詩: 約束のティラミス
掲載日:2026/05/18
「一番好きなケーキはティラミスだな」
「それなら 今度のデザートはティラミスにするわ」
翌日
あなたから短い電話がありました
「きちんと離婚の手続きを始める
しばらくは連絡しないほうがいいだろう」
毎週金曜日の夜だけが
世界がかろうじて
ふたりを許してくれた時間でした
あなたは わたしが作るデザートを
わたしの存在ごと味わうかのように
愛してくれました
連絡が途切れた間
わたしは 毎週金曜日に
ティラミスを用意しました
誰も来ない部屋で
甘く ほろ苦い香りだけが
あなたを待ち続けていました
テーブルの向かい側に置いた
ふたつめの皿が
あなたの不在を伝えていました
三か月たったある金曜の晩
ドアのチャイムが鳴りました
わたしはモニターに目をやりました
たちまち
頬が赤く染まり
瞳に涙があふれました




