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過去の傷

※注意※【ちょっとした出血描写あり】


どんな願いも叶うという秘宝《願具》を求め旅する、傭兵に扮した騎士ダップと古物商に扮した魔法士のシャリスの話。

街をぐるりと周り、お目当ての鳥料を堪能すると、二人は宿屋に戻った。


ダップ『何かあったら知らせてくれよ、

シャリス『うん。お休みなさい。


パタンパタン、カチャカチャ


それぞれの部屋に入ると鍵をかけた


ーーーーーーーーーー


ダップ『ふー…。


パチンパチン!ガチャリ…ゴトッ!


鉄で出来た右腕を体から外す。肩からごっそり抜けた断面には、いくつもの管と穴の開いた鉄のカバーが丸出しになる。


ダップ『痛っつつ::まだ外す時に頭が痺れるな~これから暫く旅するんだ簡単に壊れるなよ、ローンの支払いもまだなんだからな


カチャカチャ…


慣れた手つきの左手で、機械仕掛けの右腕を軽くメンテナンスをすると彼も眠りについた。


ーーーーー


~過去の話~


ゴールド王国の首都より少し離れた場所の村にダップの家族は14年前に引っ越してきた。刀鍛冶の父はそこから都の大きな鍛冶屋に通い、母は近くの農家のお手伝いをして生計を立てていた


近所には以前からシャリスの家族も住んでおり、親が共働きのダップはよくシャリスの家に遊びにいっていた。シャリスの父は都の印刷工場で働き、病弱な母は空気の良いこの場所で療養していた。


『アハハハハッ!


ザッザッザッザッザッ!


草原で楽しそうに走る二人の子供の影


シャリス『ふふーん♪どうよ!

ダップ『シャリスちゃんは足が速いな~追いつかないよ、鬼はもうこりごり~O

シャリスの母『ダップちゃんいらっしゃい、今日はクッキー焼いたの食べていって

ダップ『やったー!おばちゃんのクッキーめっちゃ好き!母ちゃんのより美味しいよ!

シャリスの母『まぁ、お世辞はまだ早いわよ?


外で遊んでいた二人を家の方に招くと、縁側にクッキーとジュースを運んできた


ダップ『本当だもん~わぁ美味しそう!頂きます~♪

シャリス『ダップがお世辞なんて言えるわけないでしょ、本当に美味しいのよお母様

シャリアの母『そういう言い方はよくないわよ、シャリス。

シャリス『ごめんなさいお母様;でもつまり素直って事よ。

ダップ『そうそう♪あーこのジュースも美味いな~♪

シャリスの母『…フフフッ///

ダップ『どうしたのおばちゃん?

シャリスの母『あ、うん何でもないの御免なさい;

ダップ『?あ、この大きなクマの形のも食べていい?

シャリスの母『どーぞ、沢山召し上がれ


シャリスのちょっとした嫌味に気づかず、うんうん言いながら無邪気にお菓子を食べるダップに、つい笑みがこぼれて慌てて謝るシャリスの母。病弱だがダップの元気さに励まされるのか彼が来ると体も軽くなった。


シャリス『今度はお絵かきしましょうか?あ、それよりあの絵本の続きを読んであげるわ!私の部屋に行きましょ!

ダップ『うん!


ドタドタドタ!


シャリスの祖父は凄い魔法使いだったらしく、絵本を読みながらよくその話を聞かされた。彼から貰った沢山の絵本を今も彼女は大切にしている


シャリス『呪文を唱えるとツボからどんな願いも叶える星の竜が現れたの!

ダップ『それで豚の勇者はどんな願いをしたの?

シャリス『フフフ、それはねー


楽しく笑う二人の声が二階の子供部屋から聞こえた


ーーーーーーーーーー


シャリスの母『うくっ!…


ドタタン!!


いつものようにダップが彼女の家に遊びに行ってると、突然シャリスの母親が家の廊下で倒れてしまう。すぐに父親に連絡し、医者を呼んだがもう手遅れに近い状態だった


緊張が走る西日の強い夕方ー


医者『全身に発症してます。んー…後2、3日もつかどうか…

シャリス『そんな!お母様!ダップお母様が死んじゃうよぉ!わぁああーーーん!::

ダップ『うううっ、おばちゃん::

シャリスの父『…余命2ヵ月と言われて1年経ちましたが、もう本当に、どうにもならないのでしょうか?

医者『んんーある事はあるのだが、危険な話だぞ?

シャリスの父『妻がまた元気になれるのでしたら何でもやります!教えてください!

医者『この病気を唯一治せる秘薬の事だが…

ダップ『!?


秘薬となる花の話をする医者


医者『それが生息する森には今は凶暴な肉食モンスターが巣を作っている。行くのは危険だ。

シャリスの父『いえ、可能性があるなら僕は行きます!すぐ準備してきます!


ベットから少し離れて説明する二人の話をダップは注意深く聞いていた


シャリス『お母様!死なないで死んじゃいや!あああーーん::

ダップ『…!!


ダタタタタタッ!!


ダップ『待ってろよ!おばちゃん!


その話を聞いたダップは、一人頷くと誰にも言わずにその場から飛び出し森に探しに行った


カチャン!ギーーッ…ジャキ!


シャリスの父『僕には大した魔力はないけど、これなら怪物と戦える。借りますよお義父さん!シャリスは母さんを見てて、父さんが必ずお薬の花を見付けてくるから!

シャリス『グスグス…うん、お父様!


ダダッ!!


シャリアの父は母の父が残した魔法銃を倉庫から持ち出し、ダップより3時間ほど遅れる形で家から急いで出発する


シャリス『お母様少し待ってて、お父様が今よい薬の元を採って来てくれるわ、だから大丈夫よ!ね、ダッ…プ…?


ーーーーーーーーーー


ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!


月明りも届かない、夜の森の中を走る小さな少年の姿


ダップ『ハァハァハァ…!うぁああ!!!

虎型の怪物『ガルルルル!!シャーウ!!


ガブッリ!ザザザザーッ!!ブシュウーーーッ!!


ダップ『ぎゃああああーーっ!!::


偶然その花を見付けるも、凶暴なモンスターに襲われダップは右手を噛み千切られてしまう!あまりの激痛にその場で失神してしまった、更にモンスターはその柔らかそうな腹を噛もうとするが…


シュィイーーーン!!パーーン!パーーン!


モンスター『ギャイン!!::

シャリスの父『まさかあれは、ダップ君!?;大丈夫か!!


シャリアの父の魔法銃が彼の命を救ってくれた


秘薬の花と一緒に血だるまのダップを抱えた父の姿を見て、シャリスは大きな声で泣きじゃくった


ーーーーーーーーーー


そして…


シャリスの母は秘薬で一時的には良くなったものの、やはり二年後には亡くなってしまう。


その後、森で多く繁殖した凶暴なモンスターは邪悪な魔導師の仕業と分かり、国の兵士と市民が協力し魔導師のアジトである地下迷宮を攻略。討伐に成功し森が平和になるも、その壮絶な戦いでシャリスの父とダップの父は死んでしまったのだ。


お互いが12歳の時、一時的にダップの母がシャリスを預かる形になった。彼女は猛勉強して15歳の時飛び級で魔法大学に入り、凄い賞を取るとそのまま魔法学会、学長の補佐となった。


その時である、昔話だけの秘宝「願いを叶えるアイテム」を興味があった彼女が魔法による研究で《願具》として存在の可能性を発見したのは


ダップも一度は試験を落ちるも次の年晴れて騎士となり、18歳で国の兵士となった。普通、騎士は市民出身の人間にはなれないのだが、邪悪な魔導師を討ったダップの父の息子という事で特別に許可された


ーーーーーーーーーー


朝食を軽く済ますと、駅から出るホルイゾン行きの馬車に乗り込む。乗客の中にはあのダップ達をつけている者もいた。


御者『それでは出発しますよ!


ピシッ!

ヒヒーーン!!パッカポッコパッカポッコ…


馬車がガラガラと発進すると、10人ぐらい乗れる広いキャビンには賞金首のポスターが張られているのに気が付く


//森の出没中の盗賊団員、一人につき300G//


シャリス『ふーん、村の森に盗賊が出るらしいわね。んー厄介な事にならなきゃいいけど;

ダップ『見付けたら即ボコって、自警団に突き出して賞金を貰ってやるさ、アハハッ!

シャリス『あまり無茶はしないでね、これから長いんだから

ダップ『でも放ってはおけないだろう、被害も出てるんだし

シャリス『それは地元の自警団や兵士に任せましょう、私達の任務それ以上に大切な事よそれを忘れないで。

ダップ『へいへい、分かってるよ。

シャリス『ハイは一回で。それに「へい」じゃないでしょ?

ダップ『はい!そうでございますねシャリス殿!

シャリス『うむ。宜しい。


二人でクスクスで笑ってると馬車は街を囲む林を抜ける。すると目の前には入道雲が見える青空の下、果物農園が辺り一面広がっていた、周りから果実の花が放つ甘酸っぱい良い匂いが爽やかな風に運ばれる


シャリス『はー良い香りね~もうすぐ夏ね

ダップ『ああ、こりゃ美味しそうな匂いだな~多分柑橘系だな!

シャリス『全くも~!貴方本当に食いしん坊ね、こう初夏の風情を楽しむって感情は無いの?

ダップ『夏っていや蚊がブンブン鳴る音とかか?

シャリス『違うわよ!(><///::


ハハハハとまた二人は楽しく笑った。それを冷ややかに見つめる乗客が一人。


追う女(むーーっ!///;またイチャイチャしてる~独り身の私に苦行ですか神様?!


ーーーーーーーーーー


村に着くと長期滞在になるため格安の宿を探す


宿屋『部屋は今1つしか空いてない、真ん中にカーテンで仕切るのはどうかな?田舎の小さな宿屋で申し訳ない。


少し不満そうなシャリスに『贅沢言うなよ』とダップが説得すると渋々決める。そして村の市場で明日からの願具探索に必要な雑貨や食料など買い込んできた


シャリス『森での探索は3日から1週間ぐらいとみてるけど、それ以上かかるなら一度村に戻ってまた準備や補充して再度チャレンジ。これの繰り返しでいきたいけど、どうかな?

ダップ『いいんじゃないかなそれで、


彼女が頷くと続ける


シャリス『この村はポーションが売ってないから、私が持ってる2本と効果の薄い薬草だけになるし、村の病院も設備はそんなによくないから、あまり無茶は出来ないから気を付けて。

ダップ『了解。


打ち合わせ後、二人は明日の準備をし荷物を確認するとカーテンを閉め静かに眠りにつく。翌日、よく晴れ渡った空の下、願具が眠るであろう山へと向かう。


追う女(フフフフフーッ、もうイチャイチャはいいからさっさとお宝の場所に案内しなさいよ、じゃないと割に合わないわ!


そしてもう一人、プンスカと怒りながら二人を追う影も山に続く森へと入っていった


~願い神の消滅・第6話完~

過去に何があったかまとめてみました。シャリスがちょっと口が悪いのは小さい時からだったみたいです(笑

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