少しお話をしましょう
外から周りを見張っていると、連絡が来た。
すぐさま、スマホを確認する。
夢歌様だ。
『周囲警戒をちゃんとしてね!翔は朝やったから、帰りはツキサに任せた!!』という内容だった。
『わかりました!!任せてくださいね!!』と返信するが、既読がつかない。
もう授業の時間になったのだろう。それでも、既読がつかないことにシュンとする。
木の上に登り、双眼鏡で窓を確認すると、やはり授業の時間になったようだ。
「はあ」
ため息が漏れる。
「私も通えたら良かったのになぁ」
DOGAの商品だった私は、より高く売れるようにあらゆる教養を叩き込まれた。
あそこでの暮らしは、辛かった。
最低限の食事。労働は少しでも動きを止めると、殴られた。勉強や作法も間違えたりすると、食事を抜かれたり、何時間も正座させられ上に分厚い辞書を何冊も乗せられた。
思い出すだけでも、震える。
落ち着こう。
深呼吸をして、自分の手首を見る。
あの時とは違い、枝のような手首じゃない。健康的になった。
食事だって、冷たい物じゃなくて温かい物や甘いデザート、色々美味しいものを食べれている。
頬を軽く叩く。
もうきっと大丈夫。
そう思いながら、引き続き周囲を見張った。
*****
「おかえりなさ〜い。今日の帰りは私が護衛します!」
「帰りもクロメさんじゃないんですか?」
ウサギの仮面、ツキサさんに聞くと、「クロメ様からの指示です。」と言われた。
結局、今日はクロメさんではなかった。
「明日はクロメさんですか?」と聞くと、「クロメ様は忙しい方なので…。ですが、もしかしたらありえますね。」とショウハさんと違いちゃんと受け答えしてくれる。
行きと違い、会話はできそうだ。
「ツキサさん。」
「はい?」
「少しお話をしましょう。」
彼女は少し驚き、「良いですよ」と笑ってくれた。
「クロメさんはどんな方なんですか?」
気になっていたことを聞いてみる。
すると彼女はにやりと笑い、目の色が変わった。
「話すと長くなりますよぉ〜」
といろいろ話してくれた。
ツキサさんより年下。お菓子が好きで、特にチョコとグミが好き。子供のような方だけど、仕事はしっかりする。真面目な方で、神経質。5番隊の幹部になった天才最年少らしい。
そして誰よりも優しく、命を大切にする方。
「だから、桃華お嬢様のあの行動に怒ったのだと思いますよ。クロメ様は自分がやられてないのに泣いちゃうお方なんですよ。悲しかったんですよ、きっと。」
ツキサさんはちょっと泣きそうな声で言った。
「クロメ様は優しすぎるんです…。」
彼女は深呼吸をして、
「私、DOGAの商品だったんです。」
「え?」
衝撃的なことを言われた。
何も言えなくなった。
驚いている私に構うことなく、彼女は話を続ける。
「商品だった私をクロメ様は救ってくれました。今から2年前のクリスマスの日に突然爆破が起きたんです。逃げる好機でした。他の子達と一緒に、走りました。」
思い出しているのか、彼女は少し震えていた。
「ですが、奴らも逃がすまいと追ってきて、最低限しか食べさせられなかったから、小さい子たちはすぐ捕まってしまいました。捕まらない人たちは銃で足や腕を撃ってきました。私も、腕を撃たれて捕まるというときクロメ様が現れて助けてくれました。私や他の人達も全員。」
思い出したのか、彼女は泣いていた。
「そんなクロメ様に私は一目惚れしました。」
涙を拭いながら、明るい声で言った。
「私に名前をくれて、居場所もくれました!私はクロメ様のためなら何でもできる気がするんです!!」
そんな彼女はイキイキとクロメさんの話をしてくれた。名前の由来は寒いけど、その日は月が綺麗だったからツキサになったこと。
色々話していたら、もう家に着いてしまった。
「じゃあ、今日はさようなら。」
と彼女が言ってきた。
「はい、また明日。」
と手を振る。
そこで「あっ、そういえば!」とあることを思い出した。
「ツキサさん!ショウハさんの仮面が怖いので別のに変えてくれるよう言ってもらえますかー?」
「わかりました!!変えさせます!」
と言ってくれた。
朝はちょっと嫌だったけど、帰りは少し楽しかった。
今日はそう思える日だった。
この作品を書いてから約一年が経ちました。
これからの夢歌や桃華の関係性や成長などを優しく見ていただけると嬉しいです。
そしてこれから出てくる敵にも…。
至らない点も多いですが、一生懸命頑張ります。




