きらめき
朝方のキンと冷え、澄んだ空気が心地よい。
昨夜遅くに降っていた雨も、夜明け前には止んでいた。
雨の名残と、夜露とが、小さな球体になって草原や森の植物の上に留まっていた。
朝の微風によって軽く押されただけで、葉の上にぎりぎり留まっていた小さな球体が滑り出す。
ころころと小さな球体は転がって、ついには葉の端から空中にジャンプする。
ゆっくりと夜の色が薄らいで、柔らかなクリーム色とピンクの不思議な光が混じり合う。
やがて、朝の日が昇り、完全に藍色の名残が消失した。
昨日までに限界近く膨らんでいた蕾が弾ける。
ひとつ、ふたつ、みつ、よつ、いつつ。
小さすぎて人の耳には捉え切れない微かな誕生の音を響かせて。
まるで、ドミノの札が倒れたかのように、次々、次々、弾けて開く。
開いて、甘い香りを空へと放つ。
昼になったら現れる。
蜜を求めてやってくる。
空の向こうからのお客さん。
早朝からの準備は万端。開店時間までは、まだ時間がある。
花の個室のカフェスペース。
一番乗りは誰だろう?
ぶんぶん、ころころ、かわいい、まるはなばち?
それとも、ひらひら、しゃなり、シックで素敵な、からすあげは?
朝の微風がまた吹いた。
ころころ小さな球体が、押されて転げて、葉を滑る。
きらきら輝き、落ちていく。