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第58話 食堂でのお話

 目を開けると、そこは見た事のある景色が広がっていた。


「…ここは?」

「ここはシュラーク学園よ」


 ほんとにきちゃったよ…


「で?伝手っていうのはなに?」


 おっと、目的を忘れるところだった。


「あのね、いっぷく亭って店知ってる?」

「あー、なんか最近人気の店ね」


 あ、知ってたんだ。


「そこにまずは行きたいの」

「分かったわ。えっと確かこっちよ」


 リーナに手を引かれて学園を後にする。なんか昨日までいたのに久しぶりな感じがするなぁ…


「着いたわよ」


 どうやら着いたらしい。そんなに歩いてないけどなぁ…ま、いっか。

 お店はちょうどお昼時なのか混み始めていた。


「混んでるけど…どうするの?」

「うーん…とりあえず入ろ?お腹空いたし」

「それが目的じゃないわよね?」

「もちろん」


 リーナを説得して、お店に入る。予想通り席はだいぶ埋まっていた。


「いらっしゃいませー!」


 あ、オグリさんだ。さすがに今はまずいかな。とりあえず2人席に座って、注文をする。


「私は日替わり定食にする。リーナは?」

「私も同じでいいわ」


 という訳で注文する。オグリさんじゃなかったけど、まぁ大丈夫。


「ちょっとトイレ行ってくる」


 そう言って私は席を離れ、少し気配を隠蔽してオグリさんに近づく。


「あのぉー…オグリさん」

「うん?あ、フィリアちゃん。どうしたんだい?」

「ユーリに会いたいんですけど…」

「今かい?」

「はい」


 そう言うとオグリさんはすこし考える仕草をした。


「うーん…ここじゃまずいから、前の部屋に行っといてくれる?すぐ呼ぶから」

「分かりました」


 私は言われた通り2階の前来た部屋に向かった。ソファに座って、5分もしない内にドアが開いて、ユーリが入ってきた。


「おまたせ!ごめんね、いま立て込んでて」

「ううん、こっちこそごめんね、忙しいのに」

「全然大丈夫…とは言い難いから、とりあえず話してくれる?」

「分かった」


 私は自分が魔力内包症であること、治すには王宮の魔道具…神器を使わないといけないことを話した。


「うーん…」

「無理…かな?」

「いや、無理じゃないと思う」


 じゃあなんで悩んでるんだろうか?


「…実はね、その神器を使わないといけない事情が出てきてね?今魔力を込めてるところなの」


 なるほど…つまりもうだいぶ溜まってしまっているわけか。


「でも、その事情ってなに?」

「なんか、森の一部が吹き飛んでて、その修復のためだって」


 …それって私がやったやつじゃない?


「…その森って?」

「確かここから北東にある森だよ」


 まじかぁ…ビンゴだわ。


「…ごめん」

「うん?なんで謝るの?」

「その森…直接的には私じゃないんだけど、間接的には私がやっちゃったんだよね」

「え?!」


 うん、驚くよね、普通。


「なんで?いや、ちょっと、え?」


 混乱してるねぇ…


「ていうか、その神器の効果って?」

「あ、それはね、農作物…つまり、植物の成長促進の効果だよ」


 だから森の修復か。


「で、その神器使えるかな?」

「うーん…いま溜めてるとこだし、使い終わったら込められると思う」

「どれくらいかかる?」

「一週間かな」


 長くない?!


「それ、私も手伝えないかな?」

「あ!そっか、別に空っぽじゃなくてもいいもんね…うん!聞いてみるね」

「ありがとう!返事はどれくらいかかる?」

「すぐだよ?」


 すぐ?!


「え、どういうこと?」

「念話だよ?親子ならかなり遠くても使えるの」


 あ、念話か…すっかりそんなもんあるって忘れてたよ。ていうか親子でそういう効果があったんだね。


「あ、きた。大丈夫だって」

「ほんと?!ありがとう!」

「どういたしまして。あ、私も一緒に行くね」

「分かった。何時がいいかな?」

「ひとまず、いまの混み具合が解消してからかな」


 となると、お昼すぎくらいかな?


「じゃあそれくらいになったらまたくるね」

「別にそれまでいていいよ?」


 いやいや…


「お店に迷惑でしょ?」

「大丈夫だって!オーナーである私が言うんだから!」


 わー、強引。ま、そっちの方が有難いかな?


「分かった。じゃあ下で食べて待ってる」

「うん!またね!」


 そう言ってバタバタと部屋から出ていった。私も行かないとね。

 下に降りて、リーナのとこに向かう。もう既に食事は来ていて、どうやら私のことを待っていてくれたらしい。


「ごめんね」

「大丈夫よ。さ、冷めないうちに食べましょ」

「うん。あ、話は付いたよ」

「は?!ちょっと、いつの間に…」

「いただきまーす!」


 うーん、美味しい。今日はチキン南蛮定食だった。リーナがぎゃいのぎゃいの言ってるけど、気にしない、気にしない。


「気にしなさいよ!」


 えー…まぁちゃんと話さないとね。


「えっとね、後で案内する人がくるから、それまでこのお店で待っててだって」

「ちょっと突っ込みたいこといっぱいあるけど、ひとまず神器は使えるのね?」

「うん、そのはず」

「はぁ…いつの間にそんな伝手ができたのよ…」


 校外学習初日です!とは言わない。


 ゆっくりと味わって定食を食べ終わって、そのままユーリを待つ。まだお客さんは多いけど、最初の時よりも少なくなってきてるし、もうちょっとかな。


「待っている間にこれはどうだい?」


 そう言ってオグリさんが持ってきたのは…なんとパフェだった。


「え!いいんですか?」

「試作品だから、感想が欲しいんだってさ」

「じゃあ遠慮なく!」


 私はパフェにスプーンを刺して、口に運んだ。


「んー!美味しい!」


 バニラアイスに多分イチゴのジャムかな?がかかってて、下にはさらにチョコのアイスまであって、ほんとに美味しい!これが試作品なんて信じられない!


「あら、本当に美味しいわ。冷たくて甘くて、こんなの食べたことないわ」


 リーナもご満悦だね。でも、確かにこの世界には甘味があんまりないんだよね。そう考えると、これは売れるかも。


「良かった。そろそろかな」


 そう言ってオグリさんはお店を見回して、そのまま奥に消えていった。パフェを食べている間にだいぶ人は少なくなっていたみたい。

 そして奥からユーリが走ってきた。


「おまたせ!じゃあ行こっか」

「うん、よろしくね」

「え?ちょっとフィリアちゃん?この子は?」


 まぁなんも言ってないから、そういう反応になるよね。


「フィリアちゃん、この人は?」


 …こっちにも説明してなかったわ。


「えっと、リーナ…カトリーナだよ」

「カトリーナって、あの六大英雄の?」

「そうそう」


 たまに忘れそうになるけどね。


「あ、そうなんだ」


 なんか軽いな。まぁ王女だし、そういうことには慣れてるのかな?


「改めて、カトリーナよ。あなたは?」

「あ、そうでした。初めまして、ユリーシャって言います。ユーリって呼んでください」


 ファミリーネームは言わないのね。後でバレるとは思うけど。


「ユーリちゃんね。ユーリちゃんが案内してくれるの?」

「はい!ではついてきてください!」


 ユーリが店を出ていったので、お金を払ってその後をついて行く。ちなみにパフェは無料だって。


 歩きで王宮まで行くのかと思ったら、馬車が用意されていたみたい。真っ黒のなにも描かれていない、馬のいない小さな馬車…うん?馬のいない?


「これ、魔導馬車じゃない!」


 どうやら魔導馬車というらしい。リーナが驚いているあたり、かなり珍しいのかな?自動車みたいな感じ?


「はい、そうですよ。はやく乗ってくださーい!」

「う、うん」


 とりあえず乗り込んだ。中は2人がけのソファが向かい合わせになっていて、見かけによらず広かった。


「すごーい…」

「ふふふっ。お返しだよ!」


 お返し?


「なんのこと?」

「私のことを()()で驚かせたでしょ?だからフィリアちゃんのことを驚かそうと思って」


 あれって多分、森を吹き飛ばしたことかな…。


「じゃ、しゅぱーつ!」


 ユーリがそう言うと、ひとりでに魔導馬車が動き出した。


「運転する人はいないの?」

「うん。魔導馬車っていうのは魔石で動く自動車みたいなもので、この魔導馬車は自動運転だと思えばいいよ」


 思えばいいってことは、多分ちょっと違うんだろうね。だけど理解できる気がしないので、聞かないでおく。


「ちょっとまって?!勝手に動く魔導馬車なんて聞いたことないんだけど?!」


 おっと、どうやら自動で動く魔導馬車は一般的では無いらしい。


「当たり前ですよ。なんたってこれは試作型の魔導馬車なんですから」


 …つまりそんなに数がないってこと?


「そんな貴重なの、良かったの?」

「そんな大層なものじゃないよ。だから大丈夫!」


 なんかユーリの大丈夫が当てにならないような気が…ま、いっか!


「あ、着いたよ」


 色々ユーリと話していたら、もう着いたらしい。馬車から出ると、真っ黒でまさに魔王がいそうな城が佇んでいた。


 あ、リーナはというと、あれからブツブツなにかを言っていて、自分の世界に入っちゃってる。


「おーい。リーナ?」

「は!ここは?」

「王城です!」

「…え?」


 うん、いきなりそう言われても困るよね…

 

「え?ユーリちゃんって一体何者…?」

「あ、言ってなかったですね。この国の第2王女です!」

「…は?!」


 またまたリーナがフリーズした。ユーリにいたっては、してやったりというニヤニヤした顔になっている。


「ひとまず、ユーリ。案内してくれる?」

「うん!こっちだよ!」


 ユーリの案内で、城の中を進む。リーナはしばらくフリーズしてたけど、私たちが歩き出すと、しっかりと付いてきた。










 …今更だけど、魔王に今から会うんだよね…大丈夫かな?











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