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絶望を乗り越える親の愛


モルドレッドは、数ヶ月をまともに動いていないため、歩くことがままならない状態で、車椅子で生活していた。


リックとリンは、毎日、モルドレッドを車椅子に乗せては、自宅近くの花畑に散歩に来ていた。


花を見れば、モルドレッドの気持ちも何か変わるかもしれないと、淡い期待をしていた。


でも、何回来ても、モルドレッドは何も変わらなかった。


そして、今日もいつもと変わらないはずだった。


リックとリンは、いつものように車椅子にモルドレッドをのせて散歩に出かけ、花畑にきた。


今日もモルドレッドは変わらない。


しばらく花を見て帰ろうと、思っていた時、花畑の遥か先に見える深淵の森の方から、凄まじい衝撃と咆哮が聞こえた。


そして、森の中から、巨大な黒い何かが出て来て、赤い目でモルドレッド達を睨み付けていたのだ。


その黒い何かかは、大きな狼のような姿をし、体の回りには黒いモヤモヤが漂っていた。


リックとリンは、昔、Cランク冒険者をしていた経験があり、一目で黒い狼は危険度Aランクのブラックフェンリルだと分かった。


Aランクの魔物は、Cランク冒険者であれば、10人パーティーで何とか倒せる強さであり、引退した元Cランク冒険者では、とても相手にはならない。


ブラックフェンリルをよく見ると、身体中に傷があり、手負いだとわかった。


討伐パーティーが討ち漏らしたのだと分かった。


手負いの魔獣は、体を回復させるために弱い獲物を殺して食べる。


ブラックフェンリルの目線から狙いは、モルドレッドだと分かった。


リック「リン!モルを連れて逃げろ!俺が囮になる!行けぇ!」


リックは、そう叫ぶとブラックフェンリルに向かって走り出す。


リックの声を聞いたリンは、車椅子を動かそうとしたが、車輪に草が絡まり、動かなかった。


リン「こんな時に!」


リンは叫ぶと、モルドレッドを抱き上げ、家の方向に走り出した。


そして、家のドアを開けようとした時、すぐ隣の壁の所に何かがぶっ飛んできた。


壁にぶつかった何かはリックだった。


リックは、左腕が肩から無く、体の所々に傷を負っていたが、かろうじて意識はあった。


リック「早、く、はいれ」


リックの目の前には、ブラックフェンリルが大きな口を開け、向かってきていた。


リックは立ち上がり、リンとモルドレッドの前に立ち塞がる。


リンはモルドレッドを守るように抱き締めた。


抱き締められたモルドレッドは、その両親に目線を向ける。


怖くて震えながら、でも、力強く自分を守る母のリンの姿。


片腕が無く、全身が傷だらけで出血がひどく今にも死にそうな父のリックの姿。


モルドレッドが見ていた灰色の景色に色が入った。

そして気付く。


自分は、こんなに愛されているのだと。


そして、自分も両親が大好きなことを。


両親は、自分がスキルが一個で、クソみたいなスキルでも、自分の事を見捨てず、支えようとしていた。


自分は、勝手に絶望し、ただ腐っていただけ。


なのに、両親は自分に優しく、寄り添ってくれた。


モルドレッドの壊れてしまった心の中からあらゆる感情が溢れる。

何を行って良いか分からない。


でも、今にも向かってくるブラックフェンリルに殺されそうな両親に向かって泣きながら叫んだ。


モル「父!母!死なないでぇ!」


数ヶ月ぶりにモルドレッドとリンは、驚きながらも満面の笑顔になった。


リック「モル、大丈夫だ。父ちゃんが守るから。」

リン「モル、大丈夫。母ちゃんが死んでもあなたを守るから。」

リック&リン「「モル、あなたのことを世界一愛してるぞ(よ)」」


それを聞いたモルドレッドは、心の底から叫ぶ。


モル「誰か、父と母を助けてぇー!」


ブラックフェンリルは止まらない。


モルドレッドは思う。

自分に力があればと。


悔やんでも、ブラックフェンリルは止まらない。


ブラックフェンリルの牙と爪が両親を捉えるその刹那、ブラックフェンリルが消え、土煙が巻き上げ、衝撃が駆け抜け、轟音が響き渡った。


ドガァーン


土煙が風で晴れると、ブラックブラックフェンリルの頭に大きな剣を突き刺し、地面まで貫く黒髪の青年の姿があった。


青年が何か話しかけてきたが、モルドレッドは目の前に倒れる両親の姿を見て、何も耳に入らない。


ただ、両親を助けてほしい一心で、青年に泣きながらお願いする。


モル「父と母を助けて下さい。お願いだから。死んじゃうよぉ!」


青年「分かった。ミリア早く来い!重傷者だ!早く回復魔法をかけてくれ!」


後ろから走ってくる茶色の女性の姿が見えた。


ミリア「どいて!早くしないと手遅れになる!」


ミリアと呼ばれた女性は、両手を両親に向けた。

すると、両親が負った傷が塞がり始めた。


ミリア「これで応急処置はできたけど、流れた血は戻らない。男性の方が重傷よ。早く寝かせて安静にしなきゃ!クロス運んで!」


黒髪の青年は、リックを担ぐと家の中のベッドに運んでくれた。


クロス「この後はどうする?」


ミリア「お湯に薬草を入れて冷ましたやつを飲ませて!何も飲ませないのよりは良いから!」


クロス「分かった。」


クロスはリックの面倒を見てくれ、ミリアはリンを補助してベッドまで連れていってくれた。


モルドレッドは、両親の看病を見ている事しかできなかった。


時間は経ち、日がくれた。


クロスが暖炉に薪を置いて火をつけた。

そこにミリアが部屋に入ってきた。


ミリア「あなたの両親は、もう大丈夫。命は救えたわ。お父さんの左腕は治らないけどね・・・。」

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