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第46話 食堂での出会い?後編...いや中編その弐

「さっき私は病死だったって言ったでしょ?」

「うん」


 なかなか悲しいよね。


「その病気なんだけど…すい臓ガンだったんだ」


 ガン、か…私の場合は交通事故だったからなのか、死ぬ痛みとか恐怖とかがよく分からなかった。でも、逆にそれが良かったのかもしれない。ガンだったなら、最後まで苦しんだはずだから…


「…大変だったんだね」

「そうでもないよ?」


 なんかこの会話さっきもしたな。


「確かにすい臓は沈黙の臓器とも呼ばれてたし、発見した時にはもう既に手術が出来なかったの」

「それは…」


 それは絶望しかなかっただろうね…


「でも別に悲しかったとか、そういった感情はなかったんだ」

「え?!」

「だって入院する事になって、仕事もしないで良くなったし、寝不足気味だったけど十分に寝れるようになったしね」


 確か人って、そういうときに諦めてしまうから、病が進んでしまうと聞いたことがある。ユーリはポジティブに捉えられたからこそ、後悔しなかったのかな…


「…うん?仕事?」


 今さっき仕事って言ったよね?


「仕事って言ってもアルバイトなんだけどね。レストランでシェフとして働いていたんだ。いつかは自分のお店を持ちたくてね」


 と恥ずかしそうに顔を俯かせながら話してくれた、が


「…てことは、死んだのいつ?何歳?」

「えっと…いつかは覚えてないけど、確か25?だったかな」


 …はい。年上でした。


「まさかの年上…」

「あれ、そうなの?」

「私は大学生…確か20だった」

「へーそうなんだ。じゃあ今は何歳なの?」

「今は10歳だよ」

「あ!なら一緒だね。せっかく会えたんだから前世で年上っていうのは忘れよ?」

「分かった」


 そう言うと、とても嬉しそうだった。にしても同い年なのにお店を経営してるなんてね…なんか尊敬するよ。


「そういえば両親は?」

「あ、こっちの?」

「うん」


 そう答えると少し迷ったような仕草をした。言いにくいのだろうか?


「言えない?」

「別に言えないって訳じゃないんだけど…」


 けど?


「驚かないでね?」


 なにに驚くのだろうか?私の両親は英雄なんだから、ちょっとやそっとじゃ驚かない…と思う。


「もちろん」

「じゃあ…いや、まずこの国の名前って知ってるの?」


 あ、そう言えばキャサリンがお茶会の時になんかそんなこと言ってた気がするけど、覚えてないや。

 なので首を横に振り、


「知らない」


 と答えた。すると


「え、知らないのにこの国に来たの?」


 と驚いた顔で聞き返された。まぁ普通にこの国を訪れたのなら知っていて当然なんだろうけどね。


「なんか聞いた覚えはあるんだけど…忘れた」


 もしくはそもそも聞いていない。


「じゃあどうやってこの国に来たの?」


 とさらに質問された。そう言えば言ってなかったっけ。


「学園の校外学習で、転移門できたんだよ」

「ほぇーー。校外学習なんてこっちにもあるんだ。けど規模が桁違いだね」


 と言って、最後の方は苦笑していた。

 確かに校外学習ってバスとかで行けるとこまでだもんね、普通。この世界にバスはないけど、バスでこの大陸まで来るなんてまず無理だからね。転移っていう移動手段があるからこそだ。


「って話が逸れたけど、結局この国の名前は知んないだよね?」

「うん」

「はぁー…そっか…知らないか…」


 となにやら残念そうな顔をしてため息をついた。


「どうしたの?」


 なぜ私が知らないだけで、そんなに残念そうにするんだろう?


「うーん…まぁとりあえずこの国の名前を教えるね」


 なんかはぐらかされた。


「この国の名前は"ギルディア魔国"っていうの」


 ふむふむ。


「んで、私の両親…の前に私の名前なんだけど」


 うんうん。


「私の本名はユリーシャ・ギルディアなの」

「…うん?」


 えっとー…え?


「ファミリーネームが…」

「そう。私はこの国の王族なんだ」


 ……うん?


「お、王族?!」


 今なんとか理解したわ。


「そうだよ。だから私のお父さんは国王で、お母さんは王妃だね。私は第2王女なんだ」

「こ、国王に王妃…それに第2王女…」


 やばい、頭パンクしそう。


「大丈夫?」

「な、なんとか…」

「そう、良かった」


 なにが良かったのだろうか?


「もしかして離れちゃうかなって思ったの…」


 うん、まぁそれはありえない。王族であれなんであれ、同じ元日本人なんだからね。


「そんな心配いらないのに」

「だって!」

「忘れた?私の両親は英雄だよ?」


 正直私は死んだことにされてるからあんまり周りには関係ないけどね。ただ、英雄っていうのはそれだけ影響が大きいのだ。下手したら王族よりも。


「そっか…そうだよね」


 そう言って静かに微笑んだ。それはとても優しい、作り物ではない笑顔だった。


「私は第2王女っていうこともあって、自由にさせてもらってるの」

「第2…ってことは第1王女もいるの?」

「もちろん。私よりしっかりしてるし、よっぽど王族らしいよ。まぁそのお陰で自由だから、この世界に来た目的を達成できそうなんだよね」


 そうなんだ…って目的?


「目的って?」

「まぁ目的っていうより夢に近いかな。でもこの世界の神様から頼まれたことでもあるしね」


 この世界の神様ってエルザのことだよね…


「その内容は?」

「この世界の食文化を発展させて欲しいんだって」


 確かにこの世界の料理は美味しいんだけど、レパートリーが少ない。特に内陸になると魚とかないから、ほぼ肉料理しかない。


「だからここに食堂を作ったの。これで前世でも夢だった自分のお店も持てたんだよね」


 そう言えばそんなこと言ってたね。


「それは良かったね」


 死んだことで叶えられなかったことを、こっちの世界で実現できたんだから。


「本当にね。それにオグリさんやあなたみたいな同じ転生者にも会えたしね」


 私も嬉しい。だっているかどうかすら怪しかったからね。


「じゃあ次は僕の番かな?」

「そうだね。私はもう話すことないしね」


 とユーリも言っているので、今度はオグリさんの話を聞くことに。ユーリがさん付けしてるし、この世界に来てから長いのかな?


「まず前世だけど、もちろん同じ日本にいたよ。ただ、時代が少し違うかな」


 そう言ってオグリさんは自分のことを話し始めた。



また分けます。

中々長くなってしまう...


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