仮面選びと打ち合わせ(前編)
「わあ〜、仮面がいっぱいですね。夢歌様」
「そうだね。」
今日は打ち合わせに行く前の仮面選び。今回は護衛依頼だから身バレ防止のために顔を隠す。これが生存者を残さない殺し依頼だったらつけなくても良いんだけどね。
「ウチはいつも通りくまさんにしようかな〜」
くまさんの仮面を取ろうとすると、いきなり腕を掴まれた。
「おい待て」
と翔が言ってきた。
「なんで?翔も実はくまさんが良かったの?」
と聞くと
「今回の依頼は誰から狙われているお嬢様だぁ?」
「DOGAからですよね?そんなことも忘れたんですかぁ、翔ちゃんはぁ?」
と先にツキサが答えた。ウチはうんうんと頷いた。
「お前、前に人身売買会場へ行ったときの仮面、何にしてたか覚えているか?」
人身売買会場に行ったのは確か3年前だから…
「そりゃあ、覚えていますよ!!可愛いくまの仮面をしていましたよね♡本当にあの日は運命でした。月夜に照らされて私や周りの子たちをDOGAの連中から救ってくれた夢歌様はまるで女神でした〜♡…あの冬の日、名のない私に名前をつけっ」
翔がツキサの口を抑え、
「こいつの言うようにお前はあの時もくまをつけている。今回護衛している奴と前回会場をめちゃくちゃにした奴がDOGAの連中に同一人物だとバレるかもしれねぇ。だから、今回は別の仮面をつけろ」
なるほど。さすがに身バレ防止の仮面でバレるのは危ないな。
翔は頭が良いからそういうことも考えられるんだな〜。
「ん〜、じゃあ夢歌様。今回はうさぎとかどうですか?」
とツキサが聞いてきた。
「う〜ん。うさぎか〜」
ふと、護衛対象の桃華を思い出す。あの子、小動物で例えるならうさぎかもな。
「なら、こっちはどうだ?」
笑顔で翔が鬼の仮面をすすめる。
「これは翔がつけたら?ウチよりもたぶん似合ってるよ」
逆にすすめると、一瞬翔は固まり、隣にいたツキサが
「ぷっ!確かにいつもこんな顔ですもんね」
と笑って
「はあ?!俺はこんな顔してない!!」
「いや、こんな顔してますよぉ〜」
そんなに変だったのかな?
「翔に似合うと思ったから、逆にすすめたのに…。そんなにツキサが笑うなんて思わなかった」
ちょっと落ち込んでたら、ツキサが手を握ってきた。
「そんな事ありません!翔のクソ野郎に大変お似合いですから、そんな悲しそうな顔しないでください。」
翔は「クソ野郎は余計だ、クソ野郎は」と呆れながら鬼の仮面を取った。
__コンコンコン
ドアの方を振り返るとパパがいた。
「パパ〜」
と抱きつくとパパは「仮面選び終わったか?」と聞いて来たので、首を横に振り「まだ〜」と返す。
「「こんにちは、義貴さん」」
2人の挨拶にパパは
「おう、翔くん、ツキサちゃん。2人とも元気かい?」
と言った。
「「はい!」」と2人は元気よく返事した。
「2人は仮面選び終わったのか?」
「はい。俺は夢歌がすすめた、これにしようかと」
とさっきウチが逆にすすめた鬼の仮面。
「私は、猫の仮面です。」
「いいな。じゃあ、夢歌のはパパが決めようか。…夢歌はこれはどうだ?」
パパが差し出したのは、仮面舞踏会でつけるような紫色の仮面。
「確か、ベネチアンマスク?っていうやつだった気がするな。どうだ?お嬢様を護衛するのにぴったりじゃないか?」
「うん!これにする〜」
パパは「よかったな」と笑った。
パパが選んでくれたやつ。
ウチはルンルンで仮面をつけ、打ち合わせ会場に向かった。