夢の語り部
作風上、一人称と三人称が変わる場面があるかと思いますが、その時はちゃんと解るように工夫致しますので、ご安心ください。
俺はシステムだ。
話せば長くなるが、別に話す必要は無いため手短に済ませると、俺は世界が嫌いだ。より正確に言うなら、嫌いだと思うことすら出来ない自分が嫌いで、だから自分という存在を作り出した世界を嫌った。
人並みの感情はあるが人よりも淡白である自覚は小学生の時からあった。中学の時、体育祭で負けても悔しいと思えず、最初に考えたのは「どうしたら勝てたか」という反省点と、来年にはどう活かすべきかという、良く言えば合理的で、悪く言えば薄情な事だった。あくまで例えとして体育祭を出しただけで、体育祭以外にも似たような事は沢山ある。
ある年の事だ。俺は昨年の経験を元に、その年にクラスメートとなった皆へ、昨年のデータを元にした合理的な「体育祭での勝つ方法」を提示した。体育祭を楽しもうとする皆へ、勝つための方法を半ば強要しようとした。
クラスメート達は俺の意見を聞いてこう言った。
――滝瀬君は、勝てればいいの?
なにを言っているのか解らなかった。だってそうだろう? 勝つためにやるんだろ? 体育祭は勝ってなんぼで、だからこそ順位を付けるんだろ? ならば勝つべきだろう。そう思ったのだ。
だが、クラスメートはこう言うのだ。
――それで勝っても、面白くないよ。
その言葉にぎょっとしたのではなく、それでも俺は返す言葉を失った。何故なら俺はこう思ったからだ。
――お前らは、面白ければそれでいいのか、と。
噛み締めた唇に痛みは感じず、その言葉を呑み込むために手首を抓った。その時に触れた自分の肌の冷たさに辟易した。思えばそうだ、俺は、感情とか、心とか、そういうのを後回しにしていた。ある種の中二病だったのかもな、と、今なら冗談交じりに言えるが、それでも俺の本質はきっと、人間であることではなく、システムである事だろう。
目的を果たすために演算し、そのために不要なものは排除する事を厭わない。
俺はシステムだ。