毟束 湯臭紫
毟束 湯臭紫。
これは私の狂い昔話シリーズの『誕生日に悲惨な目に遭う毟束湯臭紫』に出てくる主人公のジジイの名前だ。
ちょっと待って、60歳ってジジイか?
微妙だなぁ〜。まあいいや。
さて、この毟束 湯臭紫だが、苗字が5文字で、名前が8文字である。
世間一般で言えば苗字が5文字というのは長い方だろう。なんちゃら小路やなんちゃら院などよりは短いが、やはり長い部類に入る。
こういった場合、下の名前を短くしたくなる人が多いはずだ。
例として名前を『レイ』にしてみよう(そのまんますぎやん)。
毟束 レイ。
どうだろうか。
重めの苗字に2文字の名前。バランスがよくシュッとした印象を受けないだろうか。
しかし、私は湯臭紫だった。
重たい苗字に超重たい名前を付けたのだ。
『むしりたば ゆにおいむらさき』
先程のシュッとした印象のレイに対し、こちらはどっしりとした重厚感が感じられないだろうか。
また、字面にも多少こだわっている。
狂い昔話というシリーズなので、面白くなくてはいけないのだ。
まず毟束という苗字だ。
髪の毛を全部ひっ掴んで、思い切り引っ張っているような画が浮かんでこないだろうか。
肩に足をかけて、大きなカブのように踏ん張っているような気がするのだ。
次は名前だ。
湯臭紫。
湯の臭いと聞いてあなたはなにを想像するだろうか。
そうだ。硫黄だ。
『お湯』だと水を沸騰させただけの温かい水に過ぎず、当然臭いもないのだが、『湯』単品だと温泉のイメージがあるのだ。ゆえに湯の臭いは硫黄を彷彿とさせる。
そして最後、紫だ。
先程までは臭いだったが、次は色が来た。
紫が入る名前と聞いて真っ先に思い浮かぶのはやはり紫式部だろう。文句無しにカッコイイ。
ということは、『ゆにおい』のようなマヌケな感じのする音の後につけたらどうなるか。
ゆにおいむらさき。
決して強そうには見えないし聞こえない。
狂った世界に住んでいる頭のおかしいジジイのキャラクターにピッタリなのではないだろうか。
この連載はこんな感じで進めていくのだが、今回長々と書いた分析はびっくりするほど適当な詭弁である。
私は「なんかそれっぽいこと」を言うのが得意なので、書いていて楽しい。勉強すれば詐欺師にだってなれる気がしてきた。
よく考えたら「なんかそれっぽいこと」を言うのが得意なのではなく、「特にそうでもないもの」を「そうだ」と嘘をつくのが得意なのかもしれない。
なので口喧嘩も強い。そういう時だけ異常に頭の回転が速いのだ。明らかに自分のミスでも、相手が悪いように詰めていくことが出来る。それにプラスして声も大きいので、もしかしたら私は最強なのかもしれない。
最悪じゃん。