表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/42

生死の境

わたしは向こうに逝きたいのです


光と熱の灼熱が(たぎ)る世界で

燃やされ焦がされ

争いと人が生んだ

故郷に落とされた

負の地獄だったとしても


あそこに

わたしの家族がいるのです

父と母と兄と姉二人、弟と一番幼い妹がいるのです

学校の先生や友だち教室のみんな

近所のおじさんおばさん

どこかですれ違ったかもしれない人たち


みんなあそこにいるのです

みんなあそこにあるのです


あそこは

わたしの生まれ育った

唯一の故郷なのです

思い出がたくさん

つまっているのです


わたしだけ本当に

遠い場所にいたのです

遠い親戚に用事があって

たまたま離れていたから


だから

わたしはたった一人

生き残ったのです


「いやだ、みんな置いていかないで!」


だというのに

この薄っぺらな壁が

何もかも遮断して

見ているだけ


家族や大切な人たちが

苦しむ姿だけを

繰り返し見ているのです

見ていることしかできないのです


わたしも地獄に落ちて

一緒に苦しみますから

どうか壁の向こうに逝かせてください


この薄っぺらな壁さえなければ!


何度殴りつけても蹴りつけても

何度身体ごとぶつかっても

決して(ひび)が入ることはおろか

壁が消えることはありませんでした


それが──生死の境


そして苦しむ中でも

全員がわたしを見ながら告げるのです

声がなくても分かります


『あなたは生きなさい』と


……

……

……


これほどの無情がありましょうか

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ