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第40話 弟子ですか?私は鬼ですよ?

 次の日、起きるともう既にマリアはいなくて、ヨダレを垂らしたベルしかいなかった。


「うぅぅん…」


 私はベットから出て体を伸ばした。今日は学園が休みだ。どうしようかな?


「ふぁぁ…おはよーー」


 そうこうしているとベルが起きた。


「おはよ。今日どうする?」


 とりあえずベルに任せよう。私的にはもう一度あのベルが誘拐されていた部屋に行きたいけど、マリアやロビンがいるから、あまり気づかれたくない。


「うーん…とりあえずギルド行ってみる?」


 まぁやることと言ったら、依頼を受けるしかないよね。


「いいよ。じゃあ着替えてご飯食べたら行こっか」

「うん!」


 私たちは着替えを始めた。ギルドに行って依頼を受けるつもりなので、動きやすい服を着る。スカートなんかじゃなくて、ズボンね。革鎧は出る時に付けることにする。


 着替え終わって下に降りる。するといつもはいるリーナがいなくて、代わりにセバスチャンさんがいた。


「おはようございます、フィリア様、ベル様」

「おはようございます。リーナは居ないんですか?」

「はい。カトリーナ様は明け方ロビン様、マリア様と共に出かけられました。夜には帰ってくるという伝言を、ロビン様から頼まれました」


 明け方…つかれてるはずなのに大変そう。


 …それとロビンの伝言の真意は構って欲しいってところだろう。


「朝食を食べて行かれますか?」

「はい。お願いします」

「承知致しました。では席についてお待ちください」


 そう言って私たちの席を引いてくれた。私たちが座ったのを確認すると、すぐに部屋から出ていった。


 そういえば、この屋敷には他に人が居ないのだろうか?まったく見たことがない。セバスチャンさんだけしか居ないのかな?後で聞いてみよう。


 しばらくして、セバスチャンさんが料理を乗せたワゴンを押して入ってきた。


「本日の朝食はコカトリスのスープにサラダ、パンでございます」


 コカトリスっていうのは魔物で、オークみたいに食用。見た目は鶏なんだけど、大きさは1メートル以上あって、極めて凶暴。だからかなり高級なんだけど、さすがと言うかなんと言うか…よく食事に出るんだよねぇ。まぁ美味しくて好きなんだけどね。味は鶏肉そのもの。ちょっと筋肉質。ちなみに普通の鶏もいたりする。ならそっちでよくね?って思ったのは内緒。


「おいしー!」

「ありがとうございます」


 ベルが美味しいといったことに対して感謝してるから、もしかしてこの料理を作ってるのはセバスチャンさんなんだろうか?


「あの、セバスチャンさん」

「はい。なんでございましょうか?」

「この屋敷、セバスチャンさんの他に働いてる人は居ないんですか?」

「いえ?おりますよ?」


 え?!いるの?!


「メイドもおりますし、料理人もおります。ただ、メイドは夜やフィリア様方が出掛けている時に仕事をしておりまして、今は寝ております。起こしましょうか?」

「あ、大丈夫です。ちょっときになっただけなので」


 なるほどね。それなら見なくても納得だわ。


 私たちは朝食を食べ終えると、ギルドに行くとセバスチャンさんに伝えて屋敷を後にした。



 ギルドに着き、中に入ると少し人はまばらだけど、それでも多くの人がいた。


 人混みをかき分けてボードまで向かう。着いたときにはもうほとんど依頼が残っていなかった。


「あー、なにもないねー」

「そうだね。今日も薬草採取かな」


 前まではゴブリンの討伐依頼がいっぱいあったんだけど…


「どっかのだれかさんがいっっっぱい倒しちゃったからねー」

「うっ!…ごめんなさい…」


 …うん、本当にごめんなさい。


「…さ!いこ!」

「フィリアちゃーん…はぁ」


 なんだかんだ言ってベルもちゃんと付き合ってくれるよね。


 私たちはいつもの森まで向かった。ベルも身体強化が上手くなってて、着くのにそう時間はかからなかった。


「さ!薬草採取だ!」

「フィリアちゃん、そんなに張り切らなくても…」


 なんかいつもとキャラが逆な気がするー…うん、落ち着こ。


 頑張って丁寧に採取をしていたらすぐにお昼くらいになった。


「お腹空いたー」

「そうだね。ちょっとまってね」


 ちょうどいい切り株があったので腰掛けて、私はアイテムボックスからサンドイッチを取り出した。これはセバスチャンさんが持たせてくれたもので、セバスチャンさんが作ったらしい。お米は買ったんだけどまだ炊けてないんだよね。水の量は検索すれば分かるんだけど屋敷でやる訳にもいかないしね。


「おいしー!」

「そうだね」


 これはトマトかな?ハムみたいなのにレタスみたいなのが挟まっていた。ドレッシングみたいのもかかってて、とても美味しかった。後でレシピを教えて貰おう。


「おいしかった!」

「うん。じゃああと少し採取してから帰ろっか」

「うん!」


 そう言って腰を上げたら、視線を感じた。


「うん?」


 これは…私だけに向けられている。魔物じゃなくて人?かな。


「はやくいこ!」

「あ、うん」


 それからしばらく薬草採取をしていたんだけど、視線が外れることは無かった。ベルが気づいてないってとこから気配を隠蔽しているみたい。


「もうかえろっか」

「うん…ベル、先に帰っておいてくれない?」

「どうして?」

「ちょっと気になることがあって」

「うーん…フィリアちゃんがそういうとかなり時間かかるから、先に帰るね!」


 …私はベルからどう思われているのだろうか?


 それはそうと、ベルは前に誘拐されたし、1人にするのは心配だけど、結界は張ってあるから大丈夫なはず。


 ベルが先に森を出て行ったのを確認すると、私は森に向き直った。


「ねぇ。いつまでも隠れてないで出ておいでよ。それとも問答無用で斬られたい?」


 最後の脅しが効いたのか、あっさり出てきた。木の影から出てきたのは男の子だった。年齢的には私の3つ上くらいかな。


 …それと、頭に角があった。


「…気づいていたのか」

「バレバレよ。で?なにが目的?」


 こいつらがあのローブ男の仲間なら…私は怒りのあまり魔力が漏れ出てしまった。


「…っ!ま、まってくれ!別に襲おうとか考えてないから!」


 と、その魔力に気づいたのか、慌てだした。


「じゃあなに?」


 私は構えを解かず、目の前の男の子に注目した。


「俺、見てたんだ。あんたがゴブリンを、ゴブリンジェネラルを倒すところを」


 あらやだ。見られてた。てか切り刻まなくてほんとによかった。


「それで?」

「…頼む!!俺を弟子にしてくれ!」

「………は?!」


 で、弟子?!どういうこと?


「理由は?」

「実は俺、孤児なんだ。孤児院に住んでる」


 あ、あれ?ありきたりなやつ?


「…虐め?」

「それは違う!みんな俺みたいな魔族にも優しくしてくれるんだ」


 …うん、嘘は言ってないみたい。だとしたら孤児院を経営する人がちゃんと教育しているのかな。


 魔族と人間は比較的いい関係だ。だが、人間の中には、魔族は心が闇に染った邪悪な種族だ。と言っている人達もいる。そんなことないんだけどね。その影響は子供たちが一番受けやすい。だからまだ社会を知らない子供たちはその真意も知ろうとせず、魔族の子供をいじめたりするのだ。


「じゃあ何故?」


 私は最初弟子にしてくれと言われたとき、その虐めっ子に仕返しするためかと思ってた。そんな理由なら、私は弟子なんかにしないけどね。もちろん、その虐めっ子たちに関してはリーナに報告する。それでまぁなんとかなる。


「…俺、孤児院の中で年長なんだ。だから俺より小さい子供にいいものを与えたいんだ」


 あ、話が見えてきた。


「だから、ハンターになって、金を稼いで、食べ物とかを買ってやりたいんだ」


 …この子はいい子かも。自分の力を過信せず、危険なことをしてい…るな。


「ハンターでもないのにこの森に来たの?」


 この森は比較的安全ではあるが、魔物がいない訳じゃない。そんなとこに武器もなしに来たのは自殺行為だ。


「…ちょうど、お前が出ていくのを見たんだよ。俺より小さな女の子がハンターをしていることが気になってな」


 ………はい、私のせい?


「はぁ…ま、あなたは嘘をついていないようだし…」

「弟子にしてくれるのか!」


 お、おう。すごい食いつきだな。


「ま、待ちなさいって…弟子にするのはいいけれど、私はそう頻繁には教えられないし、そう大層なことも教えられる訳じゃないよ?」

「それでもいい!せめて、剣でも使える様になれれば」

「はぁ…分かった。じゃあ今から始めるよ」

「え、今から?!」

「文句言わない!さぁ走る!」

「えぇぇ!?」


 手頃な枝を拾って男の子のお尻を叩く。


「痛!なにすんだよ!」

「まずは体力を付けるの!さ、走る!」


 何事も体力がないとね。ひとまず走らせて、この子の体力を知りたい。


「そういえば名前は?」

「"シリル"だ!」


 こうして私と男の子…シリルの師弟関係が出来たのだった。



「はい!水のんだらまた走る!」

「もう嫌だぁー!」

「文句言うな。弟子にしてくれと言ったのはあんたでしょうが」










 それから冒険者ギルドには、森で男の子の叫び声と女の子の笑い声が聞こえるという報告がいくのだった…



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