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第91話 科学実験?いえ、戦略です

 私は狭い道へ入るや否や、翡翠を喚び出した。


「主、なんで私を人型で出したの?」

「今私は全員に結界を張ってる影響で、魔力が少しずつ減ってるの」


 そこまで辛くはない。だけど、自然回復する魔力が追いついていないせいで、確実に少しずつ減ってる。


「だから、魔法はあまり使いたくない」

「なるほど。じゃあ私が守ればいいの?」

「うん。でも、もちろん守ってくれるのは嬉しいけど、私も戦うから」

「分かった!」


 いい子です。とりあえず鉄刀と短刀を1本ずつ渡しておく。長い刀は狭い場所で取り回しにくいから、短刀を渡しておいた。私の装備も同じ。両方を同じほうの腰に帯剣する。

 魔力は……まだ大丈夫だね。

 翡翠には斥候として前にいてもらう。


「翡翠はライトなくても見える?」

「うん。大丈夫そう」


 じゃあライトは無くてもいいね。魔力眼を使えば、ある程度は見えるし。消費する魔力も少ないしね。

 これで準備が完了したから、先へと進んで行った。










 長い。だいぶ進んだはずだけど、全く終わりが見えない。


「長いね」

「うん……あ、ちょっと待って」


 翡翠が立ち止まった。先になにかあるみたいだけど、狭いから翡翠の体で見えない。


「多分…部屋?でも、なんか怪しい」


 どうやら部屋があるらしい。早速気配を探る……おうふ。


「ヤバいなぁ、これ…」

「なになに?」

「……モンスターハウス」


 あれですよ。狭い部屋に魔物がひしめき合ってるアレね。てかこっちでもそういうのかな?


「うーん?よく分からないけど、何となくわかる」


 あ、分かるのね。一応翡翠は私の力の一部を使えるから、それで気配を把握して、意味を理解したのかな。


「で、どうするの?」


 それなんだよねぇー。はぁ。進む道はここしかないし、行くしかないけど、正直倒せるか不安でしかない。だって……雑魚ではないんだもん。

 まずオーガでしょ?その上位種のオーガジェネラルにキング……やばすぎ!!


「…倒せそう?」

「うーん…微妙。狂い裂きを使っても…そこまでかな」


 まじか。うーん、どうする。


「……あ。ちょっと待って」


 魔力を薄く広げて部屋の構造を把握する。

 うん。いける。


「翡翠、前変わって」

「分かった」


 翡翠に前を代わってもらって、準備をする。魔法はあまり使いたくなかったけど、ここまでの数だったら仕方ない。


「えっと、魔力消費が少ないのは……結界だけど、時間が掛かることを考えれば、土壁かなぁ…」

「主、なんの事?」

「うん?ちょっとした実験」


 探った部屋の構造は、出入口が2つしかない。その2つの出入口を、同時に土壁で塞ぐ。


「ちょっと魔力キツいな…」


 アイテムボックスから、魔力ポーションを取り出して、グイッと飲む。


「にが!?」


 思わず吐きそうになった。なんというか…青臭い。苦い。訳分からん。


「大丈夫?」

「……うん。なんとか」


 これ何とか出来ないかな?…って、今はいいか。

 土壁に少し穴を開けて、火を起こす魔道具を何個か放りこむ。これは発火装置みたいなのだから、ついた火は、酸素を消費して燃える。装置そのものが燃焼材になるから、問題ない。後は穴を塞いで、念の為3重にしておけばOK!


「よし、できた」

「…どういうこと?」

「閉鎖された空間で火を炊き続けると、酸素が失われ、一酸化炭素が発生する。その一酸化炭素が充満すれば、一酸化炭素中毒になって、倒せる」


 一応ちゃんと説明したけど……翡翠の頭の上にはたくさんのハテナが浮かんでいるみたい。まぁ酸素とかいう区別が無いみたいだから、仕方ないかな。


「どれくらい待つの?」

「それは、私の祝福(ギフト)で」


 世界地図(ワールドマップ)で表示される赤い点が無くなれば、倒せたって事だよね。狭い部屋だから、そこまで時間はかからないはず。











 はい。最後の赤丸が消えました。これでいい…けど、ちょっとスグ開けるのは危険。バックドラフトするかもしれないから。


 バックドラフトっていうのは、室内など密閉された空間で火災が生じ不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に窓やドアを開くなどの行動をすると、熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進み爆発を引き起こす現象のこと。かなり危険。


 という訳で、向こう側の土壁を崩す。すると一瞬で部屋が燃え上がったのが、壁越しでも分かるくらいの熱気が襲ってきた。マジで熱い!


「熱い!主、大丈夫なの!?」

「大丈夫、大丈夫」


 熱とか分かるんだねーって思った。うん、現実逃避だよ。だって壁崩したらもう部屋がめちゃくちゃなんだもん。


「……凄いね」

「……うん」


 部屋は真っ黒焦げで、死体も全て灰になってしまっていた。まさかの魔石は無事。なんで?!


「魔石は硬いからね。普通は壊れないよ」


 ……その魔石を真っ二つに切断したことあるんだけど?あ、翡翠で切ったから?納得。

 とりあえず魔石を回収…


「アッツ!!」


 いや馬鹿でしたよ。そりゃ熱されたんだもんね。焼け石だよ。熱かったよ。

 とりあえず火傷したので、治癒魔法で治しておく。するとちょっとクラってきた。


「魔力は…あ、ギリだ」


 思ったより減ってた。どうやら結界が攻撃されてたみたい。

 結界は維持するのに魔力を使うけど、攻撃を受けてたらさらに消費することになるのよね。


「魔力ポーション…飲むか」


 しかも1本じゃだめだよね……




「…んんっ!!!」


 必死に苦味に耐えて、5本飲みました。部屋を転がりまくりました。もうしばらく飲みたくありません。


「主…ガンバ」


 翡翠が背中をさすってくれた。うん、優しい…


「この部屋でちょっと休憩していい?」

「うん。じゃあ私は見張りしておくね」


 翡翠が見張ってくれるそうなので、私は目を閉じて魔力回復に務めることにした。所謂瞑想。何とか無理ない範囲で回復しよっと。










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