プロローグ
俺は葉坂翼日本の高校に通うごく普通の男子高校生…だった。
ザーザー
ザーザー
「雨かー
貴重な体育がー!最悪だ。」
俺はいつも通り登校していた。
その日は雨でいつもより暗く、冷え込んでいた。
「はぁー、来週からテストかよ。早く終わんないかな」
来週から期末テストが始まる。
自分で言うのもなんだが俺はこう見えて頭がいい。学年で一桁第には入れるくらいだ
...ただ課題提出が死ぬほどだるい、!
そんな事を考えていると、後ろから声をかけられたと同時に、軽く肩を叩かれた
「おはよー!つばさ!」
「おー、おはよ」
この能天気でパッと見アホな女子は俺の幼なじみで、同じクラスの桐崎奈緒だ。
顔も可愛く明るい性格もあってか、周りからも人気があり、男子にもモテるやつだ。
「あのなあ、毎朝大声で声かけるのやめろよな」
「いいじゃん!別に!」
「お前が良くても俺が気にするの。ほら、周りの目もあるしな」
「えーなにー?もしかしてつばさったら恥ずかしいの?照れてるの?」
奈緒がニヤニヤしながら言ってきた。
「うるせ、んなわけねーだろ、」
「...てか来週からテストだけど、お前勉強してんのか?お前、前回赤点取っただろ?」
そう、こいつは赤点を取ってしまうほど勉強が出来ないのだ。
見た目通りのアホなんだ。
「ん?なんの事かな?」
「目が泳いでるぞ...」
「実は、、全くしてません!」
てへっ!じゃねーよ(言ってない)
「はぁ、知ってたよ。しゃーない、可愛い可愛い幼なじみのためだもんな。...放課後家でいいな?」
まあ、いつも教えてるんだけどな!
こいつは真面目にすればそこそこ点数取れると思うんだがな、覚える気がないのか、
「何度もごめんねー。でもつばさも私と二人きりで勉強出来て嬉しいでしょー」
なんだこいつ、幸せなやつだな
...でもなんか俺がこいつに教えないとって言う気持ちがあるんだよな、使命感?的な?
「はいはい、俺が教えるんだから今度こそ赤点取るなよ?」
「うんもちろん!任せといて」
─どの口が言ってんだか。
いつもこの時だけはすごいやる気あるんだよなぁ、
「ほら、もうすぐ学校だぞー」
「二人で遅刻する?」
「バカ言ってんなよ」
「あはは、うそだよー。ほら、早く行こ。
...やっぱそうなるよね、(ボソ)」
─だが、そんないつもどうりの和やかで幸せな雰囲気は長くは続かなかった。
その時二人は交差点の横断歩道を渡っていた。しかし、その日は雨で地面が滑りやすい。
なんと右折してきた大型トラックがタイヤを滑らせて、話してる二人の元へ突っ込もうとしていた。
「ファァァァァァァァン!」
─大きなクラクション音が聞こえた。
それに気づく翼
「なお!危ない!!」
─ 翼は奈緒を助けようとして、奈緒を安全な所に、突き飛ばした。
「...え?」
─奈緒は驚いた表情で、何が起きようとしてるかを察したようにそう言った。
あ、これ死ぬやつ、
その瞬間、頭に浮かんだのは奈緒との思い出だった。
今までこいつが居てくれて楽しかったな
楽しくて幸せだった人生。
、!なんだ、これは、こんな記憶、全く覚えてないぞ、
─その楽しい記憶の中に一つ、翼には全く記憶のないものがあった。
しかしそんなことを考える余裕もなく、
「ドン!!」
─奈緒の目の前で
翼はその重く鈍い音とともに数十メートル先の壁まで吹き飛ばされた。
普通の人間なら間違いなく即死だ。
しかし、翼は奇跡と言っていいのかトラックから突き飛ばされたあと、辛うじて意識がある状態だった。
「つばさ!つばさ!しっかりしてよ!」
奈緒がボロボロに泣き、走って翼のそばに来て、そう叫んだ。
「そん...な泣く...なよ...可愛い...顔...がもっ...たい...ないぞ...」
「初めて可愛いって言ってくれたけど、こんな時に言わないでよ!」
「はは...これは助...からな...い...な」
見れば、翼は足が無くなっていた
もう死ぬ寸前の状態だった。
「そんなの無理だよ!私なんか助けるために、!嫌だよ、」
「私..なん..かなんて..言うん...じゃ…ねえよ...もっ..と自...分に..自..信...持て..」
「…悪い…お前に…勉...強教え...られ..そうに…ない…」
「いいよ!そんなの!それより早く救急車を!」
奈緒はそう言いながら、携帯を取り出す。
「もう...間に...合わ...ないよ...即死だ...悪い…もうお別…れみたい…だ…」
「俺が...居な...くて...も勉強…がんば…れよ…幸せに...な」
─翼は最後にそう言い、息を絶った。
死ぬ間際、あの知らない記憶の奈緒が頭によぎった気がした
「そん…な、...つばさ!つばさ!つばさぁぁぁ!」
─奈緒のその叫び声だけがその場に響いたという。