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吸血鬼
赤い雨が降った
空を赤く染め 草木に地は腐り
人や動物は歪み狂う
一様に異様な渇きに耐えかね
赤い水を飲んだ
更なる渇きが襲う
耐えかね自らを殺すが
死ねない苦しみに襲われる
彼らは愛する家族や友人を襲った
動物たちも仲間や伴侶、子どもを襲った
溢れ出す赤い水を貪るように飲み干した
渇きが治まり 妙な至福に満たされる
でもそれは一時の鎮静だ
更なる渇きが襲う
『もっと、もっと赤い水を』
その渇きに支配される中で
渇きに耐性をつけ
肥大化した自我を保ったまま
歪んだ者が生まれた
彼らは合理的に人間を捕獲して
大量に赤い水を手に入れた
彼らは悪鬼と呼ばれていたが
いつからか吸血鬼と呼ばれ
恐怖と駆逐する対象となった
吸血鬼が誕生して
二千年以上――
もはや彼らは
赤い世界の支配者である