プロローグ「帰る家があるっていいものですね」
俺は普通にどこにでもいる大学二年生の井上久。今日も適当に大学の講義に出て帰ってきた。家の近くまで来ると誰かが外に立っているのが見えた。近づいてみると親父とおふくろだった。親父はサンダル履きでたばこを吸っていた。おふくろはおにぎりを食べていた。いったい外で何をやっているのだろうか。
「親父達。外で何してんの?」
「ああ。久か。いあなあ。ちょっとなあ……」
「ちょっと何だよ」
「まああれを見てみろよ」
親父の指の方向を見たが何も無い。あるはずのものがない。今日出る前にあったはずの俺の家が無いのだ。塀は残っているので確かに俺の家なはずだ。なぜ無いんだろうか。
「家が焼け落ちて灰になったんだよ」
「はあ!? 何言ってんだよ?」
「まあ。いいか。保険で直そう。母さんだから良かっただろう。保険入っておいて」
「ばっちりね。金目のものもしっかり持ち出して来たわ」
おふくろは嬉しそうに貯金通帳を掲げた。確かにグッジョブだが何かが違う気がするぞ。
「それより説明してくれよ。何があったんだよ」
「いや。何ってお前の部屋が爆発したかと思ったら一気に燃え広がってこんな状態さ。参ったね。こりゃあ。こんなこともあるんだなあ」
親父とおふくろは前から天然だと思っていたがここまでだとは思わなかった。何がこんなこともあるんだなあだ。家が灰になったのにこの落ち着きぶりは異常すぎる。とにかく親父達は話にならん考えろ。何か最近おかしなことがあったはずだ。昨日か。いや。昨日は何も無い。じゃあ今朝か。今朝。今朝。
「あ。思い出しだぞ」
俺は一つ思い出したことがあった。
「あいつの仕業か!」
「おい! 久! どこに行く」
俺はあいつを探すために家のあった所に駆け出した。こんなことをやるのはあいつ以外には考えられない。絶対に探し出して吐き出させてやる。
ご拝読ありがとうございます。
コメディーっぽいものを書いて見たくてまだ少しですが投稿してみました。設定は凝らないで軽く書こうと思いますのでよろしくお願いします。