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第53話 使徒のお仕事...不本意だけどその弐

「ヌオォォォォォ!!!」


 もう人間ではない男が突っ込んできた。


「フッ!」


 私は来るのを待たず、自分から向かっていく。そして今度は剣を持っているほうの腕を斬った。


「グワァ!マダダァ!!」


 切口から禍々しいオーラがでて、切り飛ばした腕がひとりでに動き、また繋がった。


「まじかぁ…」


 これどうやって倒そうか?


「ゴロシテヤルゥ!」


 男は大きく振りかぶって、地面に剣を叩きつけた。それだけで地面に巨大な亀裂が走った。


「危なっ!」


 私は横に飛んで転がりながら回避した。


「シネェ!!」


 男がもう一度走ってきた。動きは先程より単調になり、大きくなったため、躱すのは容易い。だけど、攻撃力は桁違いに高くなっている。翡翠刀はもつかもだけど、私が無理だから、極力受け流す。


 ドガァァァ!!


 受け流したことで、また男の剣が地面に叩きつけられた。出来た亀裂にハマらないように空歩で走って首を切り飛ばし、そのまま走り抜け、着地した。


「これでやった?」


 あ、これって…


「マダダァァァァ!!」


 フラグでした。ええ。


「いい加減倒れてよ…ねっ!」


 振り向きざまに横薙ぎに振るってきたので、後ろに下がる。剣を持っていた腕を切り飛ばしたときは、切り飛ばした腕が引っ付いたけど、頭は引っ付かなくて、1から再生した。


「これじゃどうしようも…」


 斬っても斬っても再生するんじゃ倒せない。なにかいい手は…


「って、ちょっとは考える時間くらいちょうだいよね!」


 攻略法を探している間にも、男は斬りかかってくる。それをいなしつつ、時に斬りながら、頭をフル回転して考える。


「シネシネシネェ!!」

「ああ!もう!」


 うるさいね!いっその事燃やしてやろうか!…うん?燃やす?


「そっか…斬れないなら燃やせばいいんだ」


 なんかどっかのセリフみたいだけど、確かにそうなんだよね。相手の再生速度を上回るくらい燃やし続ければいいだけなんだよね。


「でもただの火だったら燃やせないよねぇ…」

「シネェ!」

「うっさい!一旦黙って!」


 ひとまず男の首を切り飛ばす。これでしばらく静か。また切口から禍々しいオーラが…禍々しい?ってことは邪悪…浄化?


「確か今の翡翠刀は邪気を浄化する能力があるって…」


 ま、やってみますか。


「一か八か、いくよ、翡翠」


 そう言うとまるで翡翠刀はその言葉に応えるかのように、纏っていた青白い輝きが、炎のように燃え上がった。


「ウグッ!」


 男がすこし戸惑っている。


「じゃ、やるよ」


 そう言って私は男の間合いを詰める。


「グォォォォォ!シネェ!!」


 慌てて男が剣を振るう、が、至近距離で有利なのは体格が小さい私。難なく男の攻撃を躱すと、剣を持っていた腕を切り飛ばした。


「ウギァァァァ!!!」


 今までにない雄叫びをあげたと思ったら、なにやら苦しそうにしている。やはり正解だったらしい。切口には青い炎がまとわりついている。それが再生を妨げているみたい。


「ヌオォォ!!」


 苦し紛れに男が拳を振るう。それも躱して今度はそっちの腕を切り飛ばした。


「ウグッ!クソォォォォ!!コロ、ゴロジデヤル!!」

「もうこれで終わりだよ」


 私は男の胸に刀を突き立てる。一気に突き刺し、翡翠刀の青い炎を燃え上がらせる呪文を紡ぐ。これは翡翠刀から感覚として伝わってきた言葉。


「翡翠刀…"キュアノスイレーネ"」


 意味は"蒼き平和"

 私がそういった途端、翡翠刀の炎が燃え上がり、男を包む。


「ギヤァァァァ!!マダダァ、マダダァァァァ!!」


 そう叫ぶ間にも、男の体はボロボロと崩れていく。不思議と熱くはない。むしろ…落ち着くような暖かさだった。


「グ、グワァ…」


 本体である男が燃え尽きると、切り飛ばしていた腕も消滅した。だが、男が持っていた剣は残ったままだった。未だに禍々しいオーラが出ている。


「これ燃えるかな?」


 翡翠刀を近づけてみると、この剣も勢い良く燃えだした。


 …ただ、男と違うのは、剣が残ったままだということ。


「これ…」


 とりあえず鑑定。


 コルギアスの魔剣:邪竜コルギアスの素材で作られた魔剣。■$#の力が込められていたが、浄化された。闇属性が強かったが消滅し、今は聖属性が上書きされている。魔剣より聖剣のほうが正しいかも?


 …うん、色々突っ込みたいとこあるけど、1番は…


「また文字化け…」


 そういえば翡翠刀はって見てみたら、炎はおろか、光も無くなっていた。


「うーん…とりあえず回収して、エルザに渡すかな」


 触れたくないので手をかざしてアイテムボックスに収納する。アイテムボックスって5メートル先のものなら収納出来るんだよね。


「で、後はあのローブの奴らか…」


 正直もう疲れたけど、そのままにしてたら倒した意味がないんだよねぇ…日の出はまだだからサクッとやりますか。


「っておもったんだけどなぁ…」


 いきなり『サーチ』に現れた大量の魔物の反応。これってどう考えても召喚されたやつだよねぇー…それにオークばっか。1部オーガもいるみたいだけどね。


「うーん…どっちからやろっか…」


 街への被害を考えると、先発の魔物を殲滅してからのほうがいいんだけど、エルザが言うように、世界樹の力を使っているのなら早めに元凶を叩いたほうがいい。


「こんなとき分身できたらなぁ…」


 まぁそんなことできもし『じゃあ私がいこっか?』ない…


「え?!」


 誰?!


『誰って…今手に持ってるじゃん』


 手に持ってるって…まさか、翡翠刀?


『そーだよ!』


「えぇぇぇ?!」


 いや、自我あったの?


『もともと無かったんだけど、さっきの戦いで目覚めたっぽい』


 ぽいって…あーもうどーでも良くなってきた。


『自暴自棄にならないの』


 だって武器が話すってどうよ?そして武器と話す私ってどうよ?痛くない?


『いやまぁそうだけど、別に口で話さなくてもいいし』


 …そういえば頭の中で会話してるね、うん。


『とりあえず私が魔物倒して来ようか?』


 倒すってどうやって?まさかぷかぷか浮かんでソード○ットみたいに切り刻むの?


『だめ?』


 いやダメじゃないけど…誰かに見られたらどうするよ?


『あ、確かに…じゃあ人型で戦う!』


 は?!どういうこと?


 私の言葉を聞くことも無く、翡翠刀が光り出した。


「うおっ!?」


 思わず手を離したら、そのままぷかぷか浮かんで更に光り輝いた。あまりにも眩しくて目を閉じた。


「よし!成功!」


 そんな声が聞こえたので、目を開けると、見たことの無い女の子がいた。


「…誰?」

「誰って、翡翠だよ?すごいでしょ!」


 いやもう凄いってレベルじゃあ…


「…てか服着てるんだ」


 てっきり裸かと思ったんだけどね。


(あるじ)、まさかそんな趣味が…」

「違うわ!!」


 スパーンと頭を叩いておく。断じてそんな趣味はない!


「いったぁ…」


 あ、痛覚あるんだ…ってそうじゃなくて!


「主って?」

「主は主だよ?それともご主人様の方がいい?」

「いや、主でいいです…」


 まぁ確かに使用者は私なんだけど…


「それより急がなくていいの?」

「あ、そうだった!」


 翡翠との絡みですっかり忘れていたよ。で、こうなったら私がローブ男の方に行くのがいいかな?


「そういえばその状態で武器は?」

「…てへ?」


 まさか自身が武器なのに、人型だったら使えないの?


「はぁ…じゃあこれでいい?」


 そう言って私はアイテムボックスからもう一本の刀を取り出した。


「うん!ありがと!」


 刀が刀を使うというなんとも不思議な状態になってるけど気にしな〜い。


「じゃ、私がローブ男のほうにいくから、翡翠は魔物の足止めしといてくれる?」

「分かった!殲滅してもいい?」

「…まぁできるのなら」


 できるのかなぁ?…まぁ神器だし、やられる心配はしてないけどね。


「じゃ、行ってくるね!」


 そう言って走り去ってしまった。てか足速くない?


「じゃ、私も行きますかね」


 私は翡翠が走っていった反対の方向に走り出した。






ここで翡翠の情報を少し記載。

髪と瞳は翡翠色。背丈はフィリアと変わらない。顔立ちもフィリアと瓜二つ。片目を隠せば本人と言っても多分バレない。これは翡翠がフィリアを人型の見本として姿を考えた結果である。


あとコルギアスの魔剣も。

刀身は黒曜石のように真っ黒。所々に赤い線が走っていたが、浄化したことで青色の線に変わった。両刃の剣で、長さは1メートルほど。重さは同じ大きさの鋼鉄の剣の半分。魔力伝導が優れている。

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