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愛されない妻は夫の気持ちを理解できない  作者: おつかれナス


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10/27

「奥様、お目覚めでいらっしゃいますか?」


 目を覚ましたからどの位時間が経ったのか・・窓から差し込んでいた日差しも、いつの間にか真上に登っていた。


「入ってちょうだい・・」


 本当は誰にも会いたく無かったがリズの声からして心配しているのがわかった。

 案の定、私の顔を見るなら泣きそうな顔になった。が、それよりも気になったのが


「リズ、貴女も泣いたの?」


 リズの目も真っ赤に腫れていたのだ。

 おそらく昨夜の私と旦那様の件でリズも何か言われたのか?


「リズ・・旦那様に何か言われた?」


 リズは頭を横に振りながらまたポロポロ泣き出した。私はリズの側まで行くと手を引いてソファーへ座らせた。


「あんな旦那様は初めてでした。何にそんなにお怒りになられたのか分かりませんが・・マリエンヌ様に対してあんな怒鳴られるなんて・・」


 一瞬ケビンの事が頭によぎったが、ケビンはバルコニーから直接出入りしたからリズにも知られていないはず。

 だとしたら昨夜の旦那様との声が聞こえた?

 私はリズの背中を摩りながら優しく聞いた。


「旦那様と私の声を聞いたの?」


 リズは恐る恐る頷く。普段は抵抗することも無く旦那様を受け入れている。でも、昨夜だけは抵抗した。初夜を迎える奥様に対しとても失礼な事だから・・と。

 でもその声をリズに聞かれていたなんて・・


「驚いたでしょう・・ごめんなさい。でも大丈夫よ、旦那様も私の気持ちをわかってくださったから」

「本当ですか?」

「ええ、本当よ」


 旦那様は言った。奥様との間に子が出来るまでは、私とは身体を重ねないと。

 きっと何か理由があるのだろう・・でもその理由は聞かされない。


「だから泣き止んでちょうだい」


 泣き止むまで優しく話しかけた。



「マリエンヌ様、よろしいでしょうか?」

「リズ?入ってちょうだい」


 夕食も済み、私室で寝る準備をしている所に下がらせたリズが来た。

 リズは少し戸惑ったように


「今、本邸からの言付けで・・あちらの奥様より明日のランチをご一緒したいと・・」

「えっ?奥様から?」


 本来なら第一夫人である私に奥様から挨拶に来るのが礼儀だが、第一夫人といっても家格が下である私の方から伺うのが筋だ。


「誰が伝えて来たの?」

「奥様付きの侍女の方です。お見かけした事はありませんので、おそらく実家からお連れした方かと思います」

「そう・・了承したと伝えてくれる?」

「はい!失礼します」


 リズは頭を下げると急いで下へと降りて行った。

 どんな方なのだろう・・侯爵家のご令嬢だとメイド長は言っていたから、しっかりと教育された方なのだろう。私は急いで明日のランチへと着て行く服を探すため、クローゼットへと足を向けた。


 翌朝は緊張から朝食は喉を通らないだろうと思い、リズにはお茶だけ用意するように伝えた。

 リズも緊張しているのか、いつもは失敗しないメイクも手元がズレてしまいやり直す事に。


「マリエンヌ様、申し訳ありません」

「ふふ、時間までには間に合ったから大丈夫よ。それに、リズの失敗のおかげで緊張もほぐれたわ」


 今は迎えが来るのを待つために応接室にいる。少しだけリズを揶揄っているとコンコンッ!と扉を叩く音がする。

 慌ててリズが扉を開けるとそこに立っていたのはケビンだった。

 私が驚いた顔をしていたのが面白かったのか、ケビンは笑いながらお辞儀をした。


「お久しぶりでございます、第一夫人マリエンヌ様。本日は第二夫人シンディ様よりマリエンヌ様をエスコートしてくるよう申しつかりました。ケビン・フェルズと申します」


 丁寧な挨拶だった。リズはそんなケビンに好感を持ったようだ。

 私はケビンのエスコートで中庭まで足を進めた。中庭は本来なら第一夫人専用の庭だが、奥様は嫁いでまだ間がない。

 手入れをしていない庭は荒れているはずなのに・・


「ここは・・誰か手入れをしてくれていたのね。こんなにも綺麗な花が咲いているなんて・・」


 すごく嬉しかった。私が育てた花たちも全て花を咲かせていて素晴らしかった。


「夫人は昔から花を咲かせるのがとても上手でしたね」

「まぁ!貴方が言う花は畑に植っている花の事でしょう!」

「他にどんな花が?」

「・・屋敷の庭にも植えていたわよ?」


 ケビンはクスクス笑うと


「あれは雑草では?」


 と、昔の笑顔そのままで言った。ケビンの笑顔に昔を思い出す。

 両親と共に領民と一緒に畑を耕したり、木の伐採をしている所を遠くから見たり・・


「あの頃に戻りたいわ・・」


 ケビンに聞こえないよう小さな声で気持ちを洩らした。ケビンは私の声が聞こえたのか、聞こえなかったのかは分からないけれど、ゆっくりと中庭を進んでくれた。

 別邸には庭どころか花壇も無いから、久しぶりに見る花に私は心を躍らせていた。

 そうして花を眺めながら進むと東家にはすでに奥様が座っており、私はケビンにエスコートされたままテーブル近くまで歩いて行った。




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