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愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


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二十六  永遠の別れ

始め男爵

途中からアベルと交互になります。

「お待ちしておりました・・娘に、会われますか?」


 急いで馬を走らせて来たのだろう伯爵の姿は、今までとは打って変わりとてもボロボロだった。

 少し休んでから・・と思ったが、きっとそれを望んではいないと思い声をかけた。

 案の定伯爵は頷いた。少し嬉しそうに・・


「ではこちらに・・」


 だが、娘はこの屋敷にはもういない・・

 どこにも・・


「お義父上・・どちらに?」

「娘と、孫のところですよ」


 私は振り向きもせず答えた。

 そしてたどり着いた場所は・・


「こちらに二人で眠っております。夫である伯爵を待たず埋葬しました事、深くお詫びします。お腹の子の傷みが早く・・」


 案内された墓標には確かにマリエンヌの名が刻まれていた。


「なぜ・・」


 男爵は少し言いにくそうにしていたが、


「伯爵が帰られたあの日から、娘は一切何も口にしなくなったのです。私たちが言っても・・口にしたとしても直ぐに吐いてしまい。この暑さは更に娘の体力を奪っていき・・お産に耐える体力も気力も無かったのです・・」

「なぜ?なぜ何も言わなかった・・言えば王都に」

「娘は帰りたく無かったのです!!王都に、伯爵邸に・・」


 は?何を言っている?王都には俺がいるのに?

 帰りたく無かっただと?


「伯爵は娘の笑顔を見たのはいつですか?」


 えっ?


「思い出せますか?ここへ帰って来た当初、娘は笑顔がありませんでした。しかし、徐々に笑顔が増え、大きくなるお腹を愛おしげに見つめていた。貴方が突き飛ばしたあの日までは!!!」

「!!!」


 男爵の顔を恐る恐る見ると、レインの父親と同じ顔をしている事に気が付いた。

 レインを埋葬したあの日の、俺に父親がした事を伝えた時のあの顔に・・


「俺は・・愛していたんだ・・俺なりにマリエンヌを」

「それは、貴方様の独りよがりでは無くて?マリエンヌは、娘は貴方のその想いに気付いていましたか?あの子に伝わるように伝えたのですか!」

「・・・」

「私たちは二度と娘と孫に会えません・・」


 そう言い残すと男爵は俺を置いて屋敷へと戻って行った。

 俺はその場から離れる事が出来ず、ただ墓標を眺めていた。


「俺のやった事は、父親と同じだったのか・・」


 伝えていると、伝わっていると思っていた。

 俺の気持ちはちゃんと・・


(俺は、マリエンヌの笑顔を見たのはいつだ?微笑みじゃない、あの眩しい笑顔を俺は結婚してからも見てないのではないか?)


 俺はその場を離れると屋敷に顔を出さず、そのまま王都の屋敷へと戻った。どんな顔をして会えば良いのか・・いや、もう顔も合わせてもらえないであろう。それだけの事をしてしまったのだから・・


 好きで好きで一緒になりたくて、無理だったが結婚できたのに・・俺は一番愛する人から笑顔を奪ってしまったんだ・・




「あなた・・お泊めしなくて良かったのですか?」

「あれだけの事を言ったんだ、彼もこの屋敷には泊まれないだろう」


 本当はあそこまで言うつもり無かった・・だが、彼にはここでしっかりと娘への未練を断ち切って欲しかった。


「まさか、あの時の子が彼だったとは・・」


 私は手の中の短剣を見ながらつぶやいた。

 突然マリエンヌが連れて来た男の子。身なりからして商人の子か、貴族の子だろうと思った。

 風呂を担当していた者がこっそりと持ってきた短剣には馬商の印が押されていた。

 だから直ぐに身元も判明するだろうと・・

 しかし迎えに来たのは王都の警備隊で、保護をした私にも身元を明かさなかった。

 

「まさかあの一月であそこまでマリーに執着するとは思いもしませんでしたね」

「彼の場合は乳母も原因しているのだろう」

「乳母ですか?」

「知らなかったのかい?オットー男爵の娘のレイン嬢が、彼の乳母だったって」


 妻は聞いてませんわ!と青い顔をしながら叫んだ。

 私は妻をなだめながらも思った。

 幼かった彼が、突然信頼していた人と引き離されたと思ったら、自身の父親のせいで命を落とした。

 その家族からは恨まれ、命からがらで逃げて来た先でそんな自分を無邪気に受け入れてくれた娘に対し、依存してしまうのも無理はない・・と。


 今は少しでも早く立ち直ってくれたらと願うばかりだ・・





「旦那様?お早いお戻りで・・マリエンヌさま・・」


 俺の雰囲気を悟ったのか、ジュディはそれ以上何も聞かなかった。

 俺は私室へは行かずマリエンヌのために用意した部屋へ入ると、改めて己の愚かさに気付かされた。

 マリエンヌのためと言いながら、実は全てが俺の押し付けだったのだ。

 カーテンも、家具も、ベッドも・・何一つマリエンヌの意見を聞いて購入した物では無かった。


「旦那様おやめください!!怪我をしてしまわれます!旦那様!」


 使用人たちが止めようとするが、俺の気持ちがダメだった。

 こんな物無くなってしまえばいい、全て壊してしまえば・・


「ベルナール」

「はい、旦那様」

「明日、絵師を呼ぶんだ」

「絵師・・ですか?」


 マリエンヌの絵を飾らなくては・・


 

次が最終話となります。

最後までお付き合い願います!!

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