表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/21

五 ケビン目線

「旦那様・・こちらは・・」


 マリエンヌが俺を紹介しようとした時、ロースタイン伯爵が言葉を止めた。そして早く屋敷へ戻れと言わんばかりに護衛へ命じた。


「妻を別邸へ。私はこの男に話がある」

「旦那様聞いてください!この者は私の!」

「話は邸で聞く。早く連れて行け」


 護衛はこちらを見ようとするマリエンヌの背中を押すように、二人を連れて行った。

 俺はそんな彼女の背中を見送ると、伯爵様の方へと顔を戻した。伯爵様は鬼の形相で俺を見ている。


「初めましてロースタイン伯爵様。私はケビン・フェルズ、ロータス商会の会長をしております」


 自己紹介をしながら頭を下げる。

 相手は貴族だ。それも由緒ある伯爵家の次期当主。

 俺は伯爵様から声がかかるまで下を向き続けると、


「妻とはどのような関係だ」


 伯爵様が声をかけてきた。

 言葉は短いが明らかに怒っている声色だ。

 俺は頭を上げて伯爵様を見る。


「幼馴染です。幼い頃は奥様の、ルッツ男爵様の領内に住んでおりましたので」

「今日はどんな要件で?妻を連れ出す必要があったのか?」


 怒りで肩が震えている。

 マリエンヌの話ではお金で買われたと言っていたが、どうやら訳がありそうだ。


「恐れながら奥様が屋敷の外で会いたいと言われましたので・・伯爵様がお疑いなされるような事はありません。メイドが常に側におりましたから」

「・・当たり前だ!妻は我が伯爵家の第一夫人だ。変な噂が立っては困る」


 伯爵なりにマリエンヌの事は想っているのだろう。が、肝心な彼女にその想いは伝わっていない。

 きっと訳があるのだろうが、今はそれを聞く時ではない・・


「申し訳ありませんでした」


 俺は頭を深く下げると伯爵様は納得したのか後ろへ振り向いた。


「二度と妻を外へ連れ出すな」

「畏まりました」


 外には連れ出してはいけないが、会う事は許された。今はそれだけで十分だ。

 伯爵様が踵を返そうとした時声を掛ける。


「そうそう、おめでとう御座います。明日、でしたよね?ウォルダー侯爵令嬢との結婚式」


 伯爵様は思い切り振り返ったが、その顔は驚いたようだった。

 相手は侯爵令嬢だ、マリエンヌには隠している様だが巷では盛り上がっている。

 何なら侯爵令嬢が第一夫人だと大賑わいだ。


「言ったでしょう?私はロータス商会の会長だと。お二人の結婚式の準備は我が商会が全て用意いたしました。きっとご満足して頂けると思います」

「!!」


 俺を睨む伯爵の顔は、普通の男ならばきっと気を失うだろう圧だ。

 だが俺は違う。

 一つの商会をここまで大きくした自負がある。


「妻を送り届けた事は感謝する」

「ありがたきお言葉」


 睨み合う視線は、伯爵様が屋敷へと戻った事で切れた。


「マリエンヌ、君を連れて行く事は簡単ではなさそうだよ・・」


 俺は胸元からタバコを出すと火を付けた。

 煙を空へ吐き出すともう一度伯爵邸に目を向ける。


「俺もマリエンヌを簡単には諦めないですからね。マリエンヌを妻に迎える為にルッツ商会を立ち上げたんですから・・」


 誰に聞かせるでもない言葉を吐き出すと、馬車へと乗り込む。

 徐々に離れて行く伯爵邸を見ながら今後の事を考える。伯爵は理由があって侯爵令嬢と結婚する前に、強引にマリエンヌと結婚した。

 おそらくマリエンヌを後から嫁に迎えても、立場的に侯爵令嬢には勝てない。立場的にも上にする必要があったから急いで結婚したのか・・

 しかもルッツ男爵家の支援と引き換えに・・


「伯爵様はなかなか姑息な手を使われる・・」

「仮にも相手は伯爵です。いくら旦那様が商会長といっても平民で、相手は貴族ですので・・」


 マリエンヌが馬車から降りた事で今は向かいに座る男は秘書兼護衛のブルートだ。

 ブルートも同じルッツ男爵領に暮らしていて、共に商会を立ち上げた仲間だった。


「・・わかっている」

「なら良いのですが、マリエンヌさんの事となると理性ぶっ飛ぶので貴方・・」

「・・そんな事よりも頼んでいた事は?」

「こちらにまとめてありますが、今読まれますか?」


 そう言いながら数枚の紙の束を鞄の中から出すと俺に差し出した。

 俺はそれを受け取ると一枚目から目を通していく。


「旦那様も相当ヤバイ奴ですが、相手も相当ですね・・大丈夫ですか?」


 俺は報告書を読みながらブルートを見た。ブルートはそんな俺の視線に気付いたのか肩で息を吐くとそれ以上は何も言わなかった。


 もともとマリエンヌとは身分の差があったから、結婚出来るとは思っていなかった。でも今は違う。それなりの地位も財も出来た。


 あとはマリエンヌ次第だな・・


 それにはまだ時間が足りない。

 報告書によれば侯爵令嬢が子を産むまではマリエンヌとの間に子は作らないと書いてある。


 まずはマリエンヌとの時間を作ることが先だ!


 商会に戻ると机に向かうとペンを持つ。俺は商人だから商品を持って伯爵邸を訪れよう。

 手紙にそう記すと明日の朝イチで投函するようにブルートに託した。



 

アベルはマリエンヌと結婚した際に、父親から爵位を引き継ぎました。

両親は領地に住んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ