第70話 緊急事態発生
ブックマークが200件を超しました!ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします。
「さってと、行きますか」
空歩と光学迷彩を使い、夜の闇の中へと溶け込む。そして身体強化で一気に森へ向かう。
転移魔法は行ったことある場所だから使えるんだけど、もしかしたら転移先にリーナがいるかもしれないから使えない。
「世界地図、リーナの位置を表示」
そう吹くと、世界地図に1つのマーカーが表示される。これは世界地図の機能の1つ。味方は青、敵は赤、どちらでもないは黄色のマーカーで表示される。欠点としては、1部の視界が塞がってしまうことと、詳しくは表示されないこと。ただ、位置と名前が分かるだけでも有難いけどどね。
「うーん…やっぱり森にいるか…」
リーナのマーカーはちょうど森の真ん中にあった。
「なんとかバレないようにしないと…」
できる限り、リーナのいる森を迂回するルートを通る。今回の目的地はリーナのいる森の奥なので、かなり遠回りになってしまうけど、仕方ない。
ーおね〜ちゃーん!ちょっと緊急事態!ー
あの、まさかとは思うけど…
ーうん、そのまさかだよ。盗られちゃったー
「はぁ!?」
ーご、ごめんー
はぁ…まぁ盗られたなら取り返せばいいけど…その神器の機能は?
ーえっとね、【万物の水鏡】っていう神器で、あらゆる生き物を出すことができる神器なのー
むっちゃヤバイやつじゃん?!早く教えてよ!
ーだ、大丈夫だって!神器は認められた人しか本来の力を引き出せないから!ー
それって引き出せなくても使えるってことでしょ?
ーそれは…まぁそうだけど…でも、ドラゴンとかは出せないから大丈夫!ー
どこが!?
ーじゃ、じゃあよろしく!ー
「まったく…これはバレるとか言ってらんないね」
仕方ないので、一直線に目的地へ向かう。スピードが出るため、光学迷彩はほとんど意味をなさなくなってしまうけど、仕方ない。
「あ、フード買っとけば良かった」
前はフードがあったんだけど、この前の騒動で破けちゃったんだよね。光学迷彩あるから大丈夫だと思ってたけど、これは問題かもしれない。宵闇に私の髪色は目立ちすぎる。
「あれ使うか…闇の繭」
本来この魔法は、暗闇に相手を閉じ込めるための魔法。結界の応用だね。だから中からは、外の様子が見えない。なので世界地図の情報だけを頼りに進んでいく。
「ここらへんかな?」
しばらく進み、ピンの近くまで来たので、闇の繭を解除する。
「う、うわぁ…」
世界地図では分かってたんだけど…
「これ、多すぎじゃない?」
眼下に広がるのは、魔物の大軍。その大半がゴブリンやオークなんだけど…さすがに多すぎる。ゆうに1000…いや、2000はいるかもしれない。
「確かに弱い魔物ばっかりだけど…」
多すぎるわ!これならドラゴン一体だけの方がまだマシだわ!
「とにかく元凶を…いた」
魔物に埋もれて分かりずらかったけど、確かにいた。そこから魔物が湧き出ている。しかも…
「また、あのローブ…」
神器らしき物を使っていたのは、何度も見たことがあるローブを着たやつだった。遠目からしか分からないけど、恐らく男。
「許さない…!」
私はアイテムボックスから翡翠刀を取り出し、一気にその場所まで駆け出した。
「ふははははっ!これはっ、これは凄いぞ!」
そんなことを言いながら、ローブ男はどんどん水鏡から魔物を出していく。
「させないっ!」
私は空中から男に斬りかかった。だけど、周りにいた魔物に邪魔をされてしまった。
「なっ!誰だ!」
「誰が名乗るもんですか!すぐに止めなさい!」
「ふっ!そんなことを言って止める訳ないだろ!いけっ!お前ら!」
ローブ男の言葉に反応するかのように、魔物が私に襲いかかってきた。
「くっ!」
私は一旦空歩を使って、空中に戻った。男の周りには、集まった多くの魔物がひしめき合っていた。ここまで密集されると、幻想乱舞が使えない。
「なら…」
私はローブ男から少し離れた場所に降り立ち、アイテムボックスからもう一本の刀を取り出した。
「刀術・二刀・多重戦・狂い裂き・乱!」
これは名前からも分かるように、狂ったように周りを滅茶苦茶に切り刻む武闘スキル。仲間がいると危険過ぎて使えないけど、周りに敵しかいないなら、これほど役に立つものはない。ただ、これはその場で留まって切り刻むだけなので、動く必要がある。だから、そのための武闘スキルを同時に使用する。
「体術・水龍舞!」
これは体術の武闘スキル。武闘スキルは武器だけにあるのではない。体を使う全てのスキルにあるらしい。
このスキルの名前にあるりゅうとは、龍と流の2つの意味がある。まるで水が流れるように滑らかに、うねる龍の如く動くだけのスキル。他の武闘スキルと併用するためだけのスキルだ。
グキャギャ!!
首を狙って斬っている訳ではないため、大量の返り血を浴びる。だけれども、私は足を止めない。これ以上増やされる前に終わらせる!
「くっ!何なんだよ!お前は!」
ローブ男が焦って魔物を集める。だが、それは悪手だ。
グギィ!!
ギャギャ!!
密集すればするほど、味方に攻撃が当たりやすくなり、攻撃もしづらくなる。それに対して私は、何処を斬っても敵に当たる。狂い裂きの本領発揮だ。
「くそっ!くそっ!」
ローブ男は、水鏡からどんどん魔物を出す。けれど、もう既に周りには大量の魔物がいる。なので魔物は折り重なり、身動きが取れなくなる。
「なんでっ!」
「もう、終わりだよ」
「なっ!」
この状況で、手加減できる訳がない。私はローブ男の首を一太刀で切断した。
「これで…」
終わる。
…そう思ったのに、
「水鏡からまだ魔物がでてくるっ!?」
これって神器の暴走?
『主!私で水鏡を斬って!』
「分かった!」
考えてる暇はない!私は迷いなく、翡翠刀を水鏡に振り下ろした。
バリンッ!!
「壊れた…これでいいの?」
『うん。もうその神器は止められなかったから』
「そう…だけど、壊したからって魔物は消えないのね…」
まだまだ周りには大量の魔物がいる。どうやら水鏡から出された魔物はそのまま残ってしまうらしい。これを全部倒すのは骨折り仕事だなぁ…
「…やるっきゃないよね」
私は二本の刀を握り直し、魔物の大軍へと突っ込んだ。