第66話 その後、そして明日について
章の名前については、その後変更する可能性大です...
さてさて。私たちは13歳になりました。
え?またいきなりすぎだって?うーん…確かにそうなんだけど、やっぱりなんもなかったんだよねぇ。あったとすればミシャちゃんとの模擬戦…あと、アッシュの洗礼をしたことかな。
アッシュの洗礼は、なんか凄かったらしい。なんでらしいなのかっていうと、私は行けなかったから。え?説明出来てない?
…まぁ色々と、ね?私の仕事がなんか増えちゃってね…ほんと勘弁して欲しいよ…っと、話が逸れたね。アッシュの洗礼のどこが凄かったのかというと、教会にあるエルザの像が光ったらしい。そんなこと今までなかったらしくて、物凄い騒ぎになったんだって。
エルザに聞いたら、
「だってお姉ちゃんの弟だし!」
と、訳分からんことを言われた。どうやら加護を与えたらしい。そんなことしなくて良かったのにね。余計アッシュと関係が拗れそうだし。
…あと、教会にあるエルザの像は、とても美化されているとだけ伝えておこう。
アッシュのステータスなんだけど、やっぱり勇者があったらしい。勇者っていうのは、言わば成長が促進されるような特典。だから、アッシュのステータスはまだ弱い。それでも並の人より高いらしいけどね。
5歳になってから本格的に特訓をしたそうで、かなり上がっているみたい。
アッシュは6歳違いだから、今7歳。だけど、学園には来てない。と言うより来れないらしい。勇者と聖女の子供、さらに勇者であることも知られてるせいで一躍有名人になってしまい、王都に来ることができないそうだ。だから村で勉強をしている。友達いるかなぁ…
弟であるアッシュのことがとても心配ではあるのだけれど、マリアから来ない方がいいかもと言われてしまった。理由はやっぱり私の事を姉だと信じてないから。
私が本当の姉だと言えるまで、あと3年かぁ…長いなぁ。まぁ光学迷彩と気配隠蔽でこっそり会うことはできるだろうけど、どうせならしっかりと会いたいしね。なので私は学園の卒業までアッシュとは会わないことにした。悲しい…
「フィリアさん?!聞いてます?!」
「あ、うん」
なんでアッシュの話をしたのかというと、今まさにキャサリンからその話聞いていたから。キャサリンって六大英雄のファンらしい。
…しかも熱烈な。
「あぁ!マリア様とロビン様の間に産まれたアッシュ様…1度でいいから会ってみたいですわ!」
…うん。私、これほどまでに死んだことにされてよかったと思ったことはないと思う。ほんとに助かった…
「フィリアさん?!」
「聞いてるって」
もう耳にタコが出来るぐらい聞いたよ…
「それより、明日からのこと話さない?」
「あ、それもそうですわね」
明日からのこと。それはこの学園にあるダンジョンのこと。明日から入れるようになる。だから明日入るか入らないか話し合おうという訳だ。なので今はキャサリンの屋敷に来ている。ちなみに、もう顔パスで入れちゃったりする。
「とりあえず、偵察も兼ねて入ってみてはどうでしょう?」
「偵察かぁ…」
学園にあるダンジョンはとても広いらしく、最奥まで行くには時間がかかるらしい。それに情報もない。どこにどんな魔物がでるかとか、罠はあるのかとか、そんなことが一切分からない。だから、偵察は必要だとは思う。
「うん、それでいいかな」
「決まりですわね」
ダンジョンに入るのは、別にグループでなくてもいい。でも、グループでもいい。とにかく卒業までに最奥にたどり着ければ、それでいいらしい。
「そうなると色々と準備しなきゃね」
死なないということだけど、それは攻撃で怪我を負った場合のみ。だから、餓死とかそういうのは対象外らしい。だから食料とかも必要だし、治癒魔法が妨害されるらしいので、ポーションなんかも必要だね。
「ではそれぞれが必要な物を持ってこればいいのでは?」
「うーん…それだとベルがね…」
キャサリンは、収納魔法が使えるから荷物には困らないだろうけど、ベルは使えないしね…ちなみに、ベルは今依頼を受けている。あの依頼から、私がいなかったとしても大丈夫なように頑張っているみたい。わたし的には、頑張りすぎな気もするけどね。
「荷物のことですか?」
「そう…どうにかなるかな?」
「うーん…それでしたら、マジックポーチなどを用意してはどうです?」
「マジックポーチ?」
なんだそれ?
「マジックポーチとは、空間魔法で容量を拡張したものですわ。学園で使っているバッグを小さくして、より使いやすくしたような物ですわ」
へー!そう言えば学園のバッグってそんな感じだったね。全然使わないから忘れてたよ。確かに学園のバッグはちょっと大きめだし、ポーチみたいなサイズのほうが使いやすいかな。
「それ売ってるの?」
「売ってはいますが…容量が大きいほど高くなりますし、それなりに貴重なものです。なのでそう簡単には見つからないかと…」
まじかぁ〜…いい解決策だと思ったんだけどなぁ…
「…あ、それって作れるの?」
手に入らないなら、作ればいいじゃない!
「…まさか作る気ですか?」
なんかありえないみたいな反応されたけど…そんな難しいのかな?
「難しいの?」
「難しいというか…作り方が分からないのです」
…うん?
「どうして?」
あるってことは作ることができるってことだよね?
「もともとマジックポーチの制作方法は国の極秘機密とされているのです。なので作ることが出来るのは国から認められた職人のみなのです」
は?!
「なんで機密なの?」
「想像してください。大量のマジックポーチが生産され、それが軍事利用されたら…」
「あ…」
大量の物資を運ぶことができる…それは戦争でもっとも重要視されること。戦争は消耗戦だ。この世界ならば矢やポーション、食料などだろうか?それを大量に運ぶことができるマジックポーチは、まさに脅威となる。
「そっかぁー…」
作る方法が分からない…なら作れないよね。
「まぁこちらでもマジックポーチは探してみますわ」
「うん。ありがとね」
「友達なのですから当然ですわ」
キャサリンはそう言って静かに微笑んだ。ありがたや〜
「…なぜ手を合わせているのです?」
「いや、なんとなく」
思わず拝んでしまった。
「では、また明日ですわね」
「そうだね。また明日」
そう言って私は、キャサリンの屋敷を後にした。
『ねぇねぇ、主?』
うん?どうしたの?
『主、検索っていう祝福持ってたよね?』
持ってるけど…それが?
『それでマジックポーチの作り方調べたらいいんじゃない?』
「あ!」
そうだよ!検索すればいいんじゃん!
早速検索…うん、出てきたけど…
「…もうちょっと性能低いのの作り方ないかなぁ」
出てきたのは、時間停止、容量ほぼ無限のマジックポーチの作り方だった。さすがにこれは…
『まぁ悪いよりましなんじゃない?』
いやまぁそうだけど…
「…まぁ、ベル最近頑張ってるしね。ご褒美だと思えばいい…かなぁ?」
とりあえず、作るためには普通のポーチが必要そうなので、まだ保留かな。
私は屋敷に帰ると、明日の用意を済ませた。ポーションとかは買っておいたからね。でも治癒魔法の妨害ってどういうことなんだろ?
「ま、明日になったら分かるか」
ご飯を食べ、そのときベルに明日の予定を伝えた。マジックポーチに関しては秘密にした。なんか驚かせたいし?
その後お風呂に入ってベッドに潜り込むと、私は意識を手放した。