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恋だった
初めから終わる恋 お互いにわかっていた
決して実ることのない 不毛な恋
あなたを見た瞬間 心が射貫かれ 世界が止まった
“あなたしかいない”
そう思ったあの一瞬が 私の最高潮
密やかな逢瀬は 自然と流れていき
お互いに離れていく
私も貴方も何も告げることはなく
胸は締めつけど 心が傷つくことはなく
そうあるべきがことが 本来の在り姿
夜会で偶然すれ違っても
もはや視線が絡むことはなく
熱意も心音も
静かに冷めていった
そして──現在
私は本来の婚約者と結ばれ 二児の母
あなたも婚約者と結婚し 妻との関係も良好だと
そう初めから
私たちの間には何もなかった
だからこれでよかったのだ
振り返って思う
あれは正しく恋だった
一時の恋だった
もしあなたに「愛していたのか?」と問われたら
私は迷わず否定する
私が抱いたのは愛ではない 恋だった
あなたが抱いていた感情はわからないけれど
愛ならば二人で育むもの
家族で築き上げるもの
けれど恋は ただ燃えて消えていくもの
そうして 最後に残ったのは
痛みも切なさもない 淡い記憶だけ




