プロローグ
まだまだ、駆けだしの設定ですので、至らぬ点が多いと思われますが、どうぞよろしくお願いします。
―――プロローグ―――
「ふあー…」
俺は、寝ぼけ眼で体を起こす。
時刻は、AM6時。
いつも通りの起床。
日の出が早い時期だったので、既に太陽は高い位置まで来ていた。
「えー…っと」
徐々に覚醒していく頭とは裏腹に、身体の方は、なかなか動いてはくれない。
もう、3日。
俺が行っている仕事は、お世辞にも安定した職種ではない。
だから、今のように飢えることもちょくちょくある。
と、そんな風に考えていると余計に腹が減るのは、人間の悲しい性だ。
「おはよう、空」
俺の名前を呼ぶこいつは、陸という。
毎日、俺の仕事を手伝ってもらっている。いわゆる職員だな。
といっても、俺と陸。
職員と呼べるものは、この二人で全員。
「おはよう」
俺は、簡単に返事をして、再び横になった。
「今日は、頼みますよ、空。僕の家にある蓄えも、ほとんど底を尽きかけているんですから。もういい加減、仕事を見つけてきてもらわないと」
嘆息混じりに頼まれても、こちとら一切の食料が無いというのに。
元気いっぱいに、活動できる気力は皆無。
と、までは言わないにしても、やはり体力の限界は近かった。
「わかってるよー」
「ほんとに、頼みますよ。社長」
「だから、社長じゃねーって…」
俺は、体を反動を使って起こし、視線は陸ではなく、その先を見ていた。
「おはようさん!今日も、ずいぶん暇そうにしてるじゃないかい?」
「…あー、おはよう。おばさん。暇じゃないよー。これから忙しく…」
「あら、そうなの?じゃあ、この鶏はいらんかねー…?」
意地悪そうな視線をこちらに向けたおばさんの右手には、なんと食料が握られていた!
厳密には、動物であり鶏なのだが、俺にとっては食料以上でも以下でもない。
純粋な食料だった。
「…話を聞きましょう」
俺は、しっかりと相手に向き直り、話を聞く態度を示す。
これに、満足そうにおばさんは満面の笑みを浮かべる。
「よろしい。じゃあ、さっそくだけどね…」
おばさんの話では、旦那さんが病気で床に伏しているので、農場と養鶏場の仕事を手伝ってほしいとのことであった。1週間。
はっきり言って、俺の専門の仕事でないし、期間も少し長い。
労働に対する報酬として、適当なのかどうか悩ましいところだった…が。
背に腹は代えられない。
「わかった。んで、今日はどっちからだ?」
「そうさねー、農場の方が少し人手が足りないからね。そっちを頼もうかしらね。」
「おう。あー…それと」
「支払いは、日給でやるよ。その様子だと、しばらく飯食ってないんじゃないのかい?働いているときに倒れてもらっても困るからね。仕事前と仕事後に二回の報酬。これでどうだい?というより、食っていきなさいな。陸君はどうする?」
「あー、いえ、僕は経理のまとめとかやっておきますので、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
ここで、初めて陸が口をはさむが…いや、そんなことより、予想外の報酬だ。
つまり、仕事の期間中は仕事前の飯と、おみやげに仕事後に食料がもらえるというのだ。
願ってもない。
「悪いね、じゃあ行ってくるわ。留守番、よろしく」
俺はニタニタと、笑顔を浮かべながらこの場を後にする。
「そういうのいいから、真面目に仕事して来てくださいよ。あと、留守番でなく経理です」
「はいはい」
俺は、陸に背を向け、上機嫌に歩きだす。
………明日は、我が身………
それが、この世界の常識理念なのだ。
『生きているのが当り前』という考えを持った者から、死んでいく。
そんな世界になったのは、何十年か前の世界戦争で『統治』というメカニズムが崩壊してしまったからだと、誰かから聞いた。
国家が国民を統べ、法の下に暮らす。
そんな甘ったるい夢物語を語る者は、もういない。
今では、全てが個人の『自由』であり、『責任』なのだ。
もし、明日誰かが死んでしまったとしても、その責任は関係者だけで解決しなければいけない。
どこかの古文書で見た、『法の番人』など存在しない。
仮に誰かが殺されでもしたら、殺されてしまった者が悪いのである。
そして、日々を暮らす上での食料は、俺達は便利屋として働くことで得ている。
『労働』で『食料』を買っている。
そうだ。思い出した。
金は、俺達には必要ない。
そんなものあったところで、ただの紙でしかないのだから。
いわゆる上流階級の貴族どもは、未だにお金にしがみついているが。
世界戦争の傷痕は、『国』というものを消滅させた。
故に、ここがどこかと聞かれても、名前も領地もないのだから、説明できない。
ここは…きっと、『自由』に溢れかえっている場所なのだ。
そう。そして、俺は、便利屋の代表こと、『名無し、家無し』の少年。
『空』なのだ。
続きます。よろしくお願いします!