第42話 買い物とコンプレックス
執事の人に屋敷に送ってもらった次の日、キャサリンと買い物にいく予定だ。
私はお寝坊さんのベルを起こしに行った。
「おはよ、ベル」
「ふわぁぁ…おはよー」
今までベルと過ごして分かったけれど、ベルは朝が苦手なんだよね。
「ほら、はやく着替えないとおくれるよ?」
「え?!もうそんな時間?!」
毎回起きるのは遅いんだけどその後の準備が速いんだよね…
「いこ!フィリアちゃん!」
「あ、ちょ!」
例の如く手を引かれましたとさ。
下に降りるとリーナがいた。今日も学園で仕事はあるらしいけど、担任をしている私たちのクラスが休みで大した仕事もないので、ゆっくりしてもいいらしい。
「おはよー」
「おはようございます!」
「おはよう。今日は友達と買い物?」
相変わらず情報が速いね…
「うん」
「そう。気を付けるのよ?」
「もちろん」
ベルを誘拐した犯人はまだ捕まっていないから少し心配だけど、まぁ大丈夫だと思う。
いつもの朝食を食べているとリーナは出掛けて行った。今日買い物で使っていいよってお金を置いていってくれた。金額にして金貨5枚。
「流石に多いんじゃあ…」
「念の為でございます」
とセバスチャンさんが言うので、そういうことなんだろう。
朝食を食べ終わって、時間的にはまだ余裕があるけど、もう出発することに。
「また乗るのか…」
避けては通れぬ乗り合い馬車…
「今日は大丈夫だよ!」
その大丈夫の根拠はどこから来るのか…まぁ乗るけどさぁ?
結果酔う。
「おぇぇぇ…」
「フ、フィリアさん?!大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。いつもの事だもん」
うぅぅぅ…キャサリンは心配してくれるのに、ベルは最近心配してくれなくなった。もうちょっと心配してぇ…
「そうですの?では行きましょう!」
…前言撤回。キャサリンも非情でした。ちくしょう…まぁキャサリンの馬車は酔わないから大丈夫なんだけどね?
キャサリンの馬車に乗り込み、揺られること10分くらい。いつも行っている商店街とは違う、なんていうか裕福な人がくるためのとこみたいな商店街に着いた。
「こ、ここって…」
「確かに平民が来るところではありませんが、そこまで気にする事はないですわ」
いや気にするわ!ましてやキャサリンは公爵令嬢、この馬車にも公爵家の紋が付いてるんだからものすごく注目を集めてるんだよ?!
「うーん…やはり別の馬車のほうが良かったでしょうか?」
あったの?!
「多分、そっちの方が注目は集めなかったかもね」
「…まぁ来てしまったものは仕方ありませんわね」
いや、まぁうん、そうなんだけどさぁ…
ものすごーく落ち着かないまま、お目当てのお店に着いたみたい。
「着きましたわ」
「ここは?」
恐る恐る馬車から降りると、そこには1軒の少し豪華なお店があった。
「ここで水着をかうのですわ」
あ、ここなんだね。確かに看板には服の絵が描かれている。水着って服屋で売ってるんだね。
カララン
「いらっしゃいませ」
ドアを開けると、綺麗なドアベルと共に女の人の声が聞こえた。声のする方に目を向けると、カウンターに想像通りの綺麗な女の人がいた。
「本日はどのようなご要件でしょうか?」
「水着を見せてくださる?」
「かしこまりました。ではこちらに」
そう言ってカウンターから出てきた女の人について行く。
「ここでございます。試着室はあちらにありますので、ご自由にお使いください」
「ありがとう」
定員さんとの受け答えは全てキャサリンがやってくれた。案内されたとこにはたくさんのカラフルな水着があった。どうやって染色してるんだろうか?
「わたくしはこれにしますわ!」
そう言ってキャサリンが持ってきたのはいわゆる赤色のビキニだ。キャサリンは10歳になったことでより女性らしくなってきた。そして胸も…うん、言わない。自分の傷を抉りたくない。
「…いいんじゃない?」
「そうですか?嬉しいですわ!」
…私だって大きくなるんだい!
「私はこれかなー」
ベルが持ってきたのは…青色のスク水。スク水あるの?!
「ベ、ベル…それでいいの?」
ベルも最近胸が…ちくしょう…。
「うん!なんか動きやすそうだし」
まぁ本人がいいならいいのかな?
「フィリアさんはどうするのですか?」
「私?私は…もうなんでもいいんだけど」
「ではわたくしが選んで差し上げますわ!」
うーん…まぁキャサリンのセンスに任せても大丈夫かな。
「じゃあお願い」
「分かりましたわ!えっと…フィリアさんは胸がまだ小さいですから…」
「ぐふぅ!」
うぅぅ…泣いていい?
「これはどうですか?」
そう言って見せてきたのは薄い青色のワンピース型の水着。うん。可愛いけど傷を抉られる。
「…うん。それでいいや」
もうどうにでもなれ!
「では試着してみましょう!」
そう言ってキャサリンは試着室に走っていった。そんなに待ちきれないのかな?
あ、ちなみにキャサリンの髪の色は金髪なんだよね。Theお嬢様みたいなドリルではないけどね。瞳の色は青色。これは5番目に魔力が多いんだって。
「どうですか?」
着替えるの早!うん、揺れてるわ。悔しい…
「…いいんじゃない?」
思わずぶっきらぼうに答えてしまった。
「そうですか?ではフィリアさんも早く着替えてくださいな」
え?ベルは…ってもう着替えてたわ。ベルも揺れてるわ〜…うん、着替えよ。
私はそそくさと試着室に入ると、着替えた。完全な板ではないのだけど…寂しい。悔しくなんてないんだからね!?
「フィリアさんも似合いますわ!」
「うん!フィリアちゃん可愛い!」
「あ、ありがと…」
なんか2人の笑顔を見てたらどうでも良くなってきたかも。
「でも…まぁすぐ大きくなりますわ!」
…やっぱり敵。
その日の買い物中、私は常に不機嫌で、2人から質問攻めにあった。
「フィリアちゃん、機嫌直して?どうしたの?」
「フィリアさん、なにか気に入らないことがあったのですか?」
……正直に答えられる訳ないじゃん。
「はぁ…なんでもないよ」
なんか馬鹿馬鹿しくなってきたので仕方なく機嫌を直した。その後なんか言いたそうだったけど、これ以上機嫌が悪くなる前に終わらせたいらしく、何も言わないまま、買い物を終えた。
…胸で嫉妬するなんてね…この歳の子供なら普通なのだろうか?聞きたい気もするが、聞けるわけが無い。
「…明日謝るか…」
モヤモヤしたまま、私は屋敷のベットに入り、意識を手放した。




