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第71話 見つかっちゃいました

 魔物の大軍に突っ込んでから、どれくらい経っただろうか?


「ああ!もう!」


 さっきから魔物を手当り次第に切り刻んでいるが、一向に減った気がしない。


 グギギィ!!


「うっさい!」


 半ばヤケになりつつ、ゴブリンの首をはねる。


「どんだけいんのよ!」


 魔法で殲滅するという方法はあるけど、以前森を破壊したばかりだしね…しかも近くにはリーナもいる。迂闊には使えない。


「刀術・二刀・血風独楽(けっぷうごま)!」


 一体一体斬るのが面倒になったので、独楽のように回って切り刻む武闘スキルを使う。どんどん斬れていくのはいいけど…このスキル、一つ欠点がある。


「ぬぉ〜!め、目が回る―…」


 そう。この武闘スキルには、目が回るという欠点があるんだよねぇ…


「む、無理!」


 しばらく頑張ってみたけど、すぐに限界に達し、強制的に武闘スキルを終了させた。もっとも、この武闘スキルは、止めなければずっと回ってしまうんだけどね。


「こ、これで…」


 グギィ!!


「まだいた!?」


 少しめまいを覚えながら、襲ってきたゴブリンを斬る。どうやら武闘スキルで餌食になったのは、オークなどの図体がでかい魔物がほとんどのようだね。


「げ!?リーナが近づいてきてる!?」


 何時でもリーナの位置を確認出来るように、ずっと世界地図(ワールドマップ)を使っていたんだけど、どうやらこっちに向かってきているみたい。


「一旦離脱!」


 光学迷彩と空歩を使って、一旦その場から逃げる。


「なんでこんなに魔物がいるのよ!」


 そんなことを言いながら、リーナが魔法で魔物を吹き飛ばしていく。うわぁ…えげつない。


「あら?ここだけ魔物が…」


 あ、回収しとけばよかった。


「これ、剣で斬られてる…さっきまで誰かが戦っていた?でも、だとしたらどこへ?」


 リーナはそう言って、周りを見渡した。そして何かを見つけたらしく、魔物の死体を避けながら足を進め始めた。


 リーナが立ち止まったのは、ローブ男の死体の所だった。そこにかがみ込むと、リーナは、おもむろにローブを拾い上げた。


「このローブ…確かベルちゃんが誘拐された所にも残ってたわね…」


 男が着ていたのは黒色のローブ。ベルが誘拐された所にいた奴らのローブも、黒色だった。でも、ギルディア魔国で見た奴らが着ていたのは茶色いローブ。組織が他にあるのか、はたまた階級みたいなものなのか…それも調査しないとね。


 リーナは男のローブを回収し、ついでにその近くに落ちていた神器の破片も回収した。

 本来なら、この破片も私が回収しなくちゃいけないんだけど…今更姿を現す訳にもいかないしね。まぁ悪用はしないだろう。そもそも使い物にすらならない。神が創りし物だからね。


「まったく…破壊された森の調査に来たら、魔物の大軍に遭遇するし…ついてないわね」


 そんなことを吹きながら、リーナは辺りの調査を始めてしまった。うーん、どうしよう?


『とりあえず目的は達成…だと思うから、別にいいんじゃない?』


 目的は神器の回収だったけど…その神器は壊れちゃったし、その破片もリーナが回収しちゃってるし。もういいかな?

 そう思って空歩で去ろうとすると、リーナと()()()()()


「さて、じゃあ話して貰おうかしら?()()()()()()()?」

「…っ!」


 あらぁー?バレちゃった。なんで!?


「どうやって姿を消してるのかは分からないけど、気配で丸わかりよ」


 あ。慌てすぎてて気配隠蔽すんの忘れてた…光学迷彩は姿を消すだけのスキルだからね…


「(はぁ…)」


 私はもう逃げられないと思って、地面に降りつつ、光学迷彩を解除した。


「さぁ、話して貰えるかしら?」

「うっ!…なにを話せばいい?」


 まぁどこまで話すかは私が決めるけどね。


「そうね…まずはなんでここにいるのかかしら?」


 うーん…その質問は当然くるとは思ってたけど…答えにくい…


「言えない理由があるの?」


 どうやって言おうかと考えていると、リーナが助け舟を出してくれた。


「…うん」

「それは私にも言えない?」

「それは…」


 リーナを信用していない訳じゃない。でも、それでも簡単に言えることでは無い。


「…まぁいいわ。誰にだって一つや二つ隠し事があるもの」


 なんか前にもそんなことを言われた気がする…


「…ありがと」

「いいのよ。でも、これだけは教えて欲しい。この魔物はフィリアちゃんが倒したの?」

「うん。そうだよ」

「そう…この魔物がどこから来たのかは知ってる?」


 なんか誘導尋問みたいになってる…


「…知ってる。けど…」

「言えないのね?」


 私は静かに頷いた。


「じゃあ質問を変えるわ。この魔物たちは、()()が関係しているの?」


 そう言って男の死体を指さした。


「まぁ原因というか…元凶というか?」


 元はと言えば、神器を落としたどっかの駄女神が原因だし。


 ー駄女神って?!ー


 うるさい。文句はミスを無くしてから言うんだね。


 ーうっ!…ー


 まったく…


「ということは、これは魔物に殺されたの?」

「ううん。私がやった」

「え!?フィリアちゃんが?!」


 そこまで驚くことだろうか?まぁ人一人を殺してる訳ではあるけど、この世界では命は軽いから、そこまで気にすることではないと思うけど…


「どうして殺したの?生きてたら情報が手に入ったかもしれないのに…」


 あ、なるほど。生きてたら尋問することが出来たのにってことか。


「私も殺したくは無かった。でも、あまりにも魔物が増えすぎて、躊躇してられなかった」


 今更だけど、もし気絶させたとしても、魔物がローブ男を襲わないとは限らなかったしね。


「そうなの…とにかくオ・ハ・ナ・シは後で聞くわね?」

「は、はい…」


 有無を言わせない笑顔…このリーナの笑顔はいつも苦手だ。


「ひとまず手伝ってくれる?この魔物達をどうにかしないと」

「分かった」


 リーナと協力して、魔物の死体を集めていく。乱切りにしたので、オークなんかは買い取って貰えないだろうし、ゴブリンと一緒に燃やすことにした。魔物を詳しく見ていくと、魔石まで斬っちゃってた…素材が欲しいときは、あの武闘スキルは使わないほうがいいね。無事な魔石も集めておく。


 リーナが魔法で穴を作り、その中に魔物を入れていく。でも、入り切らなかった。


「これはもうひとつ穴がいるかしら?」


 結局、穴は合計10個作った。火魔法で燃やしていく。


「これでいいかしらね。じゃあ帰りましょうか」

「うん」


 もう辺りは明るくなり始めていた。また寝不足だ…


「あ、そうそう。今日は学園に行かなくていいわよ」

「え!?なんで?」

「今日の話をしてもらわないとね?」


 ま、まさか丸一日聞かれるの?それとも説教?


 …どちらにしろ地獄だ。


「じゃあ転移で帰るわよ。ほら、手を繋いで」

「はーい…」


 私はリーナと手を繋いで、屋敷へと転移した。









 …………もう寝たい。









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