灯の過去
どうも、お久しぶりです。
よろしくお願いします。
・・・ん、んぐ?う・・・う、う・・・・うん、ううん。
こ・・こ・・・・は?ここ、はどこ、だ。
な、なん・・・だ、ここは。
いま、は、どこだ。
なんなんだ。
なにもみえない。なにも、きこえない。
ゆめなのか。現実なのか。
わからない。
ワカラナイ。
全て、理解不能。
これは・・・なん・・だ。
なんなんだ。
本当に俺なのか?
お・・俺は・・・だ・・・れだ・・・。
オ・・・・・オレ・・・・ハ・・・・・・・・。
俺こと明石灯は、今日から岳中学校に通うこととなる。岳中は岳小学校とその周辺の小学校の人たちが通うこととなる。知っている人が多くいるせいか、そこまで違いが無いと思えた。
しかし、違いの一つは部活動だ。この中学校は、だいだい他の中学校と変わらない。だが、人数が多いせいか、少しマイナーな部活動もある。やはり俺は運動部に入りたい。
えぇっと、運動部は・・・サッカー部、バスケ部、野球部、水泳部、バトミントン部、卓球部、剣道部、柔道部、ソフトテニス部、山岳部―――――っとあと一個あるな。ん?今年度新設?
何だろう?聞いたことあるような無いような部活だな?それに、今年度新設だし、なんか特別感があるな。よし、特に入りたかった部活もないしこの部活でいいか。
明石灯 ハンドボール部
「あれ、ともくんはハンドボールにするの?へぇー。」
後ろから俺を呼ぶ声がすると思ったら、岳小で同じだった神井月だ。小学校で同じクラスが何回かあって、話せるくらいの友達となった。
だが、こいつは岳小では『岳小二美女』といわれる、岳小で最も可愛い二人のうちの一人だ。
そんな彼女がなぜ俺に話しかけてくるのか小学校の頃の俺には謎であった。だって、俺はクラスでは目立つ方でもなく、まぁ目立たない訳でもないけど。いわゆる、陽キャでも陰キャでもなく
ーー普通ー―
である。
今では、まぁ話しかけてくる理由はなんとなくわかるんだけどな。
「んだよ、悪いかよ。」
「いやそういうわけではなくて、とも君がそれにするなら私もそうしようかなーと思って。」
「えっ、なんで?っていうか、とも君ってそろそろ辞めてくんない?」
「じゃあなんて呼べばいいのよ。うう~ん。じゃあ、灯。」
「・・・っく」
い、いきなり名前呼び?!
それは俺にはつらい。それにこんな美少女に。思わず顔をそらしてしまった。それではかっこがつかない。なんとかたて直さなければ・・・。
「あれ、灯?どうしたの?体調悪い?」
「だっ、大丈夫だよ。それより、柊さんはどの部活にするの?」
よし!スムーズに話題の転換ができたぞ。今日の俺はいい調子だ。
「部活なんてどうでもいいの!それより、灯の顔がどんどん赤くなってるのが心配なの。」
全然転換できてねー!!っていうか、赤くなってるって、そりゃそうだろ!!こんな美少女と近くで会話したら自分が自分じゃなくなるのが普通だろ!マジで柊月の声マジでやべぇ。破壊力半端ねえ。
でも俺は顔を赤くさせるだけだったんだ。よく耐えた方だぞ。
「おっ、俺はほんとにだい・・・・」
「よし!保健室にLet's go!」
おいおい。大丈夫かよ。俺の中学校生活・・・。
それから、数年がたち、俺たちはとうとう二年生の後半に取りかかった。
それまでの俺の中学校での生活は、小学校の生活とは比べようのないくらい充実した生活を送った。これほどになるとは俺も予想していなかった。俺はいわゆるカーストトップという立場にとうとう登りついたのだ。
だが、カーストトップの象徴であるコミュ力高めのグループや男女に分け隔てない性格というものを最初から俺は当たり前のように手に入れたというわけではない。
一年の最初は月や瑞木と話していたものの、彼女らは容姿が長けていたのに加えコミュニケーション能力も立派に携えていたため、すぐに俺とは離れてしまいクラスの中心であるグループに吸収されてしまった。二人は俺を引き込もうとしてくれたが、さすがに男子が一人もいないし、あそこまでコミュ力が高くない俺は当たり前のように入らなかった。
だが、事は一年生の夏休みである。
俺はいつものように近くの海に行こうとしていた。そのころの夏休み中の俺の日課だった。
「じゃ、行ってくるわ。」
「おい、ちょっと待て。」
「なに??」
なんだ?普通に行こうとしただけなんだけど・・・。
「いや、そこまで急用じゃないんだけどな。」
「なんだよ。兄ちゃん?」
「まあ、別に今日予定もないだろ?だったら久しぶりに俺と遊ばないか?」
「えっ、あぁ、別にいいけど。」
えっっと、未だによくわからないんだけど・・・。
俺と兄は仲が悪いわけでもない。だが、いいわけでもない。お互い血はつながっているがまるで知り合いのような付き合いだった。
それが、「一緒に遊ぼう」ときた。一緒に遊んだ事なんて、記憶にはあまり残っていない。俺たち兄弟は二人で仲良く遊ぶみたいな関係からは大きく外れていたのだ。
なんだ。急に。絶対何かある・・・。
「そうか。んじゃ、早速着替えてくれ。」
「っへ??」
なんで?別に変な服じゃなくない?上は無地で青のTシャツ、下はすでに海パンをはいているが、別に普通の服と見間違えてもいいレベルだ。
これくらいなら、兄と遊ぶくらいならいいと思うが・・・。
「その格好じゃ、外出れないだろ?」
「っへ???」
あ、あれ??そんなに外見に気を遣う人だっけ?
「別にこれで良くない?」
「ダメなものはダメだ。俺が用意しておいたから着替えてこい。」
「う、うん。」
やはり、どこかおかしいぞ。今日の兄はいつもと違う。明らかに違う。
いつもは大学受験がどうこう言って、高校三年で、部屋で勉強しているのにも関わらず、なぜだろうか。
「着替えたよ。」
「おっし、じゃあ行くか。あっ、何も持たなくていいからな。」
おっ、やった!手ぶらか!荷物がないならありがたい。やっぱ荷物って、面倒だからな。
って、いやいや、そこじゃない。
なんだよこの服!!!俺かんな服持ってねえぞ!!!中学生の俺がこんなかっこいい服着ていいのかよ!!服の名前はわからねえけど、これは都会によくいるかっこいい大学生が着ている服だ!絶対俺似合ってないってこれ!
「ねえねえ、こんな服でいいの?!」
「何言ってんだよ。それが、いいんだよ。」
「いやいや、良くないって!」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねぇーよ。今日は、俺に従え。」
もう、よくわからねえ。こんなオラオラ系の兄ちゃんなんて初めてだ。なんだよホント。
それより、この服ゼッテー兄ちゃんのだ。俺、こんなの持ってないしましてや、父さんなんて・・・、想像したくもない。でも、兄ちゃんは俺よりも全然背が高いから、今のサイズではなさそうだ・・・。
ってことは、兄ちゃんって中学の頃からこんなの着てたの?!
「早く行くぞ。」
ちょっと待って、ちょっと待って。頭が追いついてないんだけど!
「おし、ついたぞ。」
やっとか。やっとついたか。めっちゃ疲れた。一時間以上も電車に揺られてたから、眠くなってきた。
それで、ここは・・・・・・・・・・・
っって、えっ・・・
し、し、新袋!?
えっ?な、なんで?
「ねえ、兄ちゃん。ここって・・・。」
「ああ、新袋だ。」
「なんで俺たちこんなとこ来たの?」
「ああ、今日は俺がお前に教えたいことがあるんだ。とりあえず。・・・こっちだな。」
「う、うん。」
まだ、なにがなんだかわからないんだけど、こんな人混みではぐれたら大変だし、ついてくしかない。
キィーー。
「いらっしゃいませ。お二人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」
俺と兄ちゃんは新袋のとある喫茶店にやってきた。名前は何処に書いてあるかはからないし、そもそもここがどこだかわからない。
大丈夫かな?俺、喫茶店とか初めてなんだけど。俺は言ってもいいのかな?俺コーヒーとか飲めないんだけど。
それよりも、この俺の目の前にいる兄ちゃんは、一度も歩き始めてから止まっていない。常に、俺の一個斜め前を歩き、一つも信号に引っかからず、一人もぶつかりそうになっていなかった。
しかも、俺もこんなに人混みなのに、一人もぶつかりそうになっていない。
振り返ってないのにもかかわらず、俺の不規則な歩く速さに合わせてくれ、時々会話も振ってくれた。
不思議なことに、俺はーーーーー
居心地が異常によかったのだ。
なんとも言えないこの感じ。目の前でマジックをやってもらっているのに、種も仕掛けもわからないこの感じ。
スゴい。理由はとにかくわからない。
が、凄さだけはビンビンに伝わってくる。
「灯は、何が飲みたい?」
「んへ?」
やっb。急に振られたから変な声出しちまった。なな、なんだっけ?何が飲みたいかだっけ??えっと、俺が飲めるものは・・・、
「後ろの方に甘そうなものがあるぞ。」
「えっ、う、うん。・・・あ、本当だ」
えっと、何があるって?・・・よし、これにしよう。
「決まったよ。これにする。」
「これね。・・・すいません。」
「はい、どうぞ。」
「えっと、アイスコーヒーとソーダフロートを一つずつください。」
「かしこまりました。コーヒーにお砂糖とミルクはお付けしますか?」
「あっ、ミルクだけお願いします。」
「かしこまりました。ご注文は以上で・・・・・。」
今日はよくわからないけど、兄ちゃんが好きなもの買ってくれるって言うから、ついてるな。
夏休みも半ばだけど、今まで海で遊びすぎて、全然どこかに行ってなかったからな。よし。今日は思いっきり遊ぼう!
っと、俺なりのくだらない意気込みをしつつ、兄ちゃんが、店員を呼び止めてスムーズに注文をしている姿勢を、まじまじと見た。
なんだろう、胸がざわざわする。変な感覚だ。
だが、兄ちゃんの事を考えると、俺の中の感情が、二つに統合された。
カッケー。
ただ、その一言で事が足りた。
いや、それしか頭に浮かばなかったのだ。
俺らの時間だけが止まったような感覚がする。
いや、兄ちゃんの周りだけが動いている。
常に、次へと動いている。
「凄い」では物足りない。「エグい」だ。
だんだんと、感覚が戻ってきた。が、やはり、頭から離れない。
エゲツネェ。
なんだ。なんでこうなってるのか、なぜわからないのか・・・。もう、頭が回転してない。動いていない。
俺の中は、二つの感情・・で埋まってしまっている。
もう、これ以上ないってくらいに、俺の中は満たされている。
だが、わからない。本当に、わからないのだ。
「いいか、灯。今日は、俺について来いよ、っと思ったが、なにかしたいことはないか。それか、どっか行きたいとか。」
っっっは!!
急に現実に引き戻された。
俺は、何をしていたんだ?!夢の中にでもいたような感覚だった。俺は、一体何を考えていたんだ?
「灯?大丈夫か?」
あっ、そんなことよりも、兄ちゃんだ。
兄ちゃんなんて言ってたっけ?
・・・あっ、行きたいとこだっけ?
「・・・っへぇ。うーーーーん。」
とっ、突然そんなこと言われても、頭が働いてない。何も考えられない。
えっ、なんで頭が働いてないんだ?なんだ、このザワザワ感、ウズウズ感。何かを知りたいけれど、何がわからないのかわからないこの感覚。
おかしい。何かがおかしい。
「まぁ、そうだよな。急に都会に連れてこられて、何もわからないよな。よっし、じゃあ今日だけは俺が連れてってやるよ。んな、事より、ここのコーヒー上手いな。何使ってんだろ。もしか・・・・。」
兄ちゃんは、知らぬ間に運ばれてきたコーヒーを飲みながら、そんなことを言っていた。
兄ちゃんの話を聞くと、胸の高鳴りが増していく。こんなこと初めてだ。いつもと兄ちゃんの様子が違うだけで、こんなにもなっているのか。
ッそうだ!思い出した!俺が、何を考えていたのかを!俺が、あの間、何をしていたのかを!
あれっ?じゃあ、なんで俺はこんな大切なことを一瞬にして忘れてしまったのだろう。
「なぁ、早くしないと、灯のフロート溶けちまうぞ。」
「・・えっ、う、うん。」
そうだな。そんなことは、後ででいいや。ゆっくり、考えよう。
今は、ソーダフロート飲まないと。せっかく兄ちゃんのおごりだしな。
ちょっと、編集に手こずっちゃって、時間がかかってしまいました。
これからも頑張ります。
感想よろしくお願いします。