第三幕:悪魔の王の視線
やあ、君。時として聖なる者の側に、悪が近寄ることがある。これは不思議なことではない。
光あるところに必ず闇はできるのだからーー。
第二幕では、神さまについて何も考えてない教師からの教えを、完全に否定した。そのせいで、皆の前で鞭で打たれそうになったジョンを見た。
ジョンは隠れ家で、席につき、聖書を開いて眺めていた。
「ボクの詩の何が悪かったんだ?
読み方が間違ってたのかなーー」
彼はジッと聖書を読み耽ってたが、教師のギラついた目を思い出してた。
怖かったが、自分の正しさを理解した彼は、鼻を少しだけ鳴らした。
「安易な言葉で、安易に神の想いの深さを伝えようとするのが傲慢だ。
ボクは悪くないーー」
その時、彼の口から暗い言葉がもれた。
神の詩人が何者ぞ
奴の言葉は人を知らず
命の重みも知らんのだ
重き言葉を軽くして
神の愛を軽んじて
奴は息子を名乗るのだ
かつて神に我らは受けた
彼を神と、同じように
崇め、扱え、敬えと
産めや増えよというように
土からいでた者のよう
詩人たるかの者に
下のモノだと定められ
両膝をつき仕えるなどと?
小間使いのごとき矮小さ
神によって言葉がくだる
ひざまづくのを
定めとされた
我らが仕えし者は誰?
よく聴けよ
誰が持ち上げたのか、
かの者を?
高みの者に
もちあげた?
恩を仇で返された
まさに天が地へ
下のものへとおとされた
我が声を聴け
聴いて書けよ
問いを天にかけるがいい
汝らは土だと
我らは光
我らは光!
「ああ、神よ、我らは土だ!」
その時、ミルトンは聖書を抱えてうつ伏せになっていた。
身体はブルブルと痙攣してた。
窓ガラスは開いていた。
目の前には木の椅子が横倒しになり、ゆっくりと動いていた。
ギー、ギー、ギーッと木床が鳴っていた。
ジョンは、はっと我に返る。
「ーーいったい、何を考えていたんだ?」
抱えていた聖書のページが風でめくれる。
窓の外を見ると、
黒い鳥が一羽、ジョンを見つめていた。その目は血のように赤く見えた。
赤い目がーー飛び去っていく。
「夢か。変な夢だーー」
彼は聖書を閉じた。
だが、彼の影には、まだ――
翼の痕跡が残っていた。
(こうして、第三幕は黒い鳥と共に幕を閉じる。)




