生徒会執行部
はじめまして
文章を書くのが苦手なので誤字脱字があるかもしれませんありましたらご連絡お願いします
プロローグ
校則、それは守らなくてはならない秩序
どうしてだ。
どうしてこうなった。
いや、始めっから答えは分かっている。
第一条 人を殺すことなかれ
アイツだアイツのせいでこうなっている。
第二条 人から金を盗むことなかれ
男子三人。それも今日知り合ったばかりの他人が各個室の中に監禁されたと言う状況だ。
第三条 小事は生徒会に全権を委ねる
正確に言うなれば…トイレットペーパーがない状況なわけで。
破られし時は、処罰を下す
俺は思うあんな奴に出逢わなければ…。
生徒会執行部
それは昨日、転校先の学園から引っ越し屋を向かわせると言われ、自宅で待機していたことから始まる。
「おせー」
俺、高波 夕はソファーの上に横になりがら見ていた漫画本から目を離し、時計を見る。電話から丸一日経っていた。
「腹へったな」
俺は持っていた漫画本を机に置いて立ち上がり、台所に向かった。ゴミ箱にはカップラーメンのカップのゴミの山、冷蔵庫の中身はおろかコンセントすら入っていない。俺はビニール袋から無作為にカップラーメンを取り出す。
今日は醤油か…。
現在昼食、朝三杯連続醤油だった。わざわざ替えるのも面倒くさいので蓋を開け、お湯を淹れる。ちなみに残りは味噌5の塩2だ。
ピーンポーン。
お湯が淹れ終わった直後、インターホンが鳴る。
「やっとか…」
お湯を淹れたカップラーメンを机に置き、そのカップラーメンの蓋の上に箸を置く。それから、玄関へ向かい、チェーンと鍵を外す。
「どちら様ですか~」
決まり文句を言いながら顔を出したら紙をいきなり突きつけられる。
「動くなです。生徒会執行部です」
はっ?生徒会?どこの?
そんなことを考えている俺の顔に紙を貼り付け、生徒会執行部さんとやらは俺の部屋にズカズカと侵入してくる。俺は顔に張り付けられた紙を剥がして振り返る。
「お前ら、誰ッ?」
すると俺に紙を張りけるつけてきた(艶のある黒髪を腰くらいまで伸ばし、前髪を切り揃えた。小さな月の付いた髪留めのがんばっても中学生にしか見えない)女の子は、
「耳近刊ですか~。それとも悪いのは頭の方ですか~。僕らは、生徒会執行部です。詳細はその紙に書いてありますです」
人形のように整いすぎた無表情、生気のない目、どうでもいいことを話すような口調で俺を罵倒する。その言葉に俺は紙に目を向ける。
[引っ越しの手伝いは彼女達がしますので、生活に必要なものを運び出すのに遠慮なく使って下さい。
By 白犬学園学園長
追伸 彼女達には気をつけてください。彼女達もまた犯罪者です。]
そんな奴、寄越すな‼
「会長!物をベッドの下から発見しました」
まさか!
「よくやりましたです。前田くん」
「中内です」
眼鏡を掛けた黒髪の如何にも真面目そうな少年が目と目の間の部分を少し上にずらし眼鏡を掛けなおす。
「おしいです」
無表情のままボケる。
「一文字すらあってないですから…」
呆れながらもすかさずツッコミを入れる。中内君。
「ふむふむ、君もしかしてロリコ…。いや、このことは内密にしておくです」
生徒会長であるらしい少女はとある本を数冊見て話し掛けてきた。
「全く内密になってないけど!」
何人かの生徒会執行部の人。ってか家に押しかけて来た他の全員(男三人に女一人)に聞こえる声で言ってきたのである。何なんだコイツは…。
「大丈夫です。大事なところは最後まで言っていませんです」
「全貌丸分かりだわ!」
「それで何を運べばいいですか」
…ハァ~…疲れる。
適当にダンボール箱に詰め込んでいたものとベッドを持っていって貰うよう頼んだ。
次の日の朝。
「遅いです」
引っ越し先の学園の寮の俺の部屋の玄関の前に彼女はいた。
「………」
何故、彼女がここにいるのだろう。考えても全く答えに行き着かないので、しかたなく尋ねてみる事にした。
「何でお前が?」
俺は鍵を閉め、学園に向かって歩き出す。
「昨日、帰り際に言ったはずです」
聞いてない…。いや、覚えてないだけか…。昨日、言われたことなんて、てんで覚えていない。ロリコンと言われた事以外は!
「[学校は明日からだ]とです」
彼女は俺に横に並ぶ。
「はッ?」
いや、俺は何でお前がここにいるのかを知りたいんだが…。
「君は…。いや、昨日と同じ物言いは辞めますです。ところで病院を紹介しましょうか?です」
「昨日より酷くなっている!」
「気にするとハゲますです」
「五月蠅い!」
俺が今日から通う学校、白犬学園は前科者、正しくは親がいない未成年犯罪者が通う小、中、高の一貫校で全寮制である。犯罪の大、小に関わらず親のいない未成年犯罪者ここに集められる。
「つかっ、お前は誰だ」
「言ってなかったですか?生徒会長です」
「いや、立場じゃない名前を聞かせろっつってんだ!」
「初対面に対していきなり何ですか?ナンパですか?です」
とてつもなくどうでも良さそうな顔で返される。
「初対面じゃねーし」
「古いです。そんなんじゃ、今時、ブスでも落ちないです」
「いや、ナンパじゃねーよ‼」
俺はそんなに魅力ないのか?ちょっとは傷つくぞ…。
「そーですか。あっ、僕の名前は月野 三日月です。よろしくです」
…ハァ~…疲れる。とりあえず、彼女の名前は月野 三日月と言うらしい。
「後、僕がここに来た理由は君を生徒会に招待する為です。招待と言うのは生徒会の役職に就いてもらうということです」
「ハァっ?生徒会?何で俺が?」
「いえ、なんとなくです」
なんとなくって…。とんだ気軽さで生徒会に招待されたもんだ。
「あぁ、言って置きますけどこれ招待と言っても強制ですから」
「ハァっ⁉」
「君はハァ~ハァ~五月蝿いです。君は変態さんですか?それとも、欲求不満です?」
「ハァ~ハァ~言ってねーから!」
それに、それだとどっち道、変態じゃねーか?
「今言ったじゃないですか」
コイツあれだ。
「人の揚げ足取るな、揚げ足を」
「揚げなきゃいいんですよ揚げなきゃです」
ものすごく、うざいッ!
「この学園では僕がルールです。郷に入れば郷に従え。君は僕の秘書に成りたまえです」
死人を蔑むような目で俺を見る。
「横暴過ぎるだろ…」
てか、めんどいし…。わざわざ自分から生徒会に入りたいなんて思わない。第一、俺に生徒会なんて勤まるはずがないのだ。
「大丈夫です。君は僕のそばにいてくれるだけでいい…。簡単です」
何か心読まれた!ってか、それはそれで嫌だ。面倒な上に退屈だ!
「後、クラスは一緒にしてありますので安心して下さいです」
何を安心しろと言うのだろうか……。
「ってか、お前どう見ても俺より下だろ?」
俺は高校二年生、アナタはどう見ても中学生以下でしょ!
「何ですかいきなり?僕は小学生じゃないです」
マジッ高校二年生、これが!
「歴とした中学二年生です」
「歴としても意味ねーよ!二年生って所しかあってねーよ!」
「気にするな。ハゲ…です」
「ハゲてねーよ‼」
意味のわからない会話をしながら、学園に着き、教務室に連れて行かれる。
「君が今日から転校してきたロリコン君だね」
入って数秒、俺の担任を名乗る手入れの全くされてない黒髪をだらしなく伸ばした女教師から突然の攻撃。
「ハァ⁉」
「いや、失礼、他人の趣味をどうと言うのはいけないことだということは私も知っている。気にするな」
何なんだ一体!みんなして俺をロリコン扱いしやがって、確かに老いぼれより若い方がいいがロリコンまではいかないぞ。
「よし!じゃ~教室に案内するからついてこい」
何か釈然としねー。ってか、するはずねーけどな。
そんなこんなでK(高校の略。Sは小学、Tは中学だ)‐2‐C教室に着いた。いくつかの空席の存在する教室。
「今日から白犬学園に転校してきました高波 夕です」とかいう自己紹介もなく。
「あっ、君はそこの席ね。三日月ちゃんはその隣ね」
「はいです」
「じゃ~、また三限の理科でねー」
小さく手を振りながら教室から去っていく。俺は溜息をつきながら席に着いた。
「よう、転校生さん。アンタは生徒会の人間かい?」
人当たりの良さそうな作った笑顔で前に座っている奴に話し掛けられた。金髪で髪をツンツンと立たせている。イカにも馬鹿そうだ。
「なんでだよ…」
我ながらげんなりした声で返す。
「いや、初日から生徒会長さんと一緒に登校してきたからな。そうかな~と思って」
「ふーん」
俺は適当に返事をして鞄から教科書を机の中に入れる。
「で、実際の所どうなの」
「へーそれはすごい」
あちゃー。一冊入んねーじゃん。この教科書の場所を入れ替えて、これでギリギリいけるか?
「あの、人の話し聞いてます?」
「聞いてる。聞いてる。聞き流してる」
あっ、入った。でも、出す時面倒くさそうだな。
「流したら意味ないじゃん!」
「そーですね」
あー、そういや一限、数学だっけ…今、無理やり突っ込んだのじゃん…めんどくせ~。
「いい加減聞けよ!いや、聞いてください」
「ってか、お前誰よ?」
俺は机から教科書を出そうと悪戦苦闘しながら、しかたなく聞いてやることにした。
「えっ、あっ俺?俺は」
「あっ、取れた」
「てっ、聞こ!責めて自分で訊いたことくらい聞こ!」
「あっ、悪い。何だっけ?」
「自分から自己紹介させといて自己紹介してた所って言えってのかアンタ鬼か!」
「いや、人間だ」
てか、言ってんじゃん。馬鹿だなこいつ。
「どうでもいいからさっさと言え。俺は忙しいんだ」
「赤沼 いなり、高校二年生、罪状は万引き、部活はJKW」
「へーJKWって何」
「聞きたい?」
いなりはいやらしい笑みを浮かべて聞き返してくる。
「いや…」
「まっさかー。聞きたいくせに、無理しちゃってー」
いなりは人をムカつかせるような声を上げているが無視して、俺は自宅から持ってきた漫画本を鞄から取り出して読み始める。これが結構面白いのだ。
「興味なさそうだね」
「忙しいからな」
「忙しいって、まぁ、いいや転校生さんはどの部活に入るか決めてる?」
「いや」
俺は漫画本のページを捲りながら返す。半分以上聞き流しているがコイツは馬鹿だから気にしないだろう。まず、気がつかないだろう。
「じゃ~、俺のとこ、来ない?」
「いや、お前と一緒なのはちょっと…」
「うわっ、酷ッ‼」
「へー」
「へーって何!?ちゃんと聞いてくれてます?」
「いや何も…」
「話だけでも聞いて!いや、聞いてください!」
「ヤダ」
俺は一旦、漫画本から目を離し、真顔でいなりを見ながら即答する。そして、また漫画本に目を向ける。
「……いいよ、いいよ。一人で話すよ。お前に向かって話すから。他人からは会話しているように見えるさ!」
いなりは涙で目を潤ませながら叫び散らした。いなり…。「お前それは人としてどうなのだ…」と言おうとしたが刺激して変に反応されたくない、と言うのと、始めから人としては終わっているしな…、と言うことから言わないで温かい目で無視した。ただ心残りなのは、周りから見ればコイツと一緒に話してるように見えると言うことだ。
そんな感じで俺は適当に右から左に流し続けた。
昼休み。
「高波君、行くです」
気持ち良く寝ていると三日月に起こされた。転校初日から爆睡してしまった。
「なんだよ?人がせっかく気持ち良く寝ているというのに」
「ご飯、奢ってあげるです」
そう言われたらついて行くしかないわけで…。着いたのが生徒会室。何故に。
「入るのです」
「おはようございます。会長」
「おはよう。ミカちゃん」
「遅いッスよ会長。あれ、それ、誰ッスか?」
開かれた扉に入ると二人の男と一人の女がいた。
「今日から新しく入った高波 夕君です」
三日月が俺を紹介する。
「ども」
俺は頭を掻きながら頭をさげる。
「えっ、もしかしてロリ…」
ガスッ。
取り合えず頭に一発入れて黙らせる。この学校のどこまでこの噂が広がっているのだろうか?かなり幸先悪いぞ。
ちなみに、生徒会室にいるメンバーは昨日、俺の家に来たメンバーではなかった。
「痛っ、何スンでスか!虐めは、良くないッスよ!」
黒の長髪を後ろでゴムで纏めている少年は頭を押さえて笑う。Mなのだろうか気持ち悪く笑っている。
「当然のことをやったまでだ」
「へー、威勢がいいッスね。で、あなたの役職はどこッスか?」
「いや、まだ入ってな…」
「僕の秘書です」
俺の言葉を三日月が遮る。秘書なんてポジションあるのか?社長か何かかここの生徒会長様は…。
「おいっ」
「気にしないでください。些細なことです」
…。ハァ~…疲れる…。もう、否定するのも面倒くさい。
「これです」
三日月は教室から持ってきた鞄の中から重箱を出す。重箱を学校に持ってくるとかありなのか?まず、重箱なんて、テレビの中でしか見たことねーよ。
「弁当作って来るって本当だったんスね。明日にでも槍が降るッスね」
ガシンッ。
笑いながら弁当を開けようとした少年に金属バットが頭にぶち込まれた。
「いい忘れてたです。ここに倒れている馬鹿が運営の高校二年、山田 一成君、そこのニコニコ気持ち悪いのが会計の高校三年、成夜 冬馬君です」
「よろしく」
茶髪で優男的美形な成夜が手を前に出す。俺も手を差し出し。
「どうも」
しっかりと握手を交わす。
「いい忘れましたですけど。それホモです」
………。それと、呼ばれた成夜はニッコリと爽やかな笑顔を俺に向けている。
「えっ…」
「ははっ、人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。会長」
「ははははは…なんだ。冗談か…。ははは…」
俺は手を離そうとする…。が、離れない…。離してくれない。
「そうですよ。まったく…。男が男を好きになるなんて、生物学上、異常としかいえません。そもそも…」
いや、誤解を解くとかとかどうでもいいんで離して、話は後から聞いてあげますから!とりあえず離そうか。離してくれ~~~~‼
俺は引きつった笑顔をしながら冷や汗を流し目で訴える。
「あっすいません」
十分後、やっと離してもらった。結果として全く目の訴えは効かなかった。
「最後に副会長の高校三年、桜 ナミキです」
「よろよろ!」
活発そうな感じのポニーテールの少女が笑顔で挨拶してくる
「よろしく」
無難に返す。
「さぁ~、さぁ~。座って、座って」
ナミキが椅子から降りて俺の両肩を後ろから掴んで、もう回復している一成の隣に座っている。
「ゴキブリか…!」
「えっ、ゴキブリ?どこどこ?」
一成がわざとらしく首を左右に振る。いなりといいコイツといいこの学校は、馬鹿が多いらしい。
「お前だよ」
「そんな俺は人間ッス。人間であるはずッス。あるはずなんス。あるよな。あるかな。ない…」
なんなんだ。コイツは…。
俺の向かいにナミキが座る。その隣に成夜、俺とナミキの斜め前に三日月が座る。そして重箱を開く。箱の一つ一つが弁当になっていて上の方の二つが少し少なめな女性用の弁当、残り3つが男性用の弁当となっていた。
「ほら、好きなの召し上がって下さいです」
どれも同じように作られた弁当を俺達はそれぞれ食べた。
ズズズー…ハァ~。
食後、お茶を啜る生徒会メンバー+俺。三日月の弁当はとてもおいしかった。
「お前、料理うまいんだな」
「それはカップラーメンよりは、おいしく出来るです」
三日月は嫌みを言い、お茶を啜る。その頬は少しだけ赤みを帯びている。
熱いなら飲まなきゃいいのにな。それとも、照れ隠しか?はっきり言ってどうでもいいが。
「それよりおなかの具合はいかがです?」
んっ、腹、別に何ともないが…。
「なん…」
グルルグュル。
言葉を遮る唐突な腹の音。そして、湧き上がる痛み。冷や汗がスーッと頬に垂れる。
「なっ」
「やっと効き目が出たみたいです」
バンッ。
唐突に一成が扉を開け放ち廊下に出る。成夜もその後を追うようにして廊下へ出て行く。三日月はスカートのポッケから小瓶を取り出し彼女の目の前で軽く揺らす。
「効くもんなんですね。強力便秘薬」
何ッ~~~~‼
俺は走る。そしてトイレの扉を開け放ち、飛び込んだ。
ま、間に合っ…た~。全くなんて女だ。
そして気づくのだ。トイレットペーパーがないことに…。
「NOーーー‼」
どうするよ。俺!
俺は心の叫びを一部洩らしながら、ポッケの中に手を突っ込んでみる。当然のことながら何かの役に立つ物など入ってない。
あっそうだ成夜と一成も入って来てるはずだ。
「一成、成夜。お前らのところトイレットペーパー…」
「ないッス」
「残念ながら」
そして始まりの状況になるわけだ。なんてこった。最悪だ…。なんで男三人でウンコくせ~便所に隔離されてんだ。どんな状況だよ全く。
「ティッシュとかもか」
「ありますが…。一枚です」
「あっ、俺ないっす」
これマジヤバいじゃん。誰か来るの待つったってここ選択教室とかが並ぶ特別塔だし、運良く来たとしても昼休み開けギリギリまでこないだろう…。うわー、最悪な初日だ~。
ガチャッ。
誰かが入ってきた。救世主か!
「あのスイマセン」
俺はおずおずと救いを求める。助けてくれるなら、悪魔だろうがかまわない!
「なんです?高波君」
三日月の声。
「トイレットペーパーを…てっ、何でお前がここに!ここは男子便だぞ!」
「君を脅迫するために決まってるです。その為に、わざわざ強力便秘薬を入れた弁当を用意して、この塔のトイレットペーパーをすべて抜いておいたんです」
「なっ!」
アナタそこまでして何が望みですか…?まさか、俺を、秘書にするためだけにこんなことをするわけあるまい。何か他に望みがあるはずだ。
「あのー、その脅迫には僕らも関わっているんスか」
一成が聞く。
「いえ、アナタは最近生意気なんでついでです」
単純すぎる解答が返ってきた。
「酷ッ!」
「一成さん、生意気なのはダメですよ」
成夜はトイレに隔離されているにもかかわらず。さわやかな口調で一成を追撃する。
「冬馬さんまで!」
「冬馬君はそのついでに気持ち悪い作り笑いを直して貰おうと思いましてです」
「以後精進いたします」
「精進することじゃないッスよ。冬馬さん」
「で、どうです?高波君」
「どうですったって。この状態じゃ糞しか出来ねーぞ」
「簡単です。生徒会に入ると言っていただくだけで結構です」
こちらも単純明快、他なんてものがなんもねーのかよ。
「そんなこと死んでもできるか!」
「うおっ!なんか、かっこいいッス。あれ?でもあんた生徒会に入ったんじゃ…」
「先に言っておきますが。今し方、トイレの前に清掃中の立て札をかけて置きましたです。警備員が巡回してくるまでは、誰も入って来ませんです」
「生徒会に入らせていただきます!」
俺は全力で訂正する。こんなところにそんな長い時間拘束されてたまるか!まず、警備員が今日中にくるとは、限らないのだ。
「うわ!かっこ悪、あんた男としてのプライドはないんスか!」
「生きるか死ぬかの瀬戸際にプライドなんて捨てるに決まっているだろ‼」
俺は真面目に答えた。鏡がないのでなんともいえないが、今の俺の目はきっと透き通っているはずだ。
「いや、そこで真面目に開き直られると…。ってか、どっちみち生きられますし…」
「よく言ってくれました。高波君。それでこそ、生徒会としての正しい判断です」
「成夜さん!」
「トイレットペーパー」
俺はトイレの上の隙間を見ながら言った。
「はいです」
するとすぐにトイレットペーパーが天使のように隙間から落ちてくる。そして俺達二人は九死に一生を得た。そう、二人は。
「あれ、何か忘れてないか?」
俺は手を洗い終わってからトイレの個室のドアを見て言った。
「気のせいじゃないですか?」
俺の言葉に成夜は爽やか度が増した作り笑いを浮かべながら答える。
「そんなことより早く行かないと授業に遅れるです」
そして俺達三人は教室を目指した。
「あれ、みんな僕のこと忘れてないッスよね…。あれ、さっきの誰かが出て行く音したけど…。…まさかね。みんな僕を騙してるだけだッスよね…。居るッスよね一人くらい…」
彼の叫びは後に学校の七不思議として後世に受け継がれていくことになる。
「ダリかった~」
白犬学園、1日目が終了した。朝より鞄が軽く、三日月にもらった秘書日記と書かれたノートが一冊入ってるだけである。俺は三日月に「今日は疲れたでしょうです。生徒会は明日からお願いしますです」と言われたので、お言葉に甘えて寮に帰るため校門をくぐった。
夢、幻想
「いいの?お兄さん巻き込んで」
母親のような、と世間一般では言うような声色でナミキが僕に話して掛けてきた。
「はい…。僕が見てない所で巻き込まれては対処出来ませんから」
本音でもあり嘘をつく。
「素直じゃないんだから夢ちゃんは」
窓の外の兄の背中を見てる僕にナミキは背中から抱き締めてきた。夢と言うのは僕の本当の名前。
「そこが好きなんだけどね」
ナミキは練っとりとした甘い息を僕にかけてくる。気持ち悪い…。
「僕はそういうアナタが嫌いです」
「あらら、振られちゃった…」
世間一般で言うと姉のようなおどけた口調で僕に言いながらナミキは僕から離れた。
「僕は同性愛に興味はないです」
「ブラコンのク・セ・に~」
ブリッ子口調になった。こんなにいろいろな口調で話しかけてくることが恨めしい。
「そうですが何か」
適当でいい…答えなんて適当でもだいたい伝わる。それだけ僕らは一緒にいた。
「あららッ」
それ故に僕らはお互いを知っている。それがいいことであろうと、悪いことであろうと。
「お熱いことで」
ズズズー。
ナミキは椅子座り直してお茶を啜る。僕はそれに目を向けずただ一点だけを見つめる。
兄ちゃん…。
秘書日記
今日は疲れた。帰り道で猫を見つけた。暇なので飼って見ることにした。名前は太郎にした。