメイトは仲よくしているのに、自分が猫娘だからかなぁと悩んでいる。


「なぁなぁ、守くんも放課後に剣道習わへんか? 達夫先生は厳しいけど、剣の達人なんやで」


 河童の九助は達雄先生の正体を知っているが、他の人間の生徒には内緒だ。


 実は、高学年の体育を教えている鈴木先生は首斬り男だ。とは言っても、首を斬ったりする殺人鬼ではない。江戸時代に鈴が森の刑場で大勢の首を斬った刀の妖怪なのだ。


 東京から大阪まで泣き女の鈴子先生の泣き声に導かれてやったきた。お互いに陰気な妖怪として住みにくい世の中を愚痴っているうちに恋に落ちたのだ。


 三学期から体育の先生として働いているが、放課後に剣道の指導をしている。火曜木曜が低学年、水曜金曜が高学年の剣道クラブだ。


「そや! そや! 守くんも剣道クラブに入ろう」




 仲良くなった男の子達から誘われて、放課後に剣道クラブを見学に行く。


「エイ! エイ! エイ!」


 何時もははしゃいで田中先生によく注意されている九助くんも、達雄先生の指導を真面目に聞いて、竹刀をエイ! と力強く振っている。女の子も何人か剣道クラブに参加しているが、守くんは珠子ちゃんがいないのに気づいてがっかりする。


「君が犬飼守くんでござるか?」


 古めかしい言葉づかいだけど、笑ってはいけないと守くんは我慢して頷く。


「剣道クラブは、低学年は参加人数が少ないから、いつからでも来て良いでござるよ」


 達雄先生が体育の授業を受け持っている高学年は、クラブに参加する生徒が多くなっている。


 守くんは剣道クラブも楽しそうだと思ったが、なぜか胸の中でクロがざわつく。


『こら! 学校では出てきてはいけない。前の学校みたいに通えなくなったら困るよ!』


 守くんは両手で胸を押さえて、クロが出てこないように落ちつかせる。


「守くん? それは、もしかして……」


 気づかれた! と守くんは顔を青くするが、達雄先生は大丈夫だよと肩を叩く。


 ホッとした瞬間、首斬り男が守くんの側にいるのに気づいたクロが心配して飛び出した。


「わぁ~! デカイ犬や!」


 自分達より大きそうな黒い犬が突然あらわれたのだ。剣道の練習をしていた生徒達は逃げまどう。


「クロ! 駄目だ!」


 何時もは穏やかで大人しいクロが、達雄先生に向かって唸っている。


「クロ殿! 拙者は守くんの敵では無いでござるよ。落ち着いて下され」


 唸っていたクロは、少しずつ落ち着いていった。


「ほら! 皆が騒ぐから、クロ殿が驚いたではござらぬか! 守くんの飼い犬がご主人様に会いに来ただけでござるよ!」


 何処から入って来たのか? と何人かは首を傾げるが、ゴンギツネの銀次郎くんが素早く扉を風で開ける。


「あっちの扉が開いてるよ! クロはあそこから来たんだね」


 1年1組妖怪学級のメンバーは、守くんは人間の子どもだけど、クロは普通の犬でないのに気づいた。だから、とっさに銀次郎くんは庇ったのだ。


 妖怪が普通の人達と一緒に暮らすのは大変なのだ。お互いに助け合わなくてはいけない。とは言うものの守くんは人間の子どもだけどと不思議に思う。


 守くんは、他の人間の子どもも何か変だとは感じつつも、それ以上は騒ぎ立てないのでホッとする。前の学校では大騒ぎになって、興奮したクロが暴れてしまったのだ。


「月見が丘小学校は良い子ばかりでごさる。クロ殿も安心したら、落ちつくでござろう」


 犬神憑きの守くんは、前の学校で苛められていた。何となく他の人と違うのを、子ども達は敏感に感じとったのだ。クロはそれで暴れてしまった。


 クロはまた失敗してしまったと、尻尾をたらしてキュウウンと鳴く。


「クロは悪くないんだ! 僕を守ろうとしているだけなんだ」


 大きな黒い犬を抱きしめて、守は泣いた。そして涙を拭いて立ち上がると、達雄先生に頭を下げた。


「達雄先生! 僕に剣道を教えて下さい! クロが二度と暴れたりしないようにするには、僕が強くならないといけないんだ」


 達雄先生は「精進するでござるよ!」と守くんの肩を叩いた。


 クロは達雄先生が悪い妖怪ではないとわかって、尻尾をぱたぱた振った。

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