第一幕:乙女のような詩人の叫び
やあ、君。
今回の物語は、ファウストが天に召された後の話だ。
彼の壊れた魂は、
次の誰かに受け継がれた。
もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。
ボクが誰かって?
語り部ファウストさ。
ヨハン・ゲオルク・ファウスト。
君と共に物語を見つめる者であり、
ーー君の友だ。
今度のファウストの魂を引き継ぐ者がわかった。1608年12月9日のイギリスのイングランドで彼は生まれた。
名はジョン・F・ミルトン。
父は作曲家のジョン・ミルトン。
母はサラ・ジェフリー。
この二人から生まれたのが、彼だ。
Fとはファウストだ。
この秘密の名はボクらだけが、
知っているーー。
ボクたちは彼をジョンと呼ぼう。
ジョンは、あの堕天使ルシフェルの「失楽園」を書いた作家だ。
そして、悪魔に目をつけられた神の忠実なる詩人でもあった。
1625年頃だった。
彼はイギリスのケンブリッジ大学クライストカレッジに入学した。
ここの学校は全寮制で、男子校だ。
ジョンは生徒や教師に好かれていなかったーー。その理由は彼の性格のせいだった。
ある日の授業風景だ。
そこは講堂だった。
教師は、聖職者のようだった。
片手に訳された聖書の本を抱えていた。彼が本を開き、ヘブライ語以外の言葉で読み出した途端ーー突如として興奮しだしたジョンは、同級生と教師に向かって詩を歌い出した。
ああ、怠惰に流れた背信者
神は言葉に宿るもの
神は文字に宿るもの
日常茶飯事で交わされる
ふざけた言葉に
彼はいない
彼の息子は地上にて
彼の愛を歌えども
怠けたお前の頭では
愛がちっとも分からない
言葉を即座に腐らせて
文字を即座に腐らせて
お前は愛を殺すのだ
この詩はーーあまりにも苛烈で皆を非難したものだから、教師は狂ったように怒鳴った。
「ジョン!キサマ、何か文句でもあるのか!」
教師はジョンの詩をあまりできてなかった。ジョンは甲高いヒステリックな声で歌ったからだ。
それぐらい、彼は昂っていた。
The Lady of Christ’s College(クライスツ・カレッジの貴婦人)
彼は女のような奴と、学友たちから揶揄われていた。
赤みがかった暗褐色の髪、ふっくらとした頬にはうっすらと桜色がかってた。肌は白くほのかに光り、感情の昂りで朱に染まった。中背で肩幅も狭く、華奢な身体つきをしてた。
男だらけの巣の中で、彼はーー彼だけがヒステリックに叫ぶんだ。
いまーーその彼が、
詩をつかって教師に戦いを挑んだ。
「ヘブライ語だ!
ヘブライ語を学べ!
そこに神はいるーー」
まるで堕天する前のルシフェルのようだったーー。
(こうして、第一幕は堕天使で幕を閉じる。)




