第89話 ダンジョンの異変の理由
しっかりと睡眠をとって、元気一杯!マリア達はまだ休んでる。
「あら、起きたのね」
でもリーナだけ起きてた。多分見張りかな?
ここは一応魔物が入って来れないセーフティエリアになってるらしい。けど、今回は敵が魔物とは限らない。実際ローブ男来たし。だから見張ってるんだろうね。
「おはよう?」
今、朝なのかな?
「ふふっ。ええ、おはようで合ってるわ」
良かった。でも1日潜ってたことになるのか。案外時間かかってるね。
「ご飯にしましょうか。みんなを起こしてくれる?」
「うん」
ご飯っていっても、保存食なんだけどね。あれだよ、干し肉とか黒パンとか。あ、ガイさんがむっちゃ食べてたのも黒パンね。
「今日は10階層までいければいいな」
「そうね」
簡単な食事を食べながら、今日の予定を話している。
「………」
「………」
……となりでマリアが食べてるんだけど、無言。なんか余計話しかけずらい…
一応エルザは私が使徒だってことは直接明言してないらしい。だけど、多分気付いてるって。
……それはもう言ってるのと変わらないと思うんだけど?
「どうしたの?マリア。そんな顔して」
そんな気まずい空気を感じたのか、マルティエナがそう言った。
確かに今のマリアの顔は…うん。ちょっと怖い。
「あぁ…大丈夫、何でもないわ」
「そう?私に出来ることがあるなら言ってね?」
「…ええ。分かったわ」
一瞬マリアが私のことを見たような…
「よし。じゃあ行くぞ」
ロイさん達が出ていった扉とは違う扉を開ける。と言ってもとなりの扉なんだけどね。
扉を開けた先は、この部屋より少し暗い程度の洞窟。見えなくはないけど、ちょっと心もとない。
「これは…明かりがいるか?」
「そうね…フィリア、魔法で明るくできる?」
「う、うん」
いきなり話しかけられたから焦った。まぁこの中で1番魔力が多いのは多分、というか確実に私だから、適任ではあるけど。
とりあえず光属性の魔法、ライトを使う。小さな人口太陽みたいなの。
「よし。フィリアは辛くなったら言うんだぞ?」
「分かってる」
でもね、この魔法ほとんど魔力消費しないのよ。正直自然回復で事足りるのよね。
ドノバンを先頭に、先へ進む。気配察知は反応ない。
…不気味なくらいに。
「魔物が…いないな」
「1階層からオーガが出てきて、ここから厳しくなると思ったんだが……正直拍子抜けだな」
だけど油断は出来ない。
でも、何となく出てこない理由が分かる気がする。
「ねぇ、魔物の数や種類も管理してたの?」
「え、えぇ。確かそうよ。宝箱からドロップアイテムに至るまで全てね」
なるほど。……ちょっと嫌な予感がする。
「ドロップアイテムは出なかったよね?」
「ええ。全くね」
「宝箱もないよね?」
「……そう、ね」
これは…確定かも。
「それら全て、ダンジョンの力だよね?」
「ええ……まさか!」
マリアも気付いたみたい。
魔物やドロップアイテム、宝箱。それら全てがダンジョンの力によって管理されている。でも、魔物は5階層まで。ドロップアイテムと宝箱は1階層から出てきていない。
……つまり
「ダンジョンの力が…利用されてる?」
その可能性が高い。ダンジョンの力が盗まれてるような状態だから、ドロップアイテムも宝箱もない。魔物も5階層までしかいない。
「でも、何のために…?」
「分からない…でも、心当たりはある」
「え?……教えてくれる?」
「……確定ではないよ?」
「それでもいいわ」
正直気は乗らないんだけど……まぁ言わなきゃだよね。
私は今までのローブ男の行動、起こした事件の詳細をマリアだけに話した。これを話すってことは、私が何をしてたのかを話す必要がある。つまり、私が使徒だと言ってるようなものだから。まだ、話すのはマリアだけでいい。だから聞かれないように防音の結界を張っておいた。
「そんなことが……じゃあそのローブ男の目的のために、ダンジョンの力が使われてるの?」
「多分…それに、ハッキリとした目的は分からない」
今までの事件から考えるに、魔物を召喚するのが目的なのだとしたら…もしかしたら、ベル達は生贄?それとも魔力のバッテリーとして?
……どちらにしろ、あまりいい扱いとは言えないよね。
「……フィリアは、本当に使徒だったのね」
「うん……黙っててごめんなさい」
「いいのよ。そんなに話していい内容ではないし……でも、これであなたが何かとやらかす理由が分かった気がするわ」
うっ!それは言わないで…
「じゃあ今回、フィリアがここに来たのは使徒として?」
「ううん、それは違う。私の意思だよ」
「そう…」
なんでだろ?マリアの顔が少し嬉しそう。
でも、良かった……分かってはいたけど、やっぱり態度が変わってしまうんじゃないかって心配だった。考えすぎだったね…
「…ロビンには話さないほうがいい?」
「…うん。まだ」
マリアは不可抗力だとして、ロビンはまだ覚悟が…ていうか、言わなくても良くね?って思っちゃうんだけど。ダメかな?
ーうーん、それはお姉ちゃん次第だよ。別に言っても言わなくてもいいよー
そうだよね…うん。言わない。
『言わないんだ…』
だって言ったらなんかヤバそうなんだもん。マリアには転生についても話すつもりだったけど、さすがにそんなに一気には言えない。混乱するから、多分。
…………決して怖気付いたとか、そんなんじゃないからね!?