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月見が丘小学校 1年1組は妖怪教室  作者: 梨香


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19/50

19  夏休みの終り

 とても長く感じた夏休みだが、何事も終わりがある。多くの親たちは、ホッとしたが、何人かの親たちは、夏休みの宿題に冷や汗をかいていた。


「なんで、こんなに残ってるの!」


 ネズミ男の忠吉くんのお母ちゃんは、最後の日に、自由研究と絵日記2枚と工作をしなくてはいけないと頭を抱えた。


「自由研究は、かぶと虫の観察日記にするし、絵日記は良くんのお祖父ちゃん家に行った時のと、この前の盆踊りについて書く。工作は……お母ちゃん、なんか無い?」


 ドリルとかは、登校日ごとにチェックがあったので良かったとお母ちゃんは、鈴子先生に感謝する。


「今さら、工作と言うたかて……紙粘土も乾かへんし……」


 夏休みのお子さま番組が見たいと愚図る忠吉くんを叱りつけて、どうにか絵日記を2枚書かせた。かぶと虫の絵を画用紙に書いているが、それが自由研究になるのかお母ちゃんは不安になる。しかし、それよりも工作が心配だ。



「お父ちゃん、忠吉が夏休みの宿題をしてなかってん! 何か工作をさせらなあかんのや!」


 忠吉くんのお父ちゃんは、大工さんをしている。昼御飯に近くの現場から帰って来た途端に、お母ちゃんに泣きつかれて困る。


「そや! 俺が木で箱を作ってやるから、それに絵を書いたりして、貯金箱にしたらどうや?」


 ネズミ男とネズミ女の夫婦は、ちょこまかと真面目に働くので、息子の忠吉が何故こんなにサボっていたのかと嘆きながら、木の貯金箱を作った。


「ほら、これに色紙を貼るとか、絵の具で色を付けたら、貯金箱になるやろう」


 どう見ても、小学1年生が作ったとは思えないほどの立派な木の貯金箱だが、そこに忠吉くんが絵の具でベタベタと色を塗ったら、子どもの作品らしくなった。


「あとは、乾かして、ニスを塗れば出来上がりやな。明日の用意をしとかなあかんで!」


 忠吉くんは、プリントを見ながら、あゆみ、ドリル、絵日記2枚、自由研究、とランドセルに入れていく。


「あっ、お母ちゃん! 雑巾2枚!」


 縫い物の内職をしているお母ちゃんは、雑巾ぐらいはあっという間に縫うが、何で長い夏休みの間に言わなかったのかと文句をつけた。



 忠吉くんがどうにか夏休みの宿題を終えた頃、1年1組のほぼ全員が宿題を終えて、ホッとしていた。しかし、約1名、まだウンウン唸っている子がいた。


「絵日記、あと1枚どないしよう?」


 夏休みの間、ほぼ店の手伝いで過ごした小雪ちゃんは、絵日記の題材が無くて困っていたのだ。1枚は、珠子ちゃん、豆花ちゃん、緑ちゃんと盆踊りに行ったのを書いた。


「この前、珠子ちゃん達がかき氷を食べに来てくれたのを書けば?」


 それでは、盆踊りと同じメンバーだと小雪ちゃんは悩んでいるのだ。


「なぁ、ええアイデアが浮かんだで! 小雪も店の手伝いばっかりやったから、最後の日ぐらいはパアッと遊ぼう! お父ちゃんが配達から帰ったら、花火をしよう」


 夏場は氷の配達も忙しいのだが、お父ちゃんは頑張って早く終わらせた。商店街の玩具屋さんで花火を買って帰り、三人でバケツに水を入れて近所の公園へ向かう。


「花火なんて、初めてやわ」


 雪女のお母ちゃんと、小雪ちゃんは、初めはビクビクしていたが、次第に綺麗な花火に夢中になった。


「ほら、これなら小雪もできるやろ」


 小さな線香花火を三人で座って見ていると、夏休みが終わったんだと寂しくなる。


「小雪は、よう手伝ってくれたなぁ。冬休みは、店を少しの間休んで、お祖母ちゃん家に行こうな」


 氷屋の夏は休み無しだったので、冬は少しは小雪ちゃんと遊んでやりたいと、お母ちゃんもしんみりする。


「お祖母ちゃん家に行くの、楽しみやわ! さぁ、花火の絵日記を書かなあかんわ」


 元気な小雪ちゃんを見て、お父ちゃんとお母ちゃんは、感傷にひたっている暇は無いなと笑った。




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