新キャラ登場!
よろしくお願いします
ひと悶着あった職員室を無音で抜け、急いで教室に帰ってくると、月や瑞木は相変わらず海と話していた。俺もその中に入ろうかと思い近寄ろうとした。が、
「はい、次の授業を始めます。座ってください。」
と、俺のすぐ後ろからの声でやむなくやめた。俺の後ろにいたことにまったく気がつきもしなかった。
「号令は最初のうちは、私がやりますね。起立、気を付け、礼。」
(・・この人誰?)
先ほどの悪魔みたいな先生と打って変わって天使のような笑顔と声で号令をした。ついさっきの先生はどこいったのだろうか。だがそんなことは俺以外のクラスメートが知るはずもなく、
「「「お願いします。」」」
男女ともにわくわくした表情で授業に臨む姿勢を見せていた。
「今の時間は、色々配布物があるからそれをまとめる時間にします。じゃあ、一斉に配っていくからしっかりしまうようにね。」
そんな声とともに先生がせっせと配り始めるのだが、配るのになれていないのか一周するのに時間がかかっていた。今なら、先生とも仲いい(?)のに加えて「遅刻男」という俺のレッテルをすぐに剥がさなければならない。だから・・。
「先生、俺も手伝いましょうか。」
「いや、いいのよ明石君。このなかに大切な資料もあるから、私だけでやるわ。ありがとう。」
(誰だよこの人ぉぉ!!)
先ほどとは別人の笑顔の先生に丁寧に断られてしまった。二重人格にもほどがある、と強く心の中で思った。この先生のことだから二重以上もあるのではないかと思わざるをえない。
仮面をかぶった先生から配られた何枚目かの紙を後ろに渡そうとすると突然「きゃっ。」っと、かわいらしい声が隣からした。
先生が配っている紙を落としてしまったらしい。大丈夫だろうか。とりあえず俺の近くにあるものは拾ってやろうと思い数枚の紙を拾い上げた。
「あいよ。」
「あっ、ありがと。」
紙を落としたこの隣の女の子。たしか、俺の地元の隣町から来ている土屋あやね。俺は自己紹介の時にまじで驚いた。
土屋あやね。その名は街をまたいでも誰もが知っている名だ。
なぜか。
可愛いからに決まっているだろう。
髪はミディアムかセミロングかその辺くらいの長さ、顔は整っており、ほぼ全ての人が、かわいいというレベルだ。ましてやそれだけでなく、身長は小学成高学年でもまだ通るくらい小さくかわいらしいのに加え、肌は雪のような白さでつやつやしている。またいざ会ってみると目線がうろちょろしていてまさに小動物。その辺が月や瑞木とは違うタイプのかわいさの特徴だ。あやねは一般的に言うと「ロリ」ってやつだと思う。だが、タダのロリではなんか上手くはまらない。
なぜか。
それは、こいつは見たところツンデレみたいでもなくもちろんツインテでもない。それでは、タダのロリに思えるが、こいつは、多分「私、頑張るよ!」みたいな感じの天然キャラで、俺らがついつい応援したくなってしまうような「ザ・カワイイ」のトップファイブに入るような感じだと思う。
にしても、ほんとに天然だったら月とキャラかぶっちゃうから俺も困ると内心思う。収集つかなくなるから。いや、でもやっぱ天然あった方が雰囲気に合ってていいというのも一理ある。【なんかお前・・】【・・キモいな】(・・うっせ。ほっとけ。)
だがそんなことを俺が考えても仕方がない。
なぜ俺が聞いたことがあるのかという話の途中だったなと思い出した。
それは、「かわいいから」というのに加えてさらにもう一つある。それは、「土屋あやねと会話をすると、一瞬で死ぬ」という噂があったからだ。単なる噂だと思っていたが、内心、隣町までくるのだからほんとにやばいやつなのではないかと疑っていた。しかし、今土屋あやねの話が隣の町まで来るほどのやばさがわかった。
それは、先ほど土屋さんが発した「ありがとう」という日本人にとってはなじみのある単純な一言。だが、聞いた瞬間で心が奪われた。いや、この程度じゃ足りないな。俺はあるいみ死んだ。聴いた瞬間天国に行ったような感覚がした。その理由はよくわからない。ただ、特別な何かを感じたのだ。ただならぬ、〝思い〟が感じられた。なんだったのだろう。何を秘めているのだろう。想像もできない。
「おい、だから俺の前でいちゃつくなって言ったろ。」
俺が土屋さんについて真剣に考えていたところに変態野郎(海)が邪魔しに来やがった。俺と土屋さんは普通の世間話をしていただけなのにわざわざ「いちゃついている」という解釈になるところが普通でない。
「いや、まて、海。俺らはいちゃついてなどないぞ。」
「大丈夫、お嬢さん?心に傷はないかい?いやだったら、俺に助けを求めるといい。そしたらこいつをブっ飛ばしてやるから。」
(なんで、俺が悪者みたいになってんの!)
んだが、土屋さんはここまでの会話から素直で真面目な子のように見える。よってこの後の行動は目に見えている。
「ひぃっっっ。」
それは引く行動ただ一択。想像通りの引き様だった。やはり土屋さんは真面目で素直だ。俺の目と頭に狂いはなさそうだ。
「おい、海あまりやり過ぎるなよ。初対面なんだから。」
俺は筋書き通り土屋さんの味方になり、海を徹底的に陥れることにした。
「俺は、その子を助けようとしただけだ。」
「いえ!それは、助けというものではありません!」
海の言うことが理解できている人は多分ゼロだろう。だが嘘はついていないように思える。それに対して土屋さんはさっきまでのおどおどが消え去ったようなキリッとした面持ちで悪代官をやっつけている。
「本当にそうなら、もっと心がこもっているはずです!あなたがその気持ち悪い心をしている限り、私はあなたを信用できません!!」
「うっ・・。」
(いやいや。「うっ」ってなんだよ。そんな反応普通しねえよ。)
と思っていたが、なんだか海の様子がおかしい。失礼。訂正しよう。海の様子はいつもおかしいのだが、今のこいつは机に顔を突っ伏していてかろうじて息をしているようだ。おそらくだが、今まで月や瑞木の対応に耐えてきたダメージにプラスして、土屋さんに心をやられてしまったのだろう。
「その辺の人たちうるさいよ~。って、また明石君か。少しくらいじっとしていてね~。」
「すみません。」
(なんで俺が怒られなければならないのだろうか。うるさいのはこいつのせいだろ?)
と思いつつ先生の顔を覗いてみると、かすかに顔の表面に血管が浮き出ている。
これはかなり怒らせているのだと推測、いや断言できる。
「天野君。大丈夫?体調でも悪いの?」
菅野tは優しく海に問いかけた。
(何も知らなかったら普通に優しい先生なんだけどなぁ。)
「い、いえ。だいじょおぶです。」やはり明らかに海がおかしい。
これはあくまで予想だが、土屋さんは〝心〟が秀でているのではないか。
俺が感じたグッとくる感じや海が土屋さんにだけダメージを受けていることから、そう予測できる。だが断言はまだできない。ただの偶然の可能性もある。
「そう。でも、なんかあったら言ってね。じゃあ、配り終えたから説明を始めるよ。まず・・・。」
〝声〟の月に〝目〟の瑞木、そして〝心〟の土屋さんか。
(・・・なんかスゴくね。必殺技持つ戦士みたいなんだけど。やっべ、テンション上がってきた!)
今回は、新しい「あやね」を登場させてみました。
感想待ってます。