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第88話 降臨

 今の自分の顔なんて見たくもないので、ちゃっちゃと治癒魔法を掛けておく。


「ふぅ…で、どう始末しよう?」


 地龍を倒したのはいいんだけど…どう説明したらいいんだろ?


 ーマリアにはバレてるんだし、別にいいんじゃない?ー


 そのばらしたのは誰でしたかねぇ?


 ーいや、それは…不可抗力というか…ー


 …はぁ。とにかく、地龍の死体はこの青白い炎で燃やしちゃったほうかいいの?


 ーあぁ、聖火ね。うん、そうした方がいいと思うー


 この炎聖火って言うんだ…ま、それは置いといて、ひとまず燃やしちゃおう。


 魔剣の時と同じように翡翠刀を近付けて、その炎を移す。うわぁー、よく燃える。これ焦げない?


 ー普通の火じゃないから、大丈夫ー


 そうなんだ。まぁそれは前に見てるから、そうかなとは思ってたけど。


 しばらく燃え続けた地龍の死体は、ちょっとずつ小さくなっていった。多分見せかけの大きさだったんだろうね。

 しばらく経つと、炎はおさまって、ふたまわり以上小さくなった地龍の死体が現れた。


「ここまで小さくなっちゃった…」


 だけど、小さくなったからっていっても、どうやって説明したらいいのか分からないことに変わりはない。


 ーもういっその事バラしちゃえー


 それが出来たら苦労はしないよ…確かに、知ったからといって態度が変わるような人達ではないことは分かる。でも、それでも…


 ーうーん…あ、じゃあ降臨しようか?ー


 ……はい?降臨?


 ーそうそう。このダンジョンに降臨して、私が倒したことにしようか?ー


 それは…どうなの?さっきは来れないとか言ってたけど…


 ーうん。それはそこが禍々しい魔力に満ちてたからなんだ。今は原因倒してくれたことで薄くなってるし、第一燃やしてくれたことでかなり浄化されたから、数分ならいけるー


 そうなんだ…でも、すこし記憶が不自然になったりしない?


 ーそこはいじるー


 い、いじるんだ…まぁそれ以外方法はない、か。


 ーじゃあ起こすよー


 あ、待って。


 ひとまず翡翠刀をアイテムボックスへ。その後体についていた返り血なんかを魔法で消した。うん。これで大丈夫。


 ーはーい。とりあえずお姉ちゃんも眠った振りはしてねー


 分かってる。


 ーじゃ、解除!ー


 エルザの声とともに結界が解除され、転移される前の立ち位置へと戻って行った。私もロイさん達の方へ行って、そこで寝たフリをする。


「うぅん…?どうなったんだ?」


 まず起きたのはロビン。ここで私も起きちゃうか。


「おい!大丈夫か!」


 ロビンが周りの仲間を起こして回る。私もロイさん達を起こす。


「うお?」

「え?」

「あえ?」


 三者三様。まぁ体調に問題は無さそうだね。


 ー当然ー


 はいはい。とりあえずマリアを起こしに行く。


「うぅん…あれ?私…」

「ママ」


 ロイさん達に気付かれないよう背を向けて、声を潜めて呼びかける。


「フィリア…?」

「うん…後で話すね」


 私がそう言うと、一体なんの事か理解したらしい。


「分かったわ…後で、ね」

「マリア!大丈夫か!」


 ロビンが駆けてくる。


「大丈夫よ」

「そうか…にしてもどうしたんだ?いつの間にか地龍は倒れてるし…」


 エルザ、お願い。


 ーうん!ー


 元気な返事が聞こえ、地龍のすぐ脇に光が集まり出す。


「なんだ!?敵か!?」


 ロビンが臨戦態勢になる。マリアは私を見て、私が慌ててないことから敵でないと判断したらしく、落ち着いて光を見つめていた。


 《手荒な真似をして、申し訳ありません》


 いつものように頭に響くのではなく、耳に響く声。調子もちょっと違う。まさに神様って感じ。


 ーいやほんとに神様だしー


 はいはい。今は集中。


 ーうー…ー


 こんな状況でも話してくるってどうなのよ…


 《脅威は私が倒しました》


 淡々とエルザが説明していく。その姿は、かろうじて人の形だと認識できる程度。


「倒した…?お前は何者だ?」


 警戒しながらロビンが尋ねる。周りを見ると、ドノバンさんやリーナまで臨戦態勢になっていた。ロイさん達は唖然としてるって感じ。


 《私は女神エルザ。此度は世界の歪みを感じ、降りてきた》


 世界の歪み?そんなの聞いてないけど?


 ー後で話すからー


 あ、そうですか…


「世界の、歪み?まさか…このダンジョンがか?」


 《そうです。ですが、私はこれ以上ここにいることができません。あなたがたの力を頼りたいのです》


「それは…だが、ならば何故、ここに来てこれを倒した」


 ロビンが地龍の死体を指さした。


 《()()あなたがたでは倒せないものだったからです》


 今の、か。


「それなら、俺たちがこのダンジョンを戻すことは出来ないんじゃないのか?」


 確かにそうだね。


 《だから来たのです。あなたがたには祝福を与えます。どうか、この、世界を……》


 そう言いながらエルザの姿は薄くなり、そして見えなくなった。でも、祝福ってつまり加護?


 ー加護よりランクが低いものだよ。実力は十分あるからねー


 なるほどね。ロイさん達は?


 ー与えてないよ。だってそんなポンポンあげられるものじゃないもん。ついでに記憶は消しとくー


 あ、そうなんだ…って消しちゃうのね。


 ーだって言いふらされたらたまらないもんー


 確かに。


「…マリア、あれ信じるか?」

「それは…ええ」


 一瞬迷い、私を見てから答えた。私が根拠?


「そうか…とにかく、やるしかないか」

「だな」

「そうね。でもまずは生徒を帰さないとね」


 そうだった。いつの間にか部屋の奥には開いた扉が現れていた。おそらく、そこが転移の魔法門がある部屋だね。実際光を放つ門が見えるから。


「そうだな。お前たちだけで帰れるか?」

「あ、は、はい!もちろんです。ありがとうございました」

「「ありがとうございました」」


 ロイさん達は最後に私に手を振って、部屋に入っていく。その奥にあった転移門をくぐり、一瞬だけ光に包まれ、次の瞬間には消えていた。ちょっとだけ仕様が違うのかな。


「さてと。フィリア、これを仕舞える?」

「うん。大丈夫」


 地龍の死体をアイテムボックスに収納する。


「ここで休むか。一応セーフティエリアだからな」


 確かにちょっと疲れた。


「そうね。フィリアはもう寝ちゃいなさい。()()()、でしょ?」

「うん…分かった」


 ではお言葉に甘えて…


「ガルマ」

『なんだ?』

「また枕になって」

『…またか』


 そう言いながらもちゃんと枕になってくれた。気持ちいい…

 もふもふに埋もれ、私は意識をそのまま手放した。





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