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第45話 食堂での出会い?後編...いや中編

 店員さんに案内されたのは店の2階。いくつかの扉があって、その内のひとつに入る。中にはテーブルとソファなどがあるシンプルな部屋だった。

 そしてテーブルを拭いている女の子が1人いた。


「あ、"オグリ"さん!そちらの方ですか?」

「ああ。オーナーを呼んできてくれるかな?」

「はーい」


 そう言って女の子は部屋を出ていった。


「ここに座ってくれるかい?」

「はい」


 言われるままソファに腰掛けた。ふかふかでとても座り心地が良かった。


「じゃあオーナーに会う前にこれを書いてくれるかい?」


 そう言って渡してきたのはなにやら文字がズラっと書かれたA4くらいの紙だった。


「これは?」

「読んだら分かるよ」


 そう言われたので、紙に目を通す。書かれていたのはこんな内容だった。


 ・オーナーについて他言を禁ずる。


 ・教えられた情報の販売を禁ずる。オーナーの同意がある場合は可。


 ・店でオーナーに会ったとしても自然と過ごすこと。オーナーを知っている人といるとき以外、オーナーと呼んではならない。


 ・上記の内容を理解した上で同意する場合、下記の欄に署名する。


 といったものだった。これはつまり…


「同意書ですか…」

「ああ。そうだ」


 この世界において、ある一部の同意書は特別なものだ。前世では署名するだけのものなので、同意書を破ってしまえばそれまでなのだが、この世界には魔力がある。そのため、文字にも無意識の内に魔力が込められてしまう。

 魔力には魔力波というものがあって、まぁ声紋みたいなものだ。だから人それぞれ違う。その結果、署名すると誰が署名したのかは一目瞭然になり、さらに同意書には特殊なインクが使われている。そのインクは魔力と同調し、その本人の体自体に書かれている内容が()()される。

 そのため、同意書を破ってもその内容は無くならない。取り消すことも出来ない。だからこそ、特別な時しか使わない。


「この同意書の罰則は?」


 普通のインクで書かれていれば、それは前世の同意書となんら変わりない。だが、今回の同意書はその特別なインクが使われていた。そしてこの手の同意書には、書かれている約束事を破った際、罰則が存在する。それは神の名のもとに執行されるため、なんびとたりとも逃れることは出来ない。罰則は様々あり、魔法が使えなくなる、1週間食事が出来なくなるなどといったものから、命で償うこともある。


「罰則はない…と言いたいんだが、流石にそれはどうかと思ったから、一生悪夢に魘されるというものにしたよ」


 いやそれってかなりキツいと思うんだけど?罰則がない方がいいなーって思うんだったらもうちょい緩めじゃない?


「君の言いたい事も分かるが、そうでもしないと、すぐに破られてしまいそうだったしね」


 まぁそれは言えてるんだが…



 …あと、まだ言うことがある。


「…もうひとつ、聞いていいですか?」

「なんだい?」

「…これ、()()()ですよね」


 そう、この同意書、全て日本語で書かれていたのだ。


「ああ…それが分かるってことは()()と同じかな」


 同じ…それは転生者ということだろうか?でも、


「僕達?」


 まだいるってこと?


「うん、そう。って言っても2人だけどね」


 2人…


「あなた方は転生者ですか?」

「ああ。かく言う君もかい?」

「はい」


 思わず素直に答えてしまった。まだ確証すらないと言うのに…


「…じゃあこの同意書はいらないね。入ってきて」

「はーい」


 私の手から同意書を取ると、そのまま箱に仕舞ってしまった。そして誰かを呼んだと思ったら、ドアが開いて人が入ってきた。


「さっき会いましたね」


 そう。入ってきたのはさっきテーブルを拭いていた女の子だ。


「改めまして、"ユリーシャ"って言います。ユーリって呼んでね。ちなみにこの店のオーナーは私のことだよ」

「え?!あ、えっと…フィリアです」


 まさかのオーナーでした。

 ユリーシャ…ユーリは紫色の髪に赤い瞳をしていて、頭に2本の角があった。恐らく魔鬼族(まきぞく)だろう。

 そしてさっきからずっと話しているオグリという人は黒髪に黒い瞳をしていて、こっちも角が生えている。


「私はあっちの世界…日本で病死だったんだ。フィリアさんはなんでこっちに来たの?」


 ユーリがそう聞いてきた。


「なんで、か…ある女の人助けて死んだらなんかこっちに来たんだよね。んで、こっちの世界で死んだことにされた」

「「は?!」」


 お、2人の声がハモった。仲良いねー、


「死んだことにって…」

「あー、六大英雄って知ってる?」

「「もちろん!」」


 あ、そこ自信持って言えることなんだ。


「私はね?その六大英雄のロビンとマリアの子供として生まれたんだよ」


 あんまりしたらいけない話だけど、2人なら信用出来る。


「「は!?」」


 またまたハモった。


「んで、女の子には荷が重いだろーってことで、死んだことにされたの。でも捨てられた訳じゃないよ?表向きは養子として生活しているの」


 ちゃんと正しいことを伝えないとね。


「な、なるほど…」

「転生してそうそう大変だったんだね…」


 と、2人して何故か瞳が潤んでる。


「なんで泣くの?」

「だって親だよ?甘えたいじゃん!それなのに養子だったら表立って関われないでしょ?」


 ……それはロビンに言ってくれると嬉しい。普通に表立って私を愛してますアピールしてるから。おかげで大変なんだから…


「案外楽だよ?」

「そんな簡単に…」


 オグリがそう言うけど、こういうのって視点を変えて、ポジティブに捉えるのが1番なんだよ?


「まぁ私の話は一旦置いといて、2人の話を聞かせてくれない?」

「分かった!まず私からね」


 ユーリから話してくれるらしい。さて、どんな話かな?




予想より長くなったので2つに分けます。

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