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ショートショート1月~2回目

小石

作者: たかさば

 ……コンっ!!


 散歩をしていたら、小石を蹴飛ばした。


 ……ころころと転がる小石。


 少し欠けた、丸みのあるフォルム…白と茶色と灰色に混じる黒。

 ひょいと指でつまんで、まじまじと見つめる。


 これは…砂岩だな。

 なんだ、珍しくも何とも、ない。


 ……僕は、ポイと小石を投げ捨てた。



 ……じゃりっ!!


 散歩を続けていたら、小石を踏んだ。


 ……足の裏で踏まれた小石。


 小さな石が固まった、ごつごつとしたフォルム…色調の違う黒に灰色が混じり合っている。

 ひょいと指でつまんで、まじまじと見つめる。


 これは…礫岩だな。

 なんだ、珍しくも何とも、ない。


 ……僕は、ポイと小石を投げ捨てた。



 ……ぼりっ!!


 散歩をさらに続けていたら、小石を踏みつぶした。


 ……踏まれて粉砕してしまった小石。


 パラパラと崩れる、儚げなフォルム…薄汚れた外側の色で中身の白さが際立つ。

 ひょいと指でつまんで、まじまじと見つめる。


 これは…生物の骨だな。

 石のふりをした、命の忘れ物だ。

 わりと珍しいけど、壊れちゃったから、な。


 ……僕は、ポイと骨を投げ捨てた。



 ……ごりっ!!…どたっ!!!


 散歩をさらにさらに続けていたら、小石を踏んで…転んでしまった。


 ……なんだ、この小石は。


 足元にふてぶてしく転がっている、忌々しいフォルム…どす黒く輝く憎たらしい色。

 ひょいと指でつまんで、まじまじと見つめる。


 これは…なんだ。

 僕の、欠片じゃないか。


 石のふりをした、破壊の名残。


 胸をよぎるのは、苦い思い出。

 ……あーあー、ミスったよなあ。


 海のど真ん中に落ちるつもりだったのに、……目測を誤ってしまった、あの日。


 僕は……、文明の最先端をぶち壊してしまったのだなあ。

 ……あれがなければ、今頃、この星は。


 他の星からの移住者を迎え入れて、次元に囚われない交流を楽しみながら……もっともっと派手に繁栄していたはずだったんだ。

 人が人として、誇りと喜びを満喫していたはずだったんだ。


 人の揚げ足をとり、人をからかい、人に影響され、人が人であることを簡単に放棄する、この、世の中。


 ……こんな燻った命が溢れてるはずじゃ……なかったんだ。


 失敗したよなあ……。

 ちょっと好奇心が押さえられなかったせいで、こんなつまんない星になってしまった。


 宇宙とつながる瞬間を、間近で見ようとしたのがまずかった。

 宇宙の彼方から見守っていたら、こんな事にはならなかった。


 まあ、今さら悔やんだところで……、起きてしまった事は、変えようもない。


 今はただ、この星に生きている人間が、変わることを願うしか、ない。


 たまに発生する、消えた大陸の魂を持つ人間が、燻る人に潰されて…なかなか世界が変わらないのが残念でならない。

 

 ……いつか、変わるかな?

 ……変わると、いいんだけど。

 ……変われるかなあ?

 ……変わってほしいんだけど。


 どうせ変わらないかと、くさくさした気分で、足元の小石を、蹴り飛ばした。


 カッ……ザ、ザサッ!


 ……コツン!


 小石は、道行く生命体に接触して、動きを止めた。


「……おいっ!なにすんだよ?!石が当たったじゃねーか!」

「あ、すみませ…


 ……ガツン!めきょ!ぼりゅっ!


「ぎ、ぎゃあああああ!」

 

 あーあ、いきなり殴りかかるから……。


 ……血気盛んなのは、いいけれど。

 なぜ状況を考えて言葉を発しようとしないのだ。


 せめて相手が人か人じゃないか見分けができてから攻撃したら、どうなんだい。

 

 右手が粉砕してるじゃないか。

 ただの肉が隕石に叶うはずないのになあ。


「な、なにしやがった!?ぶち殺すぞぉおおお!!あ、あが、アァアアアアア!イテェ、ぐ、ぐぉおおおお!」


 破壊された手から、全身の崩壊が始まった。


 ……まあ、つまんない種類の生き物だし、ほっとくか。  

 明らかにこの星に不要な人間だからな。


 しばらく痛みでのたうちまわったのち、肉は溶け、骨も崩れ、大地に混じる事だろう。


「な、なんだこれは…た、たすけっ…う、ぐ、ぅぎぃいいい、あ、あ、あ……。」


 僕は、呻いている無駄な生命体をスルーして、歩きだしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 圧倒的なパワー。ですね。 あれ?俺、なんかやらかしちゃいました? 的なやつですね。もうここまでくると、潔い破壊っぷりで、清々しいですけどねー。
[良い点] あらぁ。パワーがパワパワしているの [気になる点] 人間がザラザラしてる気がしてきました [一言] 声にならない概念の、破壊っぽいナニカ
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