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愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


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8/24

八  男同士 ケビン→アベル

少し無理やりな描写があります。

「何故お前がここに居る」


 聞き覚えのある声に思わず反応した俺は振り返った。


「・・伯爵様、本日はおめでとうございます」


 一応この日のパーティー会場を依頼した依頼主に対しお辞儀をする。


「今日の招待客の中にお前の名は無かったはずだが?」


 伯爵様はその場から動かず、声だけで俺を威嚇してきた。

 相手が同じ平民ならば喧嘩を買っていたが、ここは伯爵邸。しかも相手は伯爵様だ。


「以前もお話したと思いますが、本日は我がロータス商会にて準備させて頂きました。その確認で会長である私が来ました」


 間違いではない。このパーティーの依頼は伯爵家だが、実際の依頼主はジュディ・ウォルダー侯爵令嬢だ。(もう令嬢では無いが)


「俺が聞いているのは何故お前が、この場所に居るんだ?だ。ここは屋敷の人間以外は入れない場所だ」

「・・・」


 そう、ここはパーティー会場から離れた場所。詳しく言えば別邸の近くだ。

 マリエンヌが住んでいる別邸は本邸の裏側に建てられている。まるでマリエンヌを隠すかのように建てられた別邸は、来場客からは見えない。


「答えられないのか?」

「・・いえ、第一夫人に用がありましたがお休みになられたようでした」

「!」


 俺の言葉に怒りを感じたのか、伯爵様は拳を強く握りしめていた。


「そういう伯爵様は?今夜は・・新しい奥様がお待ちでは?」

「!貴様に言われる筋合いは無い!早くこの場から下がれ!」


 怒りを隠さずぶつけてくる。その怒りがマリエンヌに向かわないと良いが・・

 そう思いながら頭を深く下げその場を離れた。

 さりげなく後ろを見れば伯爵は新妻のいる方とは逆の、別邸へと歩いて行った。


(奴なりにマリエンヌの事を想っているのか?では何故隠す?)


 俺はパチン!と指を鳴らす。

 どこからとも無く一人の男が現れる。


「ご主人様、お呼びでしょうか?」

「今すぐ別邸へ向かってくれ。伯爵とマリエ・・第一夫人の会話を聞いて来い」


 男は俺の指示を受けるとまた、姿を消した。

 本来なら自分が向かいたかったが一応この場を任された責任者だ。


「影の報告を待つか・・」


 俺は別邸の方へ視線を向けると、直ぐにその場から離れた。




 

 (俺の勘が合っていれば、奴はマリエンヌの元へ行こうとしていた。いや、もしかしたら会っていたのかも知れない)


 今夜はジュディの元へ向かわないといけない事は分かっているが、奴がマリエンヌの元へ行った事を確認しないと気が済まなかった。

 玄関を開けるがもちろん鍵が掛かっている。


(気のせいだったか・・)


 胸を撫で下ろしながら本邸へ引き返そうと、しかし何気にマリエンヌの部屋へ顔を向けた。


「マリエンヌ!」


 バルコニーから本邸を眺めているマリエンヌに思わず声を上げる。

 マリエンヌは俺の声に気付き慌てて下を見た。


「旦那様!?」


 驚いた顔で俺を見てきたマリエンヌは、やはり可愛かった。

 玄関を開けたのはメイドだった。おそらくマリエンヌの声で俺の存在に気付いたのだろうが、俺はそんなメイドの横を通り二階の部屋へと駆けて行く。


 扉を開けるとマリエンヌは部屋で俺を出迎える。

 身なりは・・特に異変はない。


「旦那様どうされたのですか?今夜は奥様の元へ向かわないと」

「何をしていた」


 マリエンヌの言葉を遮るように言葉を出す。

 マリエンヌは言葉に詰まりながらも


「今夜は本邸の方から賑やかな声や音が聞こえてきたので、バルコニーから覗いておりました」


 嘘では無い・・確かにバルコニーから本邸を眺めていたから。


「誰かと会ったのか?」


 聞きたくない、でも聞きたい返事。


「・・誰と会うのですか?ここまで入れるのはこの屋敷の人間だけですわ」

「本当か?」

「ええ・・」


 彼女は言葉を濁しながら目線をずらす。

 彼女を信じたい・・が、俺は信じられるに値する男ではない。


「ケビン・フェルズ」


 この名を出した瞬間、マリエンヌの肩が揺れた。やはりあの男はここへ来たのだ。

 その瞬間何故か怒りが溢れてしまい、気付けばマリエンヌを隣の寝室へと引きずり込んだ。


「旦那様!今夜は本邸へお戻り下さい!奥様が、奥様がお待ちになられています!」


 マリエンヌはジュディとの初夜に向かわせようと必死に抵抗した。だが、その行動すら俺の怒りを増長させた。

 ケビン・フェルズを許さない!


「旦那様!お願いです!あちらへ・・」


 泣きながら抵抗する彼女を俺はケビン・フェルズのせいにして、その夜無理やり彼女を抱いた。


(まだだ、まだ彼女へ気持ちを伝える時期では無い)


 自分の気持ちを彼女に伝えられない苛立ちと、ケビン・フェルズへの嫉妬を抵抗出来ない彼女へぶつけた・・

 


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