よいどれたるや
夢追い人
よいどれたるや
ひはあらわれず
よをしのべざるやと
ある男は近年、朝日が見られないととある薬師に相談していた。
「ああ、師やいくら眠っても朝が来ないのです。これはなんかの病気なんでしょうか。」
男は、必死に訴えた。
そうすると、師は平然とした様子で
「おや、それはもしかして朝寝て夜起きているからではありませんかな。」
男はしばらくの間、ぽかんとしておりましたが、ふと我に返りこのようなことを言い始めました。
「いいやそれはねんだ。夜は毎日眠っておってのう。必ず朝には、目覚ますようにしとる。昨日だって、夜七時には寝て、朝の五時には起きているからのう。よく寝てるじゃろ。」
男は、ぱっぱりとした態度で笑いながら話した。それを見て師は、表情一つ変えずにこういった。
「おお、そうかそれはとても健康的じゃないですか。では最近、妙な夢とか見ませんでしたでしょうかな。」
男は少しの間、考えて震えながら言った。
「よくこんな夢を見るんじゃよ。何かに追われている夢なんじゃが、何かを確認しようとすると、恐ろしく感じてな、目が覚めてしまうんじゃよ」。
師は優しそうな顔をしてこう言った。
「あんたに効く薬はここにねえな。最もいい場所を知ってるんじゃよ。教えますから、よくきいてくださいな。」
師は優しそうな顔をしたまま、何かをつぶやいた。それを聞いた男は、ひどく悲しげな顔をし、師のもとから去っていた。
これは、ある真夜中の話であった。
夢食い人
よいどれたるや
おもいにふけたり
あきはこずとも
ときをくらうなり
私の娘が、ひどく顔を真っ赤にして、私のもとへ走ってきた。
「やばいよ、まずいよ、父さん。宿題が終わってないんだ。」
私は苛立ちながらも、優しい表情でゆっくりと話した。
「もうすぐ休みも終わりだというのに、どうして終わってないのかな」。
娘は、少しおびえながら
「お父さんが悪いんだよ。いつも仕事に言って、家にあまり帰って来ないから、寂しくて勉強する気にもなれなかったんだよ。」
娘は涙ながらに言った。その光景は、昔の自分重なっているように見えた。そのため、男は娘に強くものを言えなかった。
「そうかなにが終わってないのかな」。
男は、優しく聞いた。
娘は嬉しそうに、やったといいながら、
「自由研究と図画工作が終わってないんだ。あと、数学のワークも。」
男は、明日の自分に対して、不安になりながら自由研究と図画工作をすることにした。
男は自由研究として、仕事として調べていた、「花で発電できるのか」についての結果を資料にまとめた。よし、これで完成だ。完璧だろう。男は、達成感を得た。次に、男は貯金箱を作った。これも完璧だ。男は、達成感を得た。しばらくして、娘にできたことを報告すると、ちょうど娘も課題が終わったとこであった。
娘は嬉しそうに。「お父さんありがとう」と言って抱き着いてきた。男はとてもうれしかった。
男は「さあ、もう夜だ寝なさい」と言い、娘を寝床につかせた。
もうじき夜が明ける、男は空虚な画面を見ていった。
「おかあちゃんごめん」
男は、仕事着を着て外に出た。外はまだ暑かった。
夢見人
よいどれたるや
もののけの
あとおいけり
よいもさめず
ゆめうつつ
おどりたるなり
ある女は、居酒屋で酒を飲んでいた。というより飲まれていた。
酒を飲まねば、やっていけないような状況だったからだ。先日、小学校四年生から付き合っていた彼と別れたからだ。中学高校までは一緒だったが、大学になり、彼は北海道へ行ってしまい。遠距離恋愛をすることになった。それも三年続いたが、先日、彼から別れを告げられたのである。それはちょうど付き合い始めて、十二年記念の日だった。
あの告白をして、「付き合おう」と言われた日のことを支えに生きていたのに、今ではその記憶は、悪夢に変わった。
女は溜息をつき、よくわからない酒を飲んだ。そして、意識はなくなった。
目が覚めるとそこは、花畑のような部屋であった。女はよいのせいか、体が言うことを聞かず、動けなかった。
目の前に、二匹の狐が急に現れ言った。
「若葉が好きか、老葉が好きか、若葉が好きなら、左手へ行け。老葉が好きなら、右手へ行け。どっちでもないなら、踊りたまえ」。
女は言葉の意味が分からなかったが、左手の老葉を選んだ。
二匹の狐は啼った。
「お姉さん大丈夫かい、右か左どっちかだよ。さあ、答えな。」
狐は不愉快そうに言った。
女は相変わらず、同じような答えをした。
画面外で男は、一人喜んでいた。そしてとなりには、縛られた器界が一人いる。
その表情は、神経質なたこのようだった。