スキル授与
朝、早くワッカナ村の教会には、親子の姿が何組もあり、その中にモルドレッドやアサの姿があった。
教会の門が開くと、神父が現れた。
神父「さあ、今日は神様からスキルを授かる日。子供達よ、中に入り、祈りを捧げなさい。親達は外で待つように。」
神父が言うと、子供達は教会内へと入って行き、付き添いの親達は心配そうな様子で、子供達の様子をうかがっていた。
教会に入ると、正面の壁の高い所に丸と十字が重なったようなロザリオが飾られており、外から光が注ぎ、神聖な雰囲気が出ていた。
教会のロザリオの手前には、木製のベンチが数個置かれ、神父の案内で子供達は、横に並んで座っていった。
モルドレッドとアサは隣同士となったので、お互いに笑顔で顔を合わせると、黙って正面のの神父を見た。
神父「さあ、子供達よ、ロザリオに向かって、神々に祈りを捧げなさい。さすれば、スキルを授かるでしょう!子供達に幸多くあらんことを!」
神父が言葉を言うと、子供達は目を瞑り、祈りを捧げ始め、モルドレッドもアサも同じような形で祈りを捧げた。
モルドレッドが祈りを捧げると、へその下あたりが熱くなり、どこからか声が聞こえた。
ヒュギエイア「我が名は、ヒュギエイア。健康を司る女神である。ぬしに力を授ける。スキルに頼らず、努力を忘れるな。さすれば、英雄の道は切り開かれる。」
と聞こえた後に、急に砕けた口調で、
ヒュギエイア「まあ、こんな事いっても、皆聞こえて無いし、スキルの事しか頭に無いからな。努力すれば、スキル持ちより成長は遅いけど、力はつくんだけどね。まぁ、がんばれー!」
モルドレッドは驚いたが、神様の言った事を心の中に刻み、
モル「神様、ありがとう。頑張ります。」
と心の中で呟いたのだった。
神父「お腹が熱くなってから、熱が冷めれば、スキルを授かっている。体が冷めた者から教会を出て、親のところに行きなさい。スキルの確認方法は、親に聞きなさい。得たスキルで将来は決まる。良いスキルを授かっていると願っています。」
神父が言うと、子供達は続々と教会を出て、親のところに歩いて行った。
モルドレッドとアサも、笑顔で顔を見合せ、手を繋いで教会を出たのだった。
モルドレッドとアサが父親達のところに来ると、お互いに手を振って別れ、それぞれ父親と帰路についた。
リック「モルには、どんなスキルを貰えたかな。だいたい少なくても三個、四個は貰えるはずだから、良いスキルが貰えてると良いな。」
モル「父!スキルって少ないと何かあるの?」
リック「戦うスキルが無いと体力が増えないし、魔法スキルが無いと魔力が増えないし、そもそも、魔法が使えなかったりする。スキルが無いと、成長しないから、将来、なれる仕事も減る。スキルが多ければ、それだけ成長するから、大事にされるし、国からも優遇されるんだよ。」
その後もモルドレッドは、父のリックからスキルの事について、スキルについて説明を受けた。
スキルについては、
・槍使いであれば、槍を使った攻撃が上手くなるように、スキル名を見れば、何ができるか、何が成長するかわかる。
・スキルは無意識に使え、体が動く
・スキルは使えば使っただけ、熟練度が上がり、多彩な動きができ、つかわないと、熟練度は下がり、能力が落ちる
・槍使い等のスキルは攻撃力が上がりやすく、鉄壁等は防御力、俊足等は速さ、魔法等は魔力、幸運等は運が上がりやすく、成長しやすい。
・そのため、スキルをいっぱいもってる者は、能力が高く、強くなるため、上級騎士や上級冒険者等の英雄達は、スキルをいっぱい持っている。
・スキルをいっぱい持ってる者は、国やギルドから重宝される。
・スキルが平均より少なくても、差別はされないが、能力差が出て、自ずと将来の仕事が決まってしまう
というものであった。
モル「そうなんだね。でも神様は努力すれば、力はつくって言ってたよ?」
リック「神様と話した!?それはすごい。何千万人に一人にしかない神託かな?モルはきっとすごいスキルを貰ったのかもしれないね!」
モル「家に帰ったら、スキ見みたいなぁ」
しばらくして、モルドレッド達は帰宅すると、母のリンが出迎えた。
家に着くと、モルドレッドはリックに透明な正方形の石を渡してきた。
リック「これはスキル鑑定装置といって、どこの家にもある魔道具だよ!これに手のひらをのせると、スキルや攻撃力等がわかる。モル、やってみなさい。モルは神様と話したんだから、きっと良いスキルを沢山貰ったはずだよ。」
モル「父、ありがとう!これでスキルが分かるよ」
と言って、スキル等鑑定装置受けとると、右のひらをのせた。
モルドレッドは、内心、期待していた。
モルドレッドが手を置くと、スキル鑑定装置が光輝き始めた。
そして、光が収まると、家族3人でスキル鑑定装置を見ると、透明な画面には
モルドレッド
3歳
攻撃力 10
防御力 15
素早さ 8
魔力 0
運 10
スキル 頑丈
と浮かび上がった。
モルドレッドは、気づいた。
父からは、スキルは最低でも4個は貰えると言われたのに自分は1個だということに気づいた。
モルドレッドは、魔道具が壊れたのかと思ったが、両親の驚いている顔を見て、正しい結果だと理解した。
リックとリンは、英雄に憧れる、まだ小さいモルドレッドに何と声をかけて良いのか分からないのか、言葉が出ない様子だった。
モル「スキル1個しかない。これ壊れてないよね?」
リック「きっと壊れたんだな。また、今度、確認しよう!」
リックが困った表情をしていたので、モルドレッドは、自分が失望しないように気を遣っていることは、すぐに理解した。
モル「そっか。じゃぁ、今度だね」
モルドレッドは、まだ、字が読めないので、一個だけのスキルは何か特別な物かもしれないと希望を抱き、リックに聞く事にした。
モル「このスキルは何のスキル?英雄になれるかな?」
リック「!それは、・・・特別なスキルで英雄になれるさ!細かいことは、今度、教えてあげるよ。」
リックの浮かない表情を見て、不安になりながらも、モルドレッドは父を信じる事にしたのだった。