第56話 検査というか治療というか
校外学習から帰ってきて、寝て、ご飯を食べてまた寝て、気がついたら次の日になっていました。
「うぅぅ…」
まだ疲れが抜けてない…でも、今日は自分の命に関わる大切な検査をしないといけないから、起きないとね…
「ふわぁ…よし!」
勢いよく飛び起きて、着替えを済ませる。ちなみに今日から3日間学園は休みなんだよね。
『ねぇねえ、主』
うん?翡翠、どうしたの?
『この前のローブの男について、神様に報告しなくていいの?』
あ、忘れてた。
『主…』
ごめんって。
早速エルザのとこに行きたいと願ってみる。するとすぐに景色が変わり、あの時きた場所になっていた。白っぽいような、よく分からん空間。
「あ!お姉ちゃん!」
久しぶり…でもないか。で、報告いる?
「うん!あの時お姉ちゃんの声が聞こえたから話しかけただけで、見てないから」
はいはい…それって仕事サボってた?
「そ、そんなことないよ?!」
…ま、いっか。で、ローブ男の目的だったんだけど、
「うんうん」
なんか文明を衰退させて、世界をあるべき姿に戻すことらしい。
「…なにそれ?」
さぁ?でもあいつらも本気みたいだったし。最後自爆しちゃったし。
「そんな理由で私の仕事増やしてたなんて…」
ちょっとー?ここでそんな怒らないでくれない?エルザの力暴走して私の存在消えかねないから。
「あ、ごめん!」
ふぅ…神なんだからちゃんと感情の制御ぐらいしてね?
「ごめん…」
まぁそれは置いといて、なんかローブ男に神様が関わってるみたいなんだけど?
「え?!私じゃないよ?」
分かってる。だからそこら辺調べておいたほうがいいと思う。
「分かった。調べとくね」
うん。よろしく。あ、あとそいつらの仲間が魔剣を持ってたんだけど…
「うん、それがどうしたの?」
なんか鑑定しても文字化けで見えないとこがあったの。
「え、お姉ちゃんの鑑定で見れなかったの?」
うん…て、私の鑑定ってなんか特別なの?
「まぁ私が創ったし」
…うん。それ以上なにも聞かないでおく。で、その文字化け、分かる?
「うーん…お姉ちゃんで見れないなら、無理かも」
なんで?
「言ったでしょ?私が創ったって。それは私の力とほぼ同じものだからね」
お、おう…なんか凄かったのね…でも、困ったな…
「なんで?」
多分文字化けしてるところが黒幕に繋がってそうで気になるんだよね。
「そう…」
ま、分からないならいいや。じゃあね。
「うん。またね」
その言葉を最後に私の意識は薄くなり、最後にエルザの言った言葉が聞こえなかった…
「…ごめんね、お姉ちゃん」
それは全てを知るが故の謝罪か、はたまた自身の不甲斐なさに対しての謝罪か…その真意を知るのは本人のみである。
ーーーーーーー
「うぅぅ…」
気が付くともとの部屋に戻ってきていた。
『主、ちゃんと報告した?』
「もちろん…あ、翡翠について話してなかった」
『まぁ私のことはいいんじゃない?』
なんか軽いな。ま、翡翠がそういうならいいか。とりあえず顔を洗って下に降りる。するとリーナがいつもの席で待っていた。ベルはまだ寝てるみたい。
「おはよ」
「ええ、おはよう。早速だけど、朝ごはん食べたら検査にいくわよ」
うわぁ…いきなりだね。ま、私も早めがいいとは思うしね。朝ごはんをちゃちゃっと食べて、リーナについて行く。
「検査は学園でやるわよ」
まさかの休みなのに学園に行くことに。私たち中等部1年生は休みだけど、他の学年は授業中なんだよね。
乗り合い馬車ではなく、リーナが普段使っている馬車で向かう。これも校外学習で使った馬車と同じ魔力を感じるから、多分酔わないと思う。
「この馬車って魔道具なの?」
「え?ええ、そうよ。少しだけ座席が浮いてるの」
ほー!だから揺れが少ないのか!
「でも、なんで分かったの?」
「うん?なんか魔力を感じたから」
言葉では上手く言い表せないんだけど、なんか暖かい感じがするんだよね。
「そうなの(魔力を感じるなんてそんな高度なことを…)」
なんかリーナがボソボソ言ってたけど、聞こえなかった。ま、いっか。
ガタゴト揺られ…あんま揺れなかったけど、とりあえず到着。
「こっちよ」
「はーい」
リーナについて行くこと5分くらい。来たことの無いところに来た。
「ここは?」
「ここは保健室よ」
あ、保健室あったんた。今まで怪我したことなかったし、怪我したとしても回復魔法で治せるしね。
「あら、やっと来たのね」
保健室に入ると、女の人が椅子に座って待っていた。メガネをクイッと持ち上げてるあたり、かなり様になってる…て、当たり前か。
「ええ。"セシリア"の力を借りるなんて、物凄く不本意だけどね」
お、おう…セシリアというらしいけど…どうやらリーナは嫌っているみたいだ。
「もう、そんなこと言って。本当は嬉しいくせに」
「誰がそんなこと言ったのよ!?嬉しくなんかないわよ!」
うーん…なんかセシリアさんはリーナと…いや、リーナで遊んでいるように見えるなぁー。でも、ここまでリーナが声を荒らげるのも珍しいかも。なんだかんだで仲がいいのかもね。ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うし?
『なんか違うと思う…』
あれ?そかな?まぁこのままだったら進まなそうだから、流石に止めようかな。
「おーい。検査するんじゃなかったの?」
「あ、そうだったわ!という訳で物凄く不本意だけど、セシリアよろしく」
「はいはい…じゃあフィリアちゃんだっけ?こっちに来てくれる?」
セシリアさんに手招きされたので、そっちに向かう。
「じゃあこの検査板に手を置いて、魔力を流してくれる?」
そう言われて、錬成板のようなやつに手を置いた。
「どれくらい流すんです?」
「うーん…まぁその時になったら止めるわ」
なんか曖昧だなぁ…ま、いっか。とりあえずポーションを作ったときみたいに魔力を流す。無属性でね!するとジワジワと魔力が吸い込まれていく感覚がして、なんか変な感じ。
「うん、上手い上手い。もうちょっと多くしていいよ」
という事なので流す量を増やす。でも、どれくらいなんだろ?少しづつ増やせばいいかな?
ジワジワ…ペキッ!
「あ?!」
なんか割れちゃったんだけど?
「あー割っちゃったか…ここまでだとはね」
え?割ってよかったの?
「割って良かったんですか?」
「割ってよかったというか、割れるものじゃないんだけどね…」
え、やらかした?
「これはなんのためのものなんです?」
「私がフィリアちゃんの症状を聞く限り、魔力内包症で間違いなかったの。で、この魔道具は、放出出来なくて体に溜まっている魔力を吸い込むためのものなんだけど…」
リーナから魔力内包症かもしれないって言われたときから、体になにか溜まっている感じがしてたんだけど、魔力だったんだね…しかもそれを吸い込むための魔道具が壊れるくらい溜まってるってことだよね…
「…これが壊れちゃったら、もう治す方法ないんですか?」
「ううん。治す方法はあるわ。ただ…」
「ただ?」
「…フィリアちゃんの魔法って、どれくらい威力ある?」
「うーん…闘技場をちょっと壊しちゃうぐらい?」
「と、闘技場を壊す…」
うん、まぁ驚くよね。でもホントのことなんだよねぇ…最近制御が出来なくて、よくやっちゃうんだよね。
「あ、その事でレビンがもうやめてくれっていってたわ」
「うん?なんで?」
「なんでって…修理にとんでもなくお金がかかるからよ」
あー…
「…ごめんなさい」
なんか知らないとこで迷惑かけてたみたい…
「で、それとなんの関係があるの?」
おっと、そうだった。
「…思いっきり魔法を使うっていう方法」
「あー…」
無理だね、それ。
「他には?」
「あとは…王宮とかにある、祭事につかう魔道具に魔力を込めるっていうのかな」
「祭事?魔道具?」
「そう。年に一度、恵みの雨を降らせる祭事があって、そのための魔道具にとんでもなく魔力を使うから、それに込めればなんとかなると思う」
何とかって…そもそも借りれるのかな?
「借りれるの?」
「うーん…難しいかな。でも学園長ならいけるんじゃない?」
なんでここでレビンさんがでてくる?
「なんでですか?」
「フィリアちゃんは知らないかもだけど、レビンは王様に貸しがあるのよ。でも、流石にそれでも難しいかもね…」
…レビンさん、一体なにしたんだろ?ま、それはともかく、どうしようかな…
「…あ、その魔道具って、他の国にもあるの?」
「え?ええ。どの国にもあるわよ。なんたって神様が配った神器だから」
え、神器?
「神器なの?」
「ええ、そうよ。この世界がより発展するようにという願いかららしいわ」
えー…そんなことしてたんだ。て、そうなると翡翠も神器だから出来ないの?
『出来ないかな。私はそういうことに使われるために創られた神器じゃないから』
そっか、じゃあどうしようも…って、あるじゃん。
「…ね、ギルディア魔国にもそれってある?」
「あるはずだけど…どうかしたの?」
「あー…いけるかも」
「どういうこと?」
「ちょっと伝手があって」
「どういう伝手?!」
ま、そういう反応になるわな。ただ、ユーリもそこまで注目されたくないだろうし、言わない方がいいかな。
「それは言えないけど、とにかくあるの」
「なんか知らない間に変なことして…」
変なことではないけどね!
「で、なんか話が進んでるんだけど、私はなにしたらいいの?」
「セシリアは何もしなくていいわ。私がフィリアちゃんといくから」
うわぁー…仲良くしてぇー…
「…分かったわよ。転移するなら人数は少ないほうがいいしね」
「え?転移?門じゃなくて?」
「あれは使うのに時間がかかるから、私がフィリアちゃんと転移魔法でギルディア魔国にいくわ」
まじですか!リーナ、転移魔法使えたんだ…じゃあ私もできるのかな?
「じゃあ手を繋いで?」
「え?今から行くの?」
「早い方がいいでしょ?」
いやまぁそうなんだけど…ま、いっか!
「じゃあいくわよ」
その瞬間、視界がぐにゃってなって、あまりに気持ち悪かったので、目を閉じた。
…ユーリになんも言ってないけど、大丈夫かな?




