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第68話 模擬戦パート2

 次の日、いつものように授業を終え、いざ!ダンジョンへ!

 …って、思ってたんだけど…


「フィリアさん!今日こそ勝つ!」

「え〜…」


 ミシャちゃんに模擬戦を挑まれました。最近落ち着いてたんだけどなぁ〜…。まぁそれには理由があったんだけどね。その理由がちょっとあれだったけど…それは私の責任でもあるしなぁ…


「フィリアさん、こればかりは仕方ありませんわ」

「フィリアちゃん、頑張って!」


 2人とも、ミシャちゃんを止める気はないらしい。なんで?


「先にダンジョンに入っていますわね!」

「またねー!」

「あ!ちょっと!」


 走り出した2人を追いかけようとしたら、ミシャちゃんに肩を掴まれた。


「フィリアさん!いくよ!」

「え、まだやるって…はい!やらせていただきます!」


 私が断ろうとしたら、肩を掴む力が強くなった。笑ってるけど、目が笑ってない、よくリーナがしている顔をより怖くしたような…そんな顔までされて、断れるわけが無いよねぇ…


 ミシャちゃん、恐ろしい子!


 渋々ミシャちゃんとともに闘技場へ向かう。


「闘技場は先生に許可取ってるからね」


 またしても用意周到だね…


 闘技場に着くと、そこには誰もいなかった。


「貸し切ったからね」


 そこまでする?!いやまぁ他に人がいたら危険だけどね?


「じゃあやるよ!」


 その瞬間、風の刃が飛んできた。


「ぬぉ?!」


 あまりにいきなりすぎて、魔法破壊(マジックブレイク)を使う暇も無かったので、転がってかわした。


「無詠唱…」

「そうよ!どう?フィリアさん!」


 無詠唱は祝福(ギフト)だけで貰えるスキルではない。だけど、習得することはとても難しい。それだけミシャちゃんは努力したんだろうねぇ…


「まだまだいくよ!」


 無詠唱のせいで、なんの魔法がくるか分からない。


「…っ!下か!」


 急いでその場から飛び退く。すると、今まで立っていた場所からアースニードルが突き出してきた。怖?!


「よく分かったね…」

「魔力眼があるからね」


 魔法は直接見ることは出来ない。だけれど、魔力眼を使えば、魔力の()()が分かる。その流れを正確に読み解けば、どこで、どんな魔法を使うのかが分かるのだ。もっとも、そんな使い方が出来るのは私ぐらいだろうけど。


 無詠唱で放たれる魔法を次々とかわしていく。


「なんで…!あたら…ない…の!」


 ミシャちゃんはもう息が絶え絶えだ。


「じゃあそろそろやろうかな」


 私は()()()で魔法を行使した。先を丸くして殺傷能力を低めたアイスニードルだ。


「な!?」


 疲労困憊のミシャちゃんはもちろんかわすことが出来ず、私のアイスニードルをもろに受けた。


「がはっ!」


 先を丸めていたので、致命傷とは判断されなかったらしく、ペンダントは機能しなかった。


「大丈夫?」


 私はミシャちゃんに駆け寄った。


「どう…して…」

「うん?」

「どうして勝てないのよ!努力だってしてるのに!無詠唱もできるようになったのに!どうして…なんで!」


 そう言ってミシャちゃんは泣き崩れてしまった。

 どうして、か…


「それは分からないよ…でも、その努力は無駄にはならない」

「どうしてそんなことが言えるのよ!私はあなたに勝てなかった!結果…無駄だったのよ!」

「…ミシャちゃんはもうちょっと周りを見た方がいいんじゃないかな」




「周りを…見る?」

「そう。確かにミシャちゃんは私に勝てなかった。だけどね?ミシャちゃんは私以外に負けたことある?」

「…ない」


 そう、ミシャちゃんは授業の模擬戦でも、私以外に負けたことがないのだ。あのキャサリンにさえ勝ってしまった。


「ならそれは、ミシャちゃんが頑張ったからだよ」

「頑張った…..」

「つまり努力だよ。それでも無駄だったって言える?」

「…」

「私はミシャちゃんの努力を知っている。そして、それは周りの人も同じだよ」

「…」

「努力することに、無駄なんてないんだよ。その方向さえ間違わなければね」

「…そっか。私は方向を間違ったんだ…」


 そう、ミシャちゃんは努力の方向を間違った。どんな手段を使っても、私に勝つことだけを考えていた。


「前からミシャちゃんは頑張ってたでしょ?その頑張りは無駄じゃないよ。でも、あれは…もうやめたほうがいい」

「…っ!知ってたの…?」


 ミシャちゃんが最近やっていたのは、何日も死なないダンジョンに入り込み、無理やり特訓すること。確かに、それでミシャちゃんは強くなった。だけど、それは所詮、付け焼き刃でしかない。結果として、それは消えてしまう。だけれど、その他の努力、つまり、今までちゃんと頑張ってきたことは消えない。


「当たり前じゃない。毎日模擬戦を挑んできたのに、突然挑まなくなったんだから。なにかあるって思うでしょ?」

「…そのとき止めてくれれば良かったのに」

「そのとき止めたとしても、ミシャちゃんは聞く耳を持たなかったでしょ?」

「うっ!…それは確かに…」


 模擬戦で負けて冷静になれれば、やっと聞く耳を持ってくれると思ったからね。だからそのとき、私はミシャちゃんを止めなかった。


「無詠唱も一時的なものじゃない?」

「…うん。そう」


 無詠唱は、確かに努力をすれば取れるスキル。だけど、一時的に無詠唱のスキルを得ることができる薬が存在する。でも…


「うっ!ぐぅっ!?」

「やっぱり…」


 その薬は副作用が凄まじいのだ。無詠唱をできるようになる代償として、体に激痛が走る。それは精神的な痛み。どれだけ痛みに慣れていたとしても、とても耐えられない痛み。


「まったく…」


 私はミシャちゃんに治癒魔法をかける。普通の治癒魔法なら、外傷しか治せない。けれど、私が使ったのは高位の治癒魔法。部位欠損さえ治せるほどの魔法だ。そして精神的な痛みにも作用する。


「い、痛みが…」

「治したよ」


 この痛みは闘技場から出たとしても消えないからね。


「治したって…そんなこと」

「細かいことは気にしないの。ほら、立って」


 ミシャちゃんの手を引っ張り、立ち上がらせる。


「…そういえば、フィリアさん無詠唱…」

「あ」


 そう言えば隠してたんだっけ…まぁ今更だよね。


「もしかして…祝福(ギフト)?」

「…うん、そう。内緒だよ?」

「…分かった」


 …内緒にする理由は、リーナに怒られたくなかったからだったり…


 闘技場から出ると、外でキャサリンたちが待っていた。


「あれ?どうしたの?」

「遅すぎるのですわ!もう夕暮れですわよ!」


 そう言われて初めて、空がオレンジ色になっていることに気がついた。


「そんなにたってたのか…じゃあまた明日だね」

「まったく…明日はちゃんと来てくださいね?」


 いや、それはミシャちゃんに言って欲しい…


 その後私はミシャちゃん、キャサリンと別れ、ベルとともに屋敷に帰った。


















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