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愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


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十七  アベルとジュディ

 ジュディとの昼食を終えた俺は、執務室へ行く前に別邸へと足を運んだ。さすがに起きているだろう・・と思っての事だ。

 なのに・・


「申し訳ありません旦那様。マリエンヌ様はまだお目覚めになっておらず・・」


 声は何度もかけていて応答もあるが、まだ横になっていたいと・・

 主人がそう言えばいくら専属メイドと言えど寝室には入れない。


「俺が様子を見てくる」


 寝室の扉をノックしても、声をかけても返事は無い。また眠ってしまったのか?と思い静かに中へ入って行く。

 カーテンが開いていない部屋は昼間でも薄暗い。

 俺は静かにマリエンヌの側まで行くと静かにベッドへ腰掛け、優しく声をかけた。


「体調が悪いのか?お前のメイドも心配している、顔を見せてくれないか」


 布団を頭から掛けていて顔が見れない。無理に剥がす事も出来るがここの所無理をさせた自負はあるし、マリエンヌから顔を見せてくれる事を願って待つ。


「何か言ってくれ」

「・・リズを・・リズを呼んでください」


 俺はそのままでメイドを呼んだ。

 メイドは急いで寝室へ入って来るとマリエンヌの側へ行き、何かを言われたのか


「申し訳ありません旦那様。シーツを交換して欲しいとの事ですのでお隣へ・・」

「ならばマリエンヌも連れて行こう」


 そう言って布団を捲ると、少し吐いた形跡があった。やはり体調が悪かったのか?俺はベルナールを呼ぶと本邸からメイドと医師を呼ぶように指示を出した。

 明るい部屋へ連れて来ると確かにマリエンヌの顔色は悪く、そんなに無理をさせたのかと後悔した。



「えっ・・?」

「おめでとうございます伯爵様。第一夫人様もご懐妊でございます」


 伯爵家の医師が嬉しそうに告げた言葉は、俺には理解が出来なかった。

 彼女に何を言ったのかも記憶にない。

 ただ、彼女は泣きながらも俺の子だと、何度も何度も言ってきた。

 だがそんな彼女の言葉を信じる事が出来ず、俺は逃げるように本邸へと戻った。

 そのままマリエンヌの側にいては何を言うか分からなかったから・・


「なぜ彼女の言葉を信じられないの?」


 別邸の、マリエンヌの懐妊が耳に入ったのだろう。ジュディは俺の私室へと入って来た。


「入室を許可した覚えは無いが・・」

「貴方のプライドなんて関係ないわ、どうして信じられないの?貴族の夫人が簡単に・・」

「俺の子であるハズが無いんだ!」


 声を荒げた事がない俺に、ジュディも驚いていた。


「なぜ断言出来るの?」


 大きなお腹を両手で支えながら踏ん張っている。俺は仕方なくソファーに腰掛けるよう合図を出すとジュディは黙って腰を下ろした。


「俺は・・避妊薬を飲んでいるんだ・・子が出来るはず無いんだ」

「!・・でも、出来たのよね?」


 ジュディの言いたい事は分かる。

 別邸から出ることの無いマリエンヌが俺以外の男の子を懐妊するハズが無いから。

 でも奴が忍び込んでいたら?

 ジュディと結婚した日、奴は別邸へ来ていた。

 二人とも否定してはいたが俺にはわかった。

 だから俺はマリエンヌが離れないよう、奴に奪われないよう・・


「それ以上お酒を飲んではいけないわ。避妊薬を飲んでいても絶対では無いわ。私が良い見本だわ」

「・・・」

「とにかく休みなさい。こんな姿見せてはいけないわ」


 無理矢理ベッドへ寝かされるが、興奮してとても眠れない。それでも横になるといつの間にか眠っていた。

 俺は彼女を信じたかった。

 でも、信じられなかった。

 彼女が辛い時、俺は彼女を支えなければいけないのに攻めるばかりだった。


 本当の事を言ってくれ!と。

 なぜ嘘をつくんだ!と。


 悪阻と俺の責めでどんどん痩せていった。

 俺の代わりにジュディが様子を見に行ってくれたが、容態は悪化するばかりだった。

 そんな時、ジュディが出産した。

 産まれたのは俺には似ていない男の子。

 だが、子を抱くジュディはとても美しく、俺は思わず子供を抱き上げていた。


「名前は彼の名前を取ってカリスと・・。ありがとう、この子を産ませてくれて・・」

「カリストールに良く似ているな。おめでとうジュディ」


 カリスは親友カリストールの子だ。

 ジュディと恋仲になったが男爵家の次男だったため、ジュディの父親であるウォルダー侯爵に猛反対された。

 諦めきれなかった二人は駆け落ちしたが直ぐに見つかり、ジュディは連れ戻された。

 すでに傷物となったジュディの婚約は破棄され、貴族の中でも噂が広がったジュディを嫁にしたいと言う家は無かった。

 そんな時、同じ様に男爵家の令嬢と結婚したいと言い出した伯爵家に目を付けた侯爵は、頭を抱えていた伯爵にこう言い寄った。


「お互いの子を結婚させよう。何、男爵令嬢との結婚を許す代わりとでも言えば息子も頷くよ」と。


 伯爵家の仕事の後ろ盾になるからと、上手い事を言って・・この結婚は本人たちの意思を無視して成立したのだった。


 結婚前の顔合わせでジュディはお腹にカリストールの子がいるかも知れないと告げた。

 もしいたらどうしても産みたい!と。

 カリストールは鉱山に送られたと言って・・おそらくもう・・生きてはいないと・・。

 その代わりマリエンヌとは仲良くするし、第一夫人として立てると約束すると言った。

 両親には俺の子だと思わせる必要があるため、避妊薬を止めマリエンヌの元にも通わないようにした。


「自分の子でなくても可愛いな・・。マリエンヌの子ならもっと可愛いだろうな」

「旦那様・・彼女を信じてあげてください。手遅れになる前に・・」

「・・そうだな・・」

 

 素直にジュディの言葉を聞いていれば良かったと、マリエンヌに不安な気持ちを伝えていれば良かったと・・後悔する事になってしまった。

 

次は少し前に戻り、ケビンとジュディの会話になります。

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