表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/50

1  1年1組は妖怪学級だよ!

1年1組 森 鈴子(泣き女)※親の職業 父×母


1 天野 良(天の邪鬼の孫)※検察官×弁護士


2 伊東 緑(ろくろ首)※伊東呉服店


3 井上 隼人(黒羽根のハーフ)※宅配便屋×お花屋さんパート


4 大野 大介 (だいだらぼっち)※力仕事×田舎暮らし


5 髪切 ノノコ(髪切ばばあの孫)※ムーンライト美容院


6 亀田 千尋(沼亀のハーフ)※亀田ペットショップ


7 河井 九助(河童)※河童の漬け物屋


8 犬童 謙一(狼少年)※警察官×専業主婦


9 権田 銀次郎 (ゴンギツネ)※神社の神主×専業主婦


10 高石 堅固(岩男の孫)※左官×スーパーのパート


11 橘 豆花 (小豆洗い)※橘和菓子店


12 中野 忠吉 (鼠男)※大工×縫い物内職


13 長池 蜜 (牛頭のハーフ)※トラック運転手×事務員


14 根田 勝男(壁鼠のハーフ)※公務員×公務員


15 野馬 亜香里(青午の孫)※ジョッキー×JRCの職員


16 火野 克己(青火のハーフ)※大阪ガス×大阪ガス


17 笛崎 響(夜笛のハーフ)※バンドマン×弁当屋のパート


18 真野 かずえ(野火の孫)※公務員×蝋燭屋


19 三羽 旭(三羽ガラスの孫)※三羽烏探偵社


20 霙 小雪(雪女)※霙矢(山岳写真家)×霙屋


21 山田 真理亜(山狸のハーフ)※うどんや


22 米倉 珠子(猫娘)※旅人×ブローカー


23 童子 詫助(座敷わらしの孫)※不動産屋




 大阪のど真ん中にある月見が丘小学校には、少し訳ありの子ども達が通っている。もちろん、普通の人間の子ども達も通っているが、ドーナッツ現象で人数は少ない。訳ありの子ども達は全校生徒の3分の1を占めている。


 桜が満開の4月に、月見が丘小学校に元気な新1年生が入学した。1年2組と3組は普通の人間の子どものクラスだ。1年1組は、妖怪や半妖怪の子ども達が、2年生になるまでに人間の社会に馴染む練習をするクラスだ。


「みなさん、おはようございます!」


 大阪の小学校なのに、標準語で挨拶をするのは、色白で寂しげな美女の森鈴子先生だ。泣きぼくろがチャームポイントの鈴子先生も訳ありなのだ。


「先生! おはようございます!」


 号令を掛けた、少し目がつり上がったハキハキとした女の子が、級長の珠子ちゃんだ。珠子ちゃんは、猫娘なので、運動神経は人間なんて足元にも及ばないし、賢い上に面倒見も良い。まさに、級長にもってこいなのだ。


 月見が丘小学校の先生は、妖怪の子どもたちを人間社会で暮らせるようにしたいと考えるぽんぽこ狸の田畑校長先生の理念に賛同した先生ばかりだ。普通の人間の子ども達や保護者も、訳ありの子ども達が通っていることを承知している。妖怪の子どもたちを受け入れる事が無理な保護者や子どもたちは、他の小学校に通っている。


 1年1組には、半分妖怪の子どもたちもいる。両親のどちらかが人間だったり、祖父母の誰かが妖怪だったり、人間社会に溶け込んだ家族がいる生徒は、割りと失敗は少ない。


 しかし、両親とも妖怪の子どもたちは、その特徴によっては、なかなか人間社会にとけ込めない場合もある。


 猫娘の珠子ちゃんは、純粋な妖怪だが、人間社会によく馴染んでいる方だ。人並み外れた運動神経と、聴力の良さはあるが、ごく普通の女の子に見える。


 そう、女の子はしっかりしているので、化けの皮が剥がれることは少ない。


「銀次郎くん、耳が出ていますよ」


 鈴子先生は、国語の教科書を読ませながら、教室を回っていたが、ゴンギツネの銀次郎くんの席の横で、小声で注意する。


「わぁ! 今朝は尻尾をちゃんとしまえたのに!」


 慌てて耳を隠すが、今度は尻尾がポンと出てきた。


「銀次郎くん、尻尾が出てるでぇ」


 お調子者の河童の九助くんが騒ぐものだから、銀次郎くんは余計に慌ててしまう。鈴子先生は、静かに! と騒ぐ生徒に注意する。


「銀次郎くん、落ちついて深呼吸しましょう」


 白い顔の銀次郎くんは、真っ赤になっていたが、数回深呼吸して、尻尾を隠した。


 鈴子生徒がやっと授業を進めた途端に、キンコンカンコンと休憩時間の鐘が鳴る。


『一時間目の国語は、全然進まなかったわ……』


 昨夜、今日の授業をどのように進めるか、鈴子先生は考えてきたのだが、第一段階の本読みだけで終わってしまった。教えるべき内容まで進んでいないのを苦にする。


 ぽんぽこ狸の田畑校長は、新米の鈴子先生には1年1組の妖怪学級の担任は荷が重いのでは? と心配そうに授業の様子を眺めていた。


「米倉PTA会長の推薦でしたが、新米の鈴子先生では無理かもしれませんね。ベテランの先生でも苦労されるのですから……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ