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愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


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十三  手紙

 ケビンからの手紙には三日後に街で[星見祭]があるから一緒に行こう!だった。

 星見祭

 収穫前に豊作を祈るお祭りの事で、今から約二百年ほど前に雨が降らず作物も育たず困っていたところ、星の女神が巫女に憑依し雨を降らせたとの言い伝えがあり、その女神へのお礼と豊作を祈るのだ。


「ねぇリズ、三日後の旦那様の予定は聞いてる?」

「三日後の旦那様ですか?」


 リズはポケットからメモを取り出すと目を通す。


「三日後は旦那様と奥様はウォル侯爵家の夜会に出席予定となっております」


 ウォル侯爵家は王宮を挟んで反対側のお屋敷だ。二人が屋敷を出た後からでも参加できる。


「リズ、その日一緒に街へ行かない?」

「街ですか?」

「ええ、ケビンに星見祭に行こうと手紙をもらったの。バロンも誘えば護衛にもなるしどうかしら?」


 リズの顔がパッと明るくなり、バロンさんに伝えて来ます!と走って行った。私は机に向かうと便箋を取り出しケビンへと返事を書く。

 ケビンは旦那様の事を理解してくれており、今まででも何回か私とリズを街へ連れ出してくれているが帰宅が遅くなった事はない。


(当日はリズとバロンも連れて行くわ!楽しみにしています)


 と返事を書くと戻って来たリズに手紙を渡した。



 三日後、その日はウォル侯爵家に行くために準備をしていると思っていた旦那様が急に別邸へ来た。

 前触れもない訪問にリズは慌てていたがキャロルが先にメイドを寄越してくれたおかげで準備も整った。


「ごきげんよう旦那様。本日はウォル侯爵家の夜会に出席されると聞きましたが」


 旦那様とは三ヶ月ぶりに顔を合わせた。服はまだ着替えていない様だったから直ぐに本邸へ戻られるだろう。そうしたら私たちも準備を始めなければ・・

 そんな事を考えていると突然旦那様に腕を引っ張られ、ソファーの隣へと無理矢理座らされた。


「久しぶりに会いに来たのに夫人はあまり喜んではいない様だ」

「えっ・・。そんな事はありませんわ・・」


 私が言い終わる前に無理矢理口づけをしてきた旦那様。正直に言えば旦那様との口づけはあまり好きではない。それは仕方のない事で、好きでもない人との口づけは無意識に力が入ってしまう。


「マリエンヌはいまだに慣れないのか?いつまでも初めての様で俺は嬉しいが」

「それは・・」


 決して恥ずかしい訳でも無いが、旦那様が嬉しそうだからまぁ良いか・・


「早くマリエンヌを抱きたいよ。もう少し待ってて欲しい、もう少しの辛抱だから」


 旦那様はそれだけ言うと 準備があるから と本邸へと帰って行った。

 私は玄関で旦那様を見送るとその場に座り込んでしまった。


「マリエンヌ様?!だ、大丈夫ですか!」


 座り込んだ私に駆け寄ってきたリズに、私は思わずしがみついた。

 旦那様の言葉が後になって襲ってくる。


[もう少しの辛抱だから]


 どう言う意味なのだろう・・旦那様の考えあっての言葉だと思うけど、あの夜の事が忘れられなくて時々夢に見ては起きてしまう。

 旦那様の考えも気持ちも分からないのに、どうして身体を重ねる事ができるだろうか・・

 もしその時が来たら、私は旦那様を受け入れる事が出来るのだろうか・・

 

 私はリズに支えられながら私室へと戻って行った。

 夕方、旦那様とジュディ様が出掛けられたのを確認するとバロンが呼びに来た。どうやら裏門にケビンが用意した馬車が到着した様だ。

 私はリズが用意した動きやすい簡素な服で準備をしていたので、バロンの合図と共に直ぐ裏門へ移動した。すると馬車の外にケビンが立っていて。


「ああ二人とも良く似合っているな!さあ乗って、バロンは御者を頼む」


 ケビンは私とリズを乗せるとバロンへ合図をした。馬車はゆっくり動き出すと、みるみる屋敷は小さくなって行く。


「上手く出られて良かった」

「ええ、今夜は旦那様もジュディ様も夜会に出席されたから、少しくらい遅くなっても大丈夫よ」


 そう言い終わるとケビンは嬉しそうにわらった。

 会場に着くと私とケビン。リズとバロンの二手に別れる事になった。四人で行動すると誰かに見られる可能性がある為だとケビンに言われたからだ。

 すでにバロンとも話を合わせていたようで、気付くと姿が見えなくなっていた。


「バロンなら大丈夫だよ。ああ見えても手技が得意だからリズ一人くらい簡単に護れるよ」

「貴方が何も考えずバロンを寄越したとは思っていないわ。バロンはとても気の利く騎士様よね。私もリズもいつもバロンに救われているわ」

「そう言ってもらえると彼を忍び込ませて正解だった。本当は俺自身が行きたかったけど・・」


 ケビンは昔から心配性で、いつも私の後を守るように着いて来ていた。

 あの頃が懐かしく思い出す。男爵令嬢と言っても名ばかりの貴族。私は家族の為にいつかは羽振りの良い低位貴族か商人の元へ嫁いで行くと思っていた。

 のに・・蓋を開けたら格式高い伯爵家の第一夫人なんて、そりゃ元メイド長も納得出来ないわよね。


「マリー、ため息なんてついてどうした?」

「えっ、ごめんなさい!あまりの人の多さに驚いてしまって・・」

「そうだな、今年は王太子殿下の結婚とご懐妊の発表があったから、街の皆んなも大喜びで準備したといっていたからな」


 そうなのだ!私の結婚より少し前に王太子殿下、妃殿下の御成婚とその数ヶ月後には妃殿下のご懐妊発表とお祝いが重なった。

 このまま行けば今年は豊作になる。


「妃殿下もご無事に出産なさると良いわね」

「王宮には腕の良い医師が何人もいるから心配無いだろう。我が商会にも御子様用品の依頼があったよ」

「まぁ!ケビンは何でも扱っているのね!」


 人を掻き分けながら屋台を回る。

 久しぶりの外出と人の賑わい、何よりケビンと二人きりの外出に自身の立場を忘れてしまう。

 旦那様は私に不自由ない生活を送らせてくれている。が、それはお金で全て解決出来るものだ。

 今こうしてケビンと二人きりの時間は、お金ではとても買えないものだ。


「疲れただろう?向こうで少し休もう」


 そこは高台にある場所で、おそらくケビンがベンチを用意してくれたのだろう。

 手を延ばせば星に手が届きそうなほど近くに見えた。

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