真似
とびきりおもしろいものがたりがかけたので、ともだちにみせた!
ともだちは、「おもしろい」っていってくれた!
のぞきこんだせんせいも、「もっとよみたい」っていってくれた!
ウキウキしながらつづきをかいていたら、ひとりのクラスメイトがいった。
「これ、まねじゃん!」
ヒーローのかけごえがテレビのやつとそっくりだって。
ひっさつわざがおんなじだって。
みんなでわらってカレーをたべるのが、ゆうめいなえほんといっしょだって。
ぼくは、まねっていわれないようなものがたりをかくことをちかった!
がんばって物語を書いて、友達に読ませた。
友達は、「おもしろい」と言ってくれた。
部活の顧問も、「もっと読みたい」と言ってくれた。
ホッとして続編を書いていたら、部誌を読んだ同級生が言った。
「これ、マネじゃん。オリジナルのアイデアで書けないわけ?」
異世界転生ものは全部二番煎じなのだそうだ。
どこかで見たことがある魔法のスペル、エルフや獣人…設定の模倣はみっともないのだそうだ。
そもそも魔法という考え方そのものがパクリでしかないのだそうだ。
僕は、誰にもマネできないような物語を書くことを誓った。
コツコツと文字を認め続け、小説投稿サイトで発表していた。
読者の皆さんは「おもしろい」という感想を寄せて下さった。
文筆業に携わるプロの方々からも「もっと読ませて欲しい」というお言葉をいただいた。
胸をアツくしながら物語を綴っていたら、旧知の人物がメッセージをよこしてきた。
「これはただの真似。唯一無二の物語を生み出せないことを恥じるべきである…」
推理小説というジャンルに属している時点で、オリジナリティはないのだと。
起承転結という観念は、誰かの設定を使っているに過ぎないのだと。
そもそも、誰かが生み出した文字を使って表現するという事こそ、タダでツールを使用して儲けようとする愚かな事なのだと。
僕は、分かり合えない人とは縁を切って、自分の物語を書き続けている。