第95話 魔法陣起動
ロビンが来て、とにかく話を聞くことにした。
「ロビンの方はどうだったの?」
「どうっていってもなー…とにかく罠が多かった。あと、蜘蛛」
罠は私の方には無かったな。
「罠で蜘蛛…トラップ・スパイダー?」
「ああ。とんでもなく面倒くさかったぞ」
トラップ・スパイダーは魔物の1種で、デカい蜘蛛。
自分の糸を利用して罠を作る。
落とし穴や普通に巣を張っただけのものから、個体によっては罠スキルを持っていることもあり、転移の罠など厄介なものまで作る。かなり面倒な魔物。
「トラップ・スパイダーまでいるなんて…」
本来このダンジョンにはいない魔物だからね。
「こっちには罠は無かったわね」
「こっちも」
「そうだったのか。まぁそれはそれで良かったな」
まぁね。聞くとマリアも同じ感じだった。
まさかロビンだけが鬼畜だったなんてないよね?
「タイルの破片は?」
「最後の方に宝箱に入ってたな」
……なんで宝箱なんかに入ってるのよ。まぁスルーされるよりはマシかもしれないけど。逆に怪しく思うよ。でも意識操作されてる節があるしなぁ。
一体なにが目的なんだか。
「お。マリアにロビン。フィリアもいるじゃないか」
扉が開いて入ってきたのはドノバンさんだった。
「ああ。大丈夫だったか?」
「無論だ。まぁ少し手間取ったがな」
確かにドノバンさんは大盾使いだからね。戦うのが専門じゃない。一応バトルアックスを持ってはいるけど。
「ドノバンの方はなにがあったの?」
「それがなぁ。罠だらけだったんだよ」
ロビンと同じかな?
「トラップ・スパイダーはいた?」
「んにゃ。そもそも魔物が1匹もいなかったな」
あら?
「どういうこと?」
「とにかく四方八方から矢やらナイフやらが飛んできてな。それをずっと防いで進んできたんだ」
なるほど。大盾が活きるね。でも、なんかそれも仕組まれてる気がする。
上手くいき過ぎてる。相性とかね。
「タイルの破片はあった?」
「破片……あぁ。これか?」
やっぱりドノバンさんも持っていた。
「地面に落ちてたんだよ」
それを拾ってきたのね。もう確定かな。
マリアがドノバンさんからタイルの破片を受け取り、はめ込む。
「ピッタリ。あとは3人ね」
「なんだ?集めなきゃならんのか?」
「分からないのよ。でも、わざわざタイルを散らばらせる様なことしてあるんだから、何かありそうじゃない?」
「確かに…」
この部屋にはもうひとつ扉がある。でも、押しても開かなかった。
魔法で吹き飛ばそうかとも思ったけど、そもそも扉に魔法無効がかけられているらしく、壊せなかった。
私の攻撃ですら無効化したんだから、かなりのものだと分かる。この魔法を敵がかけたのだとしたら、だいぶやばいかもしれない。
「お、みんな集まっているのか」
「あら、本当ね」
次に入ってきたのはレビンさんとリーナ。あと残りはマルティエナさんか。
「大丈夫だった?」
「ああ。頭痛い」
「どうしたの?怪我でも……」
「いや、使い過ぎて頭が痛いんだ」
どういうこと?
「謎解きばっかだったんだよ」
……どこの密室ですか?それ。
レビンさんはここに来るまでずっと謎解きしていたらしい。
謎を解くと扉が開いて先に進める。そしてまた謎を解く。それの繰り返しだったそうだ。
私だったら無理だね。
ちなみにリーナは私たちと同じく、モンスターハウスだったらしい。風魔法で切り刻んだそうな。
……怖いよ。
「まぁ良かったんじゃない?戦闘苦手でしょう?」
「まぁな…」
やはりそうか。それぞれが死なない範囲の困難を用意している。まるで試すように。
私とマリア、リーナは戦闘力を。ロビンは罠解除の器用さを。ドノバンさんは防御を。レビンさんは頭脳を。それぞれ試されている。
…あれ。じゃあマルティエナさんは?
「マルティエナはまだね。それじゃあ2人ともタイルの破片は持ってる?」
「あるぞ」
「あるわ」
2人からマリアが破片を預かり、また欠けたところにはめる。
「あら?どういうことかしら?」
いきなりマリアがそう言った。私はマリアの元へと駆け寄る。
「どうしたの?」
「……これ。二人の分で埋まるわ」
「え?」
マリアの手元を見る。確かにピッタリと埋まる。全てが。だとしたらマルティエナさんの分は?
「マルティエナさんは…?」
「…有り得ないとは思うけど、まさか、ね…」
まさか…
「…やられた?」
「…まだそう決まった訳じゃないわ」
そらそうだ。勝手に殺したことにするのは、まだ早い。
「とりあえず、はめてみましょう。みんな、念の為魔法陣の上からどいてね」
私も敷物を片付ける。そしてロビンから貰った方の剣をだして、臨戦態勢になる。
「はめるわよ」
マリアが最後のタイルをはめ、直ぐに飛び退く。
すると、魔法陣が光を放ち始める。でも、そんな綺麗とか言える光じゃあない。禍々しい、あの地龍の時と同じ光。
「なんなのよ……これは」
私の横から言葉が聞こえる。マリアだ。
マリアは固唾を飲んでこの光景を見つめている。その他の人も同様だ。
そして、魔法陣の中央から、なにかがせりあがってきた。
……………それは、私がよく知るヒトだった。